ポテンシャル採用とは?何歳までが対象なのかは企業次第?

採用

採用担当者のみなさんなら一度は聞いたことがあるであろう「ポテンシャル採用」。

「聞いたことはあるけど、どのような意味なのかわからない」「何歳までが対象なの?」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回は、ポテンシャル採用とは何か、何歳までが対象なのか、メリットやデメリットなどを解説します

さらに、ポテンシャル採用の今後の展望も紹介しますので、ポテンシャル採用に興味がある、将来有利になるなら試してみたいと思う採用担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

ポテンシャル採用とは?

本章では、ポテンシャル採用とは何か、また、近年のポテンシャル採用のトレンドを紹介します。

ポテンシャル採用の基本情報

ポテンシャル採用とは、「potential=潜在的」という単語が使われていることからもわかる通り、潜在的な能力を有した人物を採用する採用方法です。

潜在的な能力とは、候補者の素養や人柄などを指します。つまり、現時点の業務に関わるスキルや経験を評価するのではなく、将来の成長度合いや発揮できるであろう力、企業に適合するかどうかを見越して採用するのです。

ポテンシャル採用で求められる能力は、企業ごとに異なります。「論理的思考」を大事にする企業もありますし、「コミュニケーション能力」を重視する企業もあります。

ポテンシャル採用の近年のトレンド

では、ポテンシャル採用は実際どの程度行われているのでしょうか?

エン・ジャパン株式会社が運営する『エン転職』に掲載された未経験者歓迎求人の割合は、2023年時点で80%を占めており、2020年から25%増加しています

これは、近年の少子高齢化による生産年齢人口の減少に伴う採用難に起因するものです。

引用:▼未経験者歓迎求人の割合

企業側が未経験者採用、つまりポテンシャル採用を強化していますが、求職者側もポテンシャル採用に魅力を感じる調査結果が出ています。

「Re就活」などを運営する株式会社学情が行った調査によると、「第二新卒採用」など20代がターゲットであることを明確にした募集は「魅力を感じる」と回答した20代が約9割にものぼることがわかりました。

引用:「第二新卒採用」「ポテンシャル採用」など、20代がターゲットであることを 明確にした募集は「魅力を感じる」と回答した20代が約9割。 「採用対象になるかがわかりやすい」の声

以上のことから、ポテンシャル採用は企業側も求職者側も関心が高まってきていることがわかります。

ポテンシャル採用は何歳までが対象になるのか?

ポテンシャル採用は、何歳までが対象になるのか気になる方も多いのではないでしょうか?本章では、ポテンシャル採用の年齢について解説していきます。

一般的には20代から30代前半くらいまで

ポテンシャル採用の対象は、「〇歳まで」と明確に定められているわけではありません

しかし先述したように、ポテンシャル採用は将来の可能性を見込んだ採用方法であるため、若い世代、つまり第二新卒や既卒の20代から、30代前半の転職希望者を指すことが一般的です

企業によって捉え方が異なる場合も

一般的に20代から30代前半が対象とはなりますが、そうでない場合もあります。

たとえば、「これまで培った経験やスキルなどにより、自社でさらに成長し、活躍できる見込みがある」と捉える場合です。実際に、ある企業のポテンシャル採用枠では「30歳未満」と年齢制限を設けているものの、「既卒で就業経験がある場合はその限りではない」というケースもあります。

そのため、40代や50代でもポテンシャルを評価して採用される可能性があるのです。

ポテンシャル採用と中途採用の違い

ポテンシャル採用と中途採用では、明確な違いがあります。2つの観点からの違いをそれぞれ解説していきます。

評価基準の違い

一つ目は、評価基準の違いです。ポテンシャル採用では、「将来的に成長する、自社に貢献する人材か」どうかが評価基準となります。

しかし中途採用では、「自社が求めているスキルを今現在すでに持ち合わせているか」どうかが採用基準となるのです。

つまり、ポテンシャル採用では面接などの人柄や適性テストなどで判断しますが、中途採用では今までの経験や職歴などで採否を判断します。

採用目的の違い

二つ目は、採用目的の違いです。ポテンシャル採用では、「将来的に活躍が見込まれる人材を採用すること」が目的です。

一方中途採用では、「即戦力人材を採用すること」が目的なことが多いです。

ポテンシャル採用を導入するメリット

ポテンシャル採用のメリットには、広範な人材プールからの採用が可能、企業文化への適応が容易などのメリットがあります。それぞれ解説していきます。

広範な人材プールからの採用が可能

ポテンシャル採用では、採用時点での業務に関わるスキルや経験は求められません。そのため、広い範囲の人材プールからの採用が可能になります。

とくに、IT人材などの専門知識を必要とする職種の中途採用では需要が供給を上回り、採用難の状態が続いています。このような場合、未経験OKのポテンシャル採用を導入すれば、成長してくれるであろう人材を確保することができるのです。

経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」では、今後ますますIT人材不足が深刻化すると発表しました。調査によると、2015年のIT人材不足は約17万人でしたが、2030年には最大約79万人にも及ぶとされています。

引用:経済産業省「IT人材需給に関する調査」

つまり、今後ますます採用が難しくなる人材を早くから育てることで、他社と同様に採用難に陥ることを防げるのです。

新しい視点やアイデアを獲得できる可能性

即戦力を求める中途採用では、良くも悪くも属性の似た人材を採用することが多いです。そのため、なかなか新しい考えが生まれません。

しかし、ポテンシャル採用によって特定のスキルを求めない採用を行うと、新たな視点やアイデアを持った人材を獲得できます

その結果、今までは思いつかなかったアイデアが浮かび、新規事業に発展する可能性があります。新規事業までは発展しなくとも、他業種で培った視野を活用し、既存の事業の改善点を見出すことができる可能性があり、会社の成長につながるのです。

育成コストの削減

ポテンシャル採用では、新卒採用と比べて育成コストが抑えられます。

ポテンシャル採用では社会人経験がある人材を採用するので、ビジネスマナーなどの社会人の基本的なスキルの研修を行う必要がありません

業務に関わるスキルの習得には一定の期間が必要ですが、ビジネスマナーなどを0から教える必要がないため、新卒よりも活躍の時期は早まるでしょう。

企業文化への適応が容易

ポテンシャル採用では、社会人経験が浅かったり、該当職種を経験していなかったりします。

そのため、他社の企業文化や職種独特の仕事の進め方に染まり切っていないことが多く、自社の文化や部署方針に柔軟に対応してくれる可能性が高いのです。

企業文化への適応が容易で早いと、自社に対するエンゲージメントも高くなる可能性が高いです。その結果、早期離職につながる恐れも低くなります。

組織の若返り

ポテンシャル採用によって若い世代の人材が入ることで、組織の若返りを図ることができます。

とくに中小企業は、中途採用のみ行っている企業も多いです。実際に、商工中金が実施した調査によると、中小企業の新卒採用への意欲は高まっているものの、実施していない企業が約半数にのぼります。

引用:中小企業の人材確保に関する調査「中小企業の新卒・中途採用動向」

中途採用では即戦力が求められるため、比較的年齢が上の世代が採用され、中途採用のみ行っている企業は平均年齢が高いのが現状です。

若い世代がいないと、企業の存続が危ぶまれます。将来の役員、マネージャー候補がいなかったり、そもそも手を動かす人間がいなくなったりする可能性があるのです。

ポテンシャル採用を行えば、組織の若返りを図ることができ、企業の存続にも寄与するでしょう。

ポテンシャル採用で成功するためのポイント

ポテンシャル採用で成功するためのポイントは、求めるポテンシャルの明確化やキャリアビジョンの共有などがあります。それぞれ解説していきます。

求めるポテンシャルの明確化

ポテンシャル採用を行うにあたって、まずは求めるポテンシャルを明確化しましょう。

求めるポテンシャルの明確化とは、具体的には下記です。

・どのような可能性を秘めた人材が自社で成長、活躍できるか
・どのような素質を持っていれば将来活躍できそうか
・応募者に現段階で求めるスキルは何か など

ポテンシャルの明確化ができていないと、採用基準にばらつきが生じ、採用する人材にもばらつきが出てしまいます。

また、採用決定がある特定の採用担当者しかできなくなってしまうなど、属人化する恐れも
あります。属人化してしまうと、その採用担当者がチームから抜けたり退職してしまったりすると、採用の質が担保できません。すると、アンマッチな人材を採用してしまったり、早期離職を招いたりする恐れがあります。

このような事態を防ぐために、求めるポテンシャルは必ず明確にすることが必須です。チームや面接に関わる社員にも共有できるよう、明文化するとなお良いでしょう。

キャリアビジョンの共有

応募者とのキャリアビジョンの共有も、ポテンシャル採用を成功させるためのポイントです。

両者の間でこの部分のずれがあると、早期離職やモチベーション低下につながってしまいます。

具体的には、面接で下記のような質問をすると良いでしょう。

・将来具体的にどのような業務を行いたいか?
・具体的にどのようなキャリアを積んでいきたいか?(マネージャーになりたいか、もしくはずっとプレイヤーでいたいかなど)
・将来携わりたい業務に向け、どのようなスキルの習得が必要だと思うか?また、スキル習得はどのように行うべきと思っているか?
・自分のキャリアプランが、会社の事業計画や将来性などと重なる部分はあると思うか? など

ただしここで注意したいことは、応募者だけに考えさせないようにすることです。

応募者のキャリアビジョンを聞いたうえで、自社は応募者に何ができるのか、また、自社の方向性と重なる部分はどこなのか、お互いが歩み寄り模索していくことが、この採用難の時代には求められるのです。

育成体制の強化

ポテンシャル採用成功のためには、育成体制の強化も求められます。

前章では、ポテンシャル採用のメリットとして「育成コストの削減」を挙げました。これは、ビジネスマナーなどの社会人に必要な最低限のスキルの育成が必要ないということです。

しかし、ポテンシャル採用では業務に関わるスキルは一から習得しなければならないことが多いです。そのため、より実務的な育成体制を強化することはきわめて重要です。具体的には、業務研修はもちろん、メンター制度や定期的な面談を行うなどポテンシャル人材が安心してスキル習得を進められる環境を作るよう心がけると良いでしょう。

新たな職種にチャレンジする際、誰しも「自分は会社のためになれているのか」「スキルが身につかないのではないか」と不安になるもの。しかし、体制強化をすることで早い段階から成功体験を積めるようになります。その結果、自信がつき早期離職やモチベーション低下を防止できるでしょう。

ポテンシャル採用のデメリットと対策

ポテンシャル採用には、戦力になるまでには時間を要したり、早期離職のリスクがないわけではなかったりといったデメリットもあります。これらのデメリットをそれぞれ解説するとともに、対策も解説していきます。

戦力になるまでには時間を要する

中途採用と違い、ポテンシャル採用では「将来活躍できる見込みがあるかどうか」で採用を判断します。基本的なビジネスマナーなどは習得していても、業務経験はなく一から習得しなければならない場合が多いのです。

そのため、戦力になるまではそれなりの時間を要しますので、心得ておきましょう。

少しでも早く戦力に育てるには、綿密な育成計画を事前に立てる、メンター制度を導入し効率的にスキル習得を目指すなどの工夫が必要です。

早期離職のリスクがないわけではない

ポテンシャル採用の応募者は、過去に退職を経験しています。そのため、「退職」に対しあまり抵抗感を持っていない可能性があります。

ポテンシャル採用では、未経験の職種に就くことが多いため、入社前と後のギャップが生じやすいのが事実です。いくら選考で自社とのマッチ度の見極めを行ったとしても、ミスマッチは生じてしまう可能性があるのです。

そのミスマッチが生じると、ポテンシャル人材は退職に抵抗がないのも相まって、早期離職してしまう可能性があります。

早期離職を防ぐ対策としては、採用HPやSNS、面接時などの採用前の段階で企業文化を開示することが重要です。また、本人の希望するキャリアパスを自社で実現できそうであれば、どのようなステップで実現できるのかを具体的に説明し、適切な期待値を持たせることがポテンシャル採用成功の鍵です。

採用基準が曖昧になる可能性

「ポテンシャル」と一言で言っても、企業によってその意味するところはさまざまです。「5‐1.求めるポテンシャルの明確化」でも述べたように、ポテンシャル採用を行う企業はその求めるポテンシャルを明確化する必要があります。

明確化を怠ると、採用基準が曖昧になり、ミスマッチや早期離職を引き起こす可能性があるからです。

明確化に伴い、「ポテンシャル」を曖昧な概念とせず、具体的に言語化・数値化して一貫した評価基準のもと採用活動を行うことが重要です。

例えば、下記のような5段階評価の基準を設けるなど、誰が評価を行っても同じ判断ができるような基準を考案しましょう。

コミュニケーション能力の評価基準の例

1:会話のキャッチボールが困難である
2:目を見て話す、質問に明確に答える、声量や速度が適切などコミュニケーションにおける基本事項を網羅していない
3:目を見て話す、質問に明確に答える、声量や速度が適切などのコミュニケーションにおける基本事項を網羅している
4:相手の立場に立って考え、相手の気持ちを推測しながら、自分の意見をわかりやすく伝えることができる
5:4に加え、多種多様な価値観や考えを否定しない姿勢がみられる

ポテンシャル採用の今後の展望

昨今増加してきているポテンシャル採用ですが、今後の展望が気になる採用担当者の方も多いのではないでしょうか?ここからは、ポテンシャル採用の今後の展望を解説していきます。

生産年齢人口の減少によるポテンシャル採用の増加

生産年齢人口とは、労働の中核的な担い手として経済と社会保障を支えていると考えられている層で、生産活動を支える15〜64歳の人口のことです。

少子高齢化で生産年齢人口は年々減り続けています。

パーソル総合研究所と中央大学が発表した調査結果によると、2030年には644万人もの人手不足が起こると予想されています。

職業別に見ると、「専門的・技術的職業従事者」は212万人にものぼります。

ただでさえ人手不足の状況の中で、即戦力人材を採用するのは至難の業となるでしょう。そのため、未経験であっても採用し人材育成を行うポテンシャル採用の手法を採ることで、将来の採用難に備える企業が増えると予想されます。

引用:労働市場の未来推計 2030

多様性の確保によるイノベーション促進への期待

即戦力採用では保有スキルが同じか似ているため、似たような考え、価値観を持った人材が自然と集まりやすいのが特徴です。

しかし、ポテンシャル採用では、多種多様なバックグラウンドを持った人材を採用できます。

そのため、今までになかった発想で新規事業が生まれたり、既存サービス・製品の改善点が見えたり、新たな活路を見いだせたりする可能性があるのです。

事業だけでなく、社内に新たな制度が誕生したり、新たな福利厚生が追加されたりと、社員の働きやすさ向上にも寄与する可能性もあります。

目まぐるしく変化する現代において、企業には常に変化が求められます。そのような中で、多様性の確保によるイノベーション促進は、企業にとって講ずるべき施策と言えます。このような理由からも、ポテンシャル採用を導入する企業は増えるでしょう。

中途採用との融合

これまで経験やスキルに依存していた中途採用に、限界を感じている企業も少なくありません。繰り返しにはなりますが、少子化による生産年齢人口の減少により、スキルを有している人材が減少しているからです。

その打開策としてポテンシャル採用を導入することで、成長可能性や柔軟性を重視する動きが進み、幅広い人材採用の手法が広がることが考えられます。

中途採用とポテンシャル採用が融合することで、さまざまな採用手法を実施する必要性が出てくるでしょう。

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まとめ

今回は、ポテンシャル採用とは何か、そのメリットやデメリット、対象年齢、今後の展望などを解説しました。

ポテンシャル採用とは、将来自社で活躍してくれるであろう人材を採用する採用方法のことです。

即戦力を求める中途採用とは異なり、選考段階で業務に関わるスキルを有していなくても、素養や人柄で採用が決まります。

一般的に、ポテンシャル採用の対象者は20代~30代前半とされていますが、その解釈は企業によってさまざまです。

ポテンシャル採用では広範な人材プールからの採用が可能であったり、組織の若返りを図ることができたりするメリットがあります。一方で、戦力になるまでは時間がかかる、採用基準が曖昧になる可能性があるなどのデメリットも。育成体制の強化や明確な採用基準を設けるなどの対策が必要です。

少子化により今後ますます生産年齢人口が減少すると予測されるなかで、ポテンシャル採用は企業が採らざるを得ない採用方法です。ぜひ貴社も本記事を参考に、早い段階からのポテンシャル採用の導入を検討してみてはいかがでしょうか?

参考記事:すべらない転職ポテンシャル採用とは?転職でアピールするコツや求人の見つけ方を解説!| アクシス