紹介料の請求書を見るたびに、ため息が出る。地方工場の求人を出しても、応募は一件も入らない。
そんな状況を、採用担当1〜2名で抱えている製造業の人事の方は少なくありません。
採用代行(RPO)という選択肢は知っているものの、「丸投げするサービスでしょう」「大手が使うものでは」というイメージのまま、検討が止まっているケースもよく見られます。しかし実際には、採用代行にはいくつものタイプがあり、自社に合わないタイプを選んでしまうと成果は出ません。
本記事では、単なるサービス紹介の羅列ではなく、「採用したい職種」で採用代行を3つのタイプに切り分けて解説します。工場オペレーターの採用と、生産技術者の採用では、選ぶべきサービスがまったく違うからです。
- 読み終えるころには、以下の状態になっているはずです。
- 自社の採用難が構造的な問題であることを理解し、社内で説明できる
- 委託すべき業務範囲と、自社に残すべき業務の線引きができる
- 費用の目安と、人材紹介からの乗り換えで損益分岐点がどこにあるかが分かる
- 比較・検討すべき採用代行会社の候補が絞り込める
製造業で技術系人材の採用に苦戦している人事担当者の方、人材紹介への依存から抜け出したいと考えている採用責任者の方に、ぜひお読みいただきたい内容です。
製造業の採用代行(RPO)とは?依頼できる業務範囲と仕組み
採用代行(RPO=Recruitment Process Outsourcing)とは、採用業務の一部または全部を外部の専門会社に委託する仕組みです。製造業では「人が採れない」という課題と「採用に手が回らない」という課題が同時に発生しやすく、その両方に対応できる手段として導入が進んでいます。
- まずは、人材紹介や人材派遣との違い、そして具体的にどこまで任せられるのかを整理しておきましょう。
採用代行(RPO)と人材紹介・人材派遣の違い
- 3つのサービスの決定的な違いは、「何を買っているか」にあります。
人材紹介で買っているのは「採用できた人材」です。成功報酬型で、相場は理論年収の30〜35%程度。採用が決まらなければ費用は発生しませんが、決まれば1名ごとに数百万円規模のコストがかかります。
- 人材派遣で買っているのは「労働力そのもの」です。雇用主は派遣会社であり、そもそも自社の採用活動ではありません。
これに対し、採用代行で買っているのは「採用活動の実務と設計」です。採用の主体はあくまで自社で、外部の専門家が実務を担います。そのため運用のなかで得られた知見が社内に残りやすいという特徴があります。
| 項目 | 採用代行 | 人材紹介 | 人材派遣 |
|---|---|---|---|
| 買っているもの | 採用活動の実務と設計 | 採用できた人材 | 労働力 |
| 費用体系 | 月額固定/従量課金/成果報酬 | 成功報酬 | 時間単価 |
| 費用相場 | 月額10万〜80万円程度 | 理論年収の30〜35%程度 | 時給×稼働時間 |
| 雇用主 | 自社 | 自社 | 派遣会社 |
| ノウハウの蓄積 | 社内に残りやすい | 残りにくい | 対象外 |
製造業では「人材紹介にしか頼れていない」という企業が非常に多いのが実情です。まずはこの違いを押さえたうえで、次の選択肢を検討していきましょう。
製造業の採用代行に依頼できる業務一覧【戦略設計から内定者フォローまで】
採用代行に依頼できる業務は、大きく4つのフェーズに整理できます。
①戦略・要件設計フェーズ
採用計画の策定
ペルソナ設計
求人要件の言語化
②母集団形成フェーズ
求人票の作成
求人媒体の運用
スカウト文面の作成・配信
人材紹介会社のコントロール
③選考オペレーションフェーズ
応募者対応
面接日程の調整
ATS(採用管理システム)への入力
選考結果の連絡
④内定者フォローフェーズ
内定者面談
辞退防止のフォロー
入社手続きの案内
製造業の採用担当者は1〜2名という体制が多く、②と③の工数がボトルネックになりがちです。
すべてを委託する必要はなく、手が回っていないフェーズだけを切り出すという使い方ができます。
採用代行は「丸投げ」だけではない。運用代行という使い方が主流
採用代行と聞くと、採用業務を丸ごと外部に預けるイメージを持たれるかもしれません。しかし現在の主流は、特定の業務だけを切り出す「部分委託(運用代行)」です。
理由は2つあります。1つは、フル委託は月額が高く、社内にノウハウが残りにくいこと。もう1つは、部分委託なら月数万円〜十数万円から始められ、効果が出た領域だけを広げていけることです。
たとえば、まずは生産技術の1ポジションだけ、スカウト配信の運用を委託する。返信率が安定してきた段階で、設計や品質保証のポジションにも広げる。こうした進め方であれば、投資判断もしやすくなります。
「外注=コスト増」と考える経営層への説明材料としても、この考え方は有効です。
製造業の採用が難しい3つの構造要因【最新データで解説】
「求人票の書き方が悪いのだろうか」「うちの給与水準では無理なのか」。応募が集まらないと、つい自社に原因を求めてしまいがちです。
しかし製造業の採用難は、景気変動による一時的なものではありません。就業者数の減少、技術者市場の需給逼迫、そして立地という3つの構造要因によって生じています。手法を変えない限り、状況は改善しないのです。
製造業の就業者数は1,033万人まで減少、34歳以下の若手は約259万人
2026年版ものづくり白書によると、製造業の就業者数は2024年の1,046万人から2025年には1,033万人へと減少しています。34歳以下の若年就業者は約259万人(2024年時点)にとどまり、母数そのものが縮小し続けている状況です。
中小企業の製造業における従業員数過不足DIは2025年にマイナス17.9となり、コロナ禍前(2019年)に近い不足水準へ戻りました。
さらに注目すべきは、技能継承の取り組みです。「再雇用や勤務延長で高年齢従業員に継続勤務してもらう」という回答が54.8%と最多を占めています。つまり、多くの企業が高齢層に依存した構造を維持せざるを得ない状況にあるということです。
若手が採れないのではありません。若手の絶対数そのものが減っている市場で競争が起きている、と捉える必要があります。
※出典:経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2026年版ものづくり白書」
技術系職種は転職顕在層が少なく、求人が候補者を上回り続けている
生産技術、設計、品質保証、生産管理といった技術系職種には、もうひとつ固有の事情があります。そもそも転職市場に出てくる母数が少ないのです。
doda転職求人倍率を見ると、全体でも高い水準で推移していますが、なかでも技術系(機械・電気)は上位に位置し続けています。求人数が転職希望者数を大きく上回る「売り手優位」の状態です。
加えて、製造業の技術者は一社での在職期間が長い傾向にあります。そのため転職サイトに登録した瞬間、複数社から一斉に声がかかります。求人広告を出して「待つ」という手法では、そもそも出会えないのです。
ここが、後半で解説するダイレクトリクルーティング(スカウト採用)が有効になる理由につながります。
※出典:パーソルキャリア「doda転職求人倍率レポート」
地方工場・郊外拠点の求人は応募が集まらず母集団形成が成立しない
3つ目の要因が立地です。地方拠点や郊外工場のポジションは、そもそも検索する人の母数が小さく、求人広告や自然応募だけでは母集団形成の分母が立ちません。
都市部と同じ媒体、同じ運用をしても、閲覧数の絶対値が数分の一になります。さらに転勤や引越しを伴うため候補者の検討期間が長くなり、条件面での比較にもさらされやすくなります。
ただし、悲観的な話ばかりではありません。Uターン・Iターン志向の人材や、「いずれ実家の近くに戻りたい」と考えている層は一定数存在します。問題は、こうした層が自ら地方の求人を探しているわけではないという点です。
企業側から接触しない限り、出会えない。この構造こそが、いわゆる「攻めの採用」が必要とされる理由です。
人材紹介だけに依存した採用が限界を迎える3つの理由
ここまで読んで、「では人材紹介を使い続ければいいのでは」と思われたかもしれません。
人材紹介は、採用が決まったときだけ費用が発生する優れた手法です。否定するつもりはありません。ただし、これ一本に依存すると、コスト・要件伝達・計画性という3つの点で必ず壁にぶつかります。
理論年収35%の紹介料が採用予算を圧迫する
- 人材紹介の手数料は、一般的に理論年収の30〜35%程度です。
たとえば年収600万円の生産技術者を3名採用した場合、手数料率35%で計算すると紹介料だけで約630万円に達します。採用人数を増やせば増やすほど、予算は線形に膨らんでいきます。
早期退職時には返金規定がありますが、返金の対象期間は短く設定されているのが一般的で、全額が戻るわけでもありません。
固定費化しにくく、単年度予算のコントロールが難しい。この点は、経営層に説明すべきリスクとして押さえておきたいところです。
- 【計算例】年収600万円の技術者を3名採用した場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 1名あたりの紹介料(手数料率35%) | 210万円 |
| 3名分の紹介料 | 630万円 |
※理論年収600万円、手数料率35%で試算
技術要件が正確に伝わらずミスマッチな候補者ばかり届く
「射出成形の金型設計経験」「量産立ち上げのDR(デザインレビュー)経験」。こうした要件は、業界知識のない担当者には正しく翻訳されません。
結果として、キーワードだけが一致した候補者が送られてきます。書類選考の通過率は下がり、人事側の工数だけが増えていく。心当たりのある方も多いのではないでしょうか。
人材紹介会社のキャリアアドバイザーは、幅広い業界を担当しています。製造業の職種を、量産と試作の違いまで理解しているとは限りません。
たとえば同じ「品質保証」という職種でも、量産品のQAと開発試作のQAでは求められる経験がまったく異なります。この違いを伝えきれるかどうかが、候補者の質を左右するのです。
要件を伝える力そのものが採用力であり、それは委託先の業界理解度によって決まります。
応募数をコントロールできず採用計画が崩れる
3つ目の問題は、母集団の量とタイミングを自社で制御できないことです。
人材紹介は「紹介が来るかどうか」を自社では決められません。登録者が少ない技術職や地方勤務のポジションでは、依頼から初回紹介まで数週間かかることも珍しくないのです。
期初に立てた採用計画が、紹介の遅れによって崩れる。ポジションが増えたときにリードタイムが伸びる。こうした事態を避けたいのであれば、企業側からアプローチできる手法を併用する必要があります。
製造業の採用代行は3タイプ|採用したい職種で選ぶべきものが変わる
ここからが本記事の核心です。
製造業の採用代行は、大きく3つのタイプに分けられます。同じ「採用代行」という名前でも、得意な職種も成果の出方もまったく違います。
①求人広告運用代行型(技能職・現場採用向け)
②ダイレクトリクルーティング運用代行型(技術系・専門職向け)
③採用事務局代行型(新卒・大量採用向け)
自社がいま採用したいポジションを思い浮かべながら読み進めてください。
①技能職・現場採用向け|求人広告運用代行型
工場オペレーター、組立、検査といった現場人材の採用に向くタイプです。
Indeedをはじめとする求人検索エンジンの運用、求人原稿の改善、応募者対応までを代行します。
母集団のボリュームが取れる職種に有効で、主なKPIは応募単価(CPA)の改善です。
主なKPI
- 掲載クリック数
- 応募数
- 応募単価(CPA)
- 面接設定率
委託先は、Indeed認定パートナーなど広告運用のノウハウを持つ会社が中心になります。
ただし、そもそも応募が発生しにくい専門職には効果が出にくいという点は押さえておきましょう。生産技術や設計の求人に対して広告運用を強化しても、母数が存在しなければ成果にはつながりません。
②技術系・専門職向け|ダイレクトリクルーティング運用代行型
生産技術、設計、品質保証、生産管理、DX/IT人材など、応募を待っても集まらない職種に向くタイプです。
スカウト媒体上の候補者データベースから条件に合う人材を検索し、企業側から直接アプローチする。
その運用を代行します。
委託できる範囲は多岐にわたります。
- スカウト媒体の選定
- ターゲット条件の設計
- 求人票・スカウト文面の作成
- 候補者の検索と配信
- 返信対応
- カジュアル面談の日程調整
- 数値のレポーティング
このタイプの最大の価値は、転職顕在層が少ない技術職でも、「まだ転職を決めていない層」に接触できる点にあります。地方拠点の求人であっても、Uターン志向の候補者を能動的に探し出すことが可能です。
費用面でも人材紹介とは構造が異なります。成功報酬ではなく運用費のため、採用人数が増えるほど1人あたりの単価は下がっていきます。
技術系人材で使われる主なスカウト媒体には、ビズリーチ、doda ダイレクト、リクルートダイレクトスカウト、Green、Findy、LinkedInなどがあります。媒体ごとに登録者の傾向が異なるため、選定そのものが成果を左右します。
冒頭で挙げた「紹介料の高騰」「地方の母集団形成」「技術要件の伝達」という3つの課題に対して、最も直接的に効くのがこのタイプです。
③新卒・大量採用向け|採用事務局代行型
新卒採用や、複数拠点で同時に採用を行う際の「事務局機能」を代行するタイプです。
- 会社説明会の運営
- 応募者への一次連絡
- 面接日程の調整
- 内定者フォローの連絡
- ATSへの入力
目的は採用の質を上げることというより、採用担当者の工数を空けることにあります。
専任1〜2名の体制で新卒と中途を兼務している企業であれば、事務局機能を委託して捻出した時間を、
要件設計や面接、現場との調整といったコア業務に振り向ける効果は大きいでしょう。
3タイプの比較表|対象職種・費用感・成果が出るまでの期間
- 3つのタイプを一覧で比較します。自社がいま必要としているのはどれか、確認してみてください。
| 比較軸 | ①求人広告運用代行型 | ②DR運用代行型 | ③採用事務局代行型 |
|---|---|---|---|
| 対象職種 | 技能職・現場人材 | 技術系・専門職 | 新卒・大量採用 |
| 主な業務 | 媒体運用・原稿改善 | スカウト運用全般 | 説明会運営・日程調整 |
| 費用体系 | 月額+広告費 | 月額固定/従量課金 | 月額固定/時間単価 |
| 成果が出るまで | 1〜2か月 | 3か月程度 | 即時(工数削減) |
| 向いている企業 | 応募母数が取れる職種を採用したい | 応募が来ない専門職を採用したい | 担当者の工数が逼迫している |
| 注意点 | 専門職には効果が出にくい | 短期間では判断できない | 採用の質向上には直結しない |
重要なのは、複数のタイプを併用してよいという点です。技能職は広告運用、技術職はスカウト運用、と使い分けるのが現実的な設計になります。
製造業の採用課題は採用代行でどこまで解決できるのか
採用代行は万能ではありません。契約すれば人が採れるという類のサービスでもありません。
「解決できること」と「解決できないこと」を先に切り分けておくと、導入後のギャップがなくなります。ここは正直にお伝えします。
採用代行で解決できること|母集団形成・工数削減・要件の言語化
採用代行によって解決できるのは、主に次の3点です。
①応募を待たずに母集団をつくれる
企業側から候補者に接触できるため、応募数に左右されずに母集団を形成できます。地方拠点や専門職など、応募が発生しにくいポジションほど効果は大きくなります。
②採用担当の実務工数が空く
候補者検索、文面作成、配信、日程調整といった作業を委託することで、担当者は面接や現場調整といったコア業務に集中できます。
③曖昧だった採用要件が候補者に伝わる言葉に整理される
これは見落とされやすい価値です。外部の専門家が入ることで、「どの経験が必須で、どこは妥協できるのか」を現場と握り直す機会が生まれます。結果として、書類通過率や面談化率が改善するケースは少なくありません。
さらに、運用の数値(配信数・開封率・返信率・面談化率)が可視化されるため、経営層への報告資料もつくりやすくなります。
採用代行では解決できないこと|給与水準・勤務地・意思決定スピード
一方で、採用代行でも変えられないものがあります。
- 給与水準
- 勤務地
- 働き方の条件
- 社内の意思決定スピード
これらは自社で変えるしかない領域です。
とくに見落とされがちなのが、意思決定スピードです。候補者から返信が来ても、面接日程が2週間先にしか設定できない。現場責任者が選考に協力してくれない。こうした状態では、どれだけ優れた運用をしても成果は出ません。
導入前に、次の点を決めておくことをおすすめします。
【導入前チェックリスト】
- 面接可能な枠を週何コマ確保するか
- 一次面接の合否は何営業日以内に返すか
- 現場責任者を要件すり合わせに同席させられるか
- 想定年収レンジを事前に合意できているか
この4点が整っているかどうかで、成果の出方は大きく変わります。
製造業の採用代行にかかる費用相場と料金体系
採用代行の料金体系は、大きく3つに分かれます。
- 月額固定型
- 従量課金型
- 成果報酬型
どれが割安になるかは、委託範囲と採用人数によって変わります。順に見ていきましょう。
なお、以下に示す金額はあくまで目安です。実際の費用は各社で異なるため、検討時には必ず見積もりを取得してください。
月額固定型|月20万〜80万円が目安、部分委託なら月10万円台から
毎月定額で、決められた業務範囲を委託する体系です。
業務範囲を絞った部分委託であれば月10万円台から、採用業務全般を委託する場合は月40万円以上が目安になります。
| 委託範囲 | 月額の目安 |
|---|---|
| 部分委託(スカウト運用のみなど) | 月10万〜30万円程度 |
| 中途採用全般 | 月40万〜60万円程度 |
| 新卒+中途の並行支援 | 月60万〜80万円程度 |
メリットは、予算が読みやすく経営層に説明しやすいことです。
一方で注意点もあります。成果が出るまで契約期間が伸びれば、総額は膨らみます。契約期間(多くは3〜6か月)と解約条件は必ず確認しておきましょう。
また、求人広告の掲載費やスカウト媒体の利用料は別途発生するケースが多い点にも注意が必要です。「月額◯万円」だけで比較すると、実際の総額が想定を超えることがあります。
従量課金型|スカウト1通・面接調整1件などの単価制
実施した業務量に応じて課金される体系です。
スカウト送信:1通あたり数百円〜
面接日程調整:1件あたり数千円〜
採用ポジションが少ない場合や、繁閑差が大きい場合には無駄が出にくいという利点があります。
ただし、配信数が増えると月額固定型より高くつくことがあります。想定するボリュームで試算したうえで選ぶようにしてください。
たとえば月200通のスカウトを配信する計画であれば、従量課金型と月額固定型の総額を並べて比較する。この一手間で、選択の精度は大きく変わります。
成果報酬型|理論年収の15〜25%程度が目安
採用が決まったときのみ費用が発生する体系です。相場は理論年収の15〜25%程度、または1人あたり30万〜80万円の固定額といったパターンがあります。
- 人材紹介(30〜35%)より低い水準に設定されることが多く、企業側のリスクは小さくなります。
一方で、成果が出るまで運用に本腰が入りにくいという構造的な側面もあります。KPIの報告体制がどうなっているかを、契約前にセットで確認しておきたいところです。
人材紹介と採用代行のコスト比較|年収600万円×3名採用のケース
ここまでの内容を、具体的な数字で比較してみましょう。
【前提条件】
- 対象:技術系職種(生産技術・設計など)
- 理論年収:600万円
- 人材紹介の手数料率:35%
- 採用代行:月額型スカウト運用代行(媒体費込みで月50万円想定)/6か月運用
| 採用人数 | 人材紹介の総額 | 採用代行の総額 | 人材紹介の1人単価 | 採用代行の1人単価 |
|---|---|---|---|---|
| 1名 | 210万円 | 300万円 | 210万円 | 300万円 |
| 3名 | 630万円 | 300万円 | 210万円 | 100万円 |
| 5名 | 1,050万円 | 300万円 | 210万円 | 60万円 |
※上記は試算です。実際の費用は委託範囲・媒体・採用難易度により変動します
この表から分かることは明確です。
人材紹介は1名増えるごとに費用が積み上がる変動費であるのに対し、採用代行は運用期間に対する固定費です。そのため採用人数が増えるほど、1人あたりの単価は下がっていきます。
逆にいえば、採用数が年1名程度であれば人材紹介のほうが割安になるケースもあります。「何名採用するか」で損益分岐点が決まる、という理解が重要です。
自社の採用計画の数字を、この表に当てはめてみてください。
製造業に強い採用代行会社の選び方7つのチェックポイント
「製造業の実績あり」と書かれていても、その中身はさまざまです。現場採用の広告運用が中心かもしれませんし、技術職のスカウト運用が得意なのかもしれません。
ここでは、商談時にそのまま使える7つのチェックポイントを紹介します。
1. 技術系職種の要件を候補者に伝わる言葉へ翻訳できるか
最重要のポイントです。
確認方法はシンプルで、求人票やスカウト文面のサンプルを見せてもらうこと。職種特有の用語が正しく使われているかを確認します。
「生産技術」と一言書かれているだけの文面と、担当設備・工程・量産規模まで踏み込んでいる文面とでは、返信率がまったく変わります。
商談時には、次のように依頼してみてください。
「弊社の◯◯ポジションで、スカウト文面のサンプルを作っていただけますか」
アウトプットで判断するのが、最も確実な方法です。
確認質問の例
- 射出成形と切削加工では、訴求ポイントをどう変えますか
- 量産品のQAと開発試作のQAでは、ターゲット条件をどう分けますか
2. 製造業・メーカーの支援実績と、担当者自身の業界理解があるか
会社としての実績社数だけでなく、自社を担当するコンサルタント個人が製造業を理解しているかを確認しましょう。
支援実績は会社単位で語られがちですが、実務の品質は担当者に依存します。
メーカー出身者や元エンジニアがアサインされる体制かどうかは、大きな差になります。
契約前に確認したいこと
- 担当予定者の経歴(前職・業界経験年数)
- 過去に支援した製造業のポジション
- 同業界での支援社数
3. スカウト媒体を横断して中立的に提案できるか
特定媒体の販売代理を主目的とする会社は、自社が売りたい媒体を勧める傾向があります。
複数媒体を横断して比較提案できるかを確認してください。
技術系人材は媒体によって登録者の傾向が大きく異なります。機械・電気系に強い媒体と、IT系に強い媒体はまったくの別物です。
判断基準は、「なぜその媒体なのか」を候補者データベースの検索結果(該当人数)で説明できるかどうか。感覚ではなくデータで答えられる会社を選びましょう。
確認質問の例
「弊社のターゲット条件で、各媒体に何名の候補者が該当しますか」
4. 地方拠点・工場勤務ポジションの採用実績があるか
都市部のIT企業支援ばかりを手がけてきた会社では、地方勤務ポジションの訴求ノウハウが蓄積されていません。
地方拠点の採用には固有のノウハウが必要です。
- Uターン・Iターン層の探し方
- 居住地条件の設計
- 引越し費用や住宅補助の訴求方
過去の支援事例に「首都圏以外の勤務地」が含まれているかを確認しておきましょう。
5. 委託範囲と契約期間を柔軟に設計できるか
最初からフル委託を勧めてくる会社より、1ポジション・1媒体から小さく始められる会社のほうがリスクは低くなります。パッケージが固定されていて範囲を動かせないと、採用計画の変更に追随できません。
- 確認項目
- 最低契約期間
- 途中でのポジション変更の可否
- 繁忙期のボリューム増減への対応可否
6. KPI設計とレポーティングの仕組みがあるか
「何通送ったか」だけの報告では、成果が出ない原因を特定できません。返信率や面談設定率、選考通過率まで追い、改善サイクルを回せる体制かを確認しましょう。
数値が共有されない代行は、ブラックボックス化します。
レポート項目の例
- 配信数
- 開封率
- 返信率
- カジュアル面談化率
- 選考通過率
- 内定数
これらの数値は、社内で採用予算を確保する際の説明材料としても機能します。
7. 最終的な内製化まで見据えて伴走してくれるか
採用代行に依存し続ければ、コストは下がりません。ノウハウの移管や社内レクチャーまで提案できる会社が望ましいでしょう。
- カジュアル面談のレクチャー
- スカウト文面作成の型化
- 媒体運用のマニュアル化
専任1〜2名の体制であっても、型さえあれば運用を引き取ることは可能です。「社内に何が残るのか」を、契約前に確認しておいてください。
製造業でダイレクトリクルーティング運用代行を活用した事例
実際にメーカーが運用代行を導入すると、何が変わるのか。事例で確認しましょう。
事例1:人材紹介中心から転換し、高難度のプラントエンジニアを採用(株式会社TBM)
石灰石を主原料とする環境配慮型新素材「LIMEX」を展開する、ものづくりユニコーン企業の株式会社TBM。国内最大級のリサイクルプラントも運営しています。
- 導入前の課題
同社の採用はエージェント中心でした。ダイレクトリクルーティングも行っていたものの、スカウトは月200通程度で本格的な運用ではありません。
課題は2つありました。
- エージェント頼みでは、応募が来るかどうかを自社でコントロールできない
- ポジションが増えても、依頼から候補者の紹介まで3〜4週間かかる
同社は約60ポジションを同時に採用する、1ポジションあたりの人数が少ないロングテール型の採用を行っています。この体制ではリードタイムの長さが致命的でした。
そこで「1日でスカウト文面や求人票を変更でき、自社で能動的に動ける」ダイレクトリクルーティングへ、採用チャネルの中心を移すことを決めます。
- アウトソースを選んだ理由
社内では月1,000通以上を送っていましたが、面接や工場の制度変更など採用以外の業務が増え、スカウトに割く時間が確保できなくなりました。
もうひとつが、配信タイミングの問題です。データベースには毎日新しい候補者が現れるため、アクティブなタイミングで送ることが重要になります。しかし社員が毎日ログインして最適なタイミングで配信するのは、現実には困難でした。
- 成果につながった要因
同社は複数のスカウト代行を併用していますが、専門性が高く細やかなサーチが必要なポジションをPRO SCOUTに依頼しているといいます。
- 製造系ポジションは専門用語が多いが、メーカー出身者が担当するため要件理解がスムーズ
- 他社の代行は条件に合う候補者へ一斉配信するのに対し、1人ひとりに対して細やかにスカウトを送る
- 採用要件が変化しやすい新規事業にも、スピード感を持って対応
その結果、採用難易度の高いプラントエンジニアポジションでの採用決定につながりました。
本記事の「選び方1(技術要件の翻訳力)」「選び方2(担当者の業界理解)」がそのまま成果に直結した事例といえます。
事例の詳細はこちら:【株式会社TBM様】スカウト代行を複数社使って見えたPRO SCOUTの強みとは
事例2:導入1か月で採用決定、自社運用時より応募数が約3倍に(株式会社富士通ゼネラルOSテクノロジー)
富士通ゼネラルとアウトソーシングテクノロジーの共同出資により誕生した株式会社富士通ゼネラルOSテクノロジー。パッケージシステムを展開するソリューション事業と、人材ビジネス事業を手がけており、SE(システムエンジニア)を中心に採用しています。
- 導入前の課題
採用は求人広告と転職フェアが中心でした。応募自体は一定数あったものの、求める要件が高く、ターゲット層からの応募が少ないという課題を抱えていました。そこで、狙いたい人材に直接アプローチできるダイレクトリクルーティングを開始します。
- アウトソースを選んだ理由
決め手は工数でした。当時は採用担当2名体制(現在は3名)。自社で月に約200通のスカウトを送っていましたが、要件に合う候補者を探し、1人ずつカスタマイズした文面を書くと1通あたり10〜15分かかります。
「スカウトを打っていたら1日が終わってしまうこともあった」といいます。専任が少ない企業には、心当たりのある光景ではないでしょうか。
- 導入後の成果
- 導入から約1か月でエンジニアの採用が決定
- 返信率が向上し、自社運用時と比べて応募数が約3倍に
- 隔週の振り返りミーティングで、毎回新しい改善策が提示される
同社は、ダイレクトリクルーティングの強みを「要件に合った人からの応募が得られるため、選考通過の歩留まりがよいこと」「求人内容を修正してすぐ効果を見られる、改善スピードの速さ」と語っています。
なお、契約前に「元エンジニアの担当者と話せないか」と依頼したところ即座に受け入れられたことが、信頼につながったとのこと。本記事の「選び方1」で紹介した、アウトプットや担当者で見極める方法を実践した例です。
事例の詳細はこちら:【株式会社富士通ゼネラルOSテクノロジー様】PRO SCOUT導入1ヶ月でエンジニア採用決定!応募者数も3倍に!
製造業で採用代行を成功させるための進め方と社内体制
採用代行は、契約すれば勝手に人が採れるサービスではありません。導入前の準備と社内体制の整備が、成果を大きく左右します。
導入までの流れ|問い合わせから運用開始まで約1か月
一般的な流れは次のとおりです。
- 問い合わせ・資料請求
- 現状ヒアリング(採用課題・体制・過去の実績を共有)
- 提案・見積(委託範囲と費用の確定)
- 契約
- キックオフ(採用要件・選考フローのすり合わせ)
- 媒体選定・文面作成
- 配信開始
運用開始までは、おおむね2週間〜1か月程度を見込んでおきましょう。
キックオフでは、採用要件、選考フロー、面接可能枠、想定年収レンジをすり合わせます。
ここに現場責任者を同席させられるかどうかで、その後の精度が大きく変わります。
人事だけで要件を固めてしまうと、後から「この経験では現場が納得しない」という手戻りが発生しがちです。
よくある失敗パターンと回避策
失敗の多くは、次の3つに集約されます。
| 失敗パターン | 回避策 |
|---|---|
| 委託範囲が曖昧 | どこまでが代行会社の責任範囲かを契約時に文書化する |
| 社内の面接体制が整っていない | 週あたりの面接可能枠と、合否連絡の期限を先に決める |
| 短期間で成果を判断してしまう | スカウト運用は成果が安定するまで通常3か月程度かかると理解する |
とくに3つ目は重要です。スカウト運用は、文面と条件の改善サイクルを回して初めて成果が安定します。1か月で「効果がなかった」と判断してしまうと、改善が始まる前に終わってしまいます。
社内稟議を通す段階で、評価のタイミングを3か月後に設定しておくことをおすすめします。
製造業の採用代行に関するよくある質問
Q1. 製造業の採用代行の費用相場はどのくらいですか
月額固定型で月10万〜80万円程度が目安です。スカウト運用のみなど範囲を絞った部分委託なら月10万円台から、採用業務全般の委託であれば月40万円以上を見込んでおくとよいでしょう。スカウト媒体の利用料は別途発生するケースが多い点にもご注意ください。
Q2. 採用代行と人材紹介はどちらが安いのですか
採用人数によって変わります。年1名程度であれば人材紹介が割安になることもありますが、複数名を採用する計画であれば採用代行のほうが1人あたり単価を抑えられます。年収600万円で3名採用する場合、人材紹介は約630万円、月額型の採用代行は6か月で約300万円という試算になります。
Q3. 地方の工場勤務でも採用できますか
可能です。地方拠点の求人は応募を待つ手法では母集団が形成しにくいものの、Uターン・Iターン志向の候補者を企業側から探し出すことはできます。ただし、居住地条件の設計や訴求方法にノウハウが必要なため、首都圏以外での支援実績がある会社を選ぶことが重要です。
Q4. 採用担当が1名しかいなくても導入できますか
導入できます。むしろ専任が少ない企業ほど、候補者検索や文面作成といった工数のかかる業務を委託する価値があります。返信があった候補者との面談に集中できる体制をつくることで、1〜2名の体制でも運用は回ります。
Q5. 委託してからどのくらいで成果が出ますか
スカウト運用の場合、文面と条件の改善サイクルを回して成果が安定するまで、通常3か月程度が目安です。1か月目は初期設計と配信開始、2か月目以降に数値を見ながら改善を重ねる流れになります。短期間での判断は避けましょう。
Q6. 技術職の要件が固まっていなくても相談できますか
相談できます。むしろ要件の言語化そのものを支援メニューに含む会社が多くあります。「どの経験が必須で、どこは妥協できるのか」を現場と整理し直す過程で、書類通過率が改善するケースも少なくありません。
Q7. 契約期間の縛りはありますか
多くのサービスで3〜6か月の最低契約期間が設定されています。スカウト運用は成果が出るまで一定期間を要するためです。契約前に、最低契約期間・途中解約の条件・ポジション変更の可否を確認しておきましょう。
まとめ|製造業の採用代行は「どのタイプを選ぶか」で成果が決まる
製造業の採用難は、構造的な問題です。手法を変えなければ、状況は改善しません。
本記事の要点を振り返ります。
- 製造業の採用難は構造要因による:就業者数の減少、技術者市場の需給逼迫、地方拠点という立地の3つが重なっている
- 人材紹介依存は3つの点で限界がくる:コストの高騰、技術要件の伝達不足、母集団のコントロール不能
- 採用代行は3タイプある:技能職なら求人広告運用代行、技術系人材ならダイレクトリクルーティング運用代行、工数削減なら採用事務局代行
- 選ぶ基準は4つ:技術要件の翻訳力、担当者の業界理解、媒体選定の中立性、KPI設計とレポーティング
採用したい職種に合わせて代行の「型」を選び、まずは1ポジションから小さく始める。これが最短ルートです。
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投稿者プロフィール

- ダイレクトリクルーティングに特化した採用メディア「VOLLECT JOURNAL」の編集部です。採用人事の方に向けて、スカウト採用のノウハウや媒体比較、成功事例を発信しています。運営:株式会社VOLLECT(https://vollect.net/)

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