リファラル採用の報酬はどう決める?相場や違法になるケースを解説
リファラル採用とは、自社の社員の知人を会社に紹介してもらい、採用選考する採用手法のこと。
欧米では採用手法の1つとして確立しており、優秀な人材の確保手段として日本でも近年注目されている採用手法です。
リファラル採用では紹介してくれた社員に報酬を支払う場合もあります。
そこで本記事では、リファラル採用のメリット・デメリットに加え、採用に至った場合の社員への報酬相場を紹介します。
また、報酬の設定によっては違法になる場合もあり、こちらについても詳しく解説します。
リファラル採用を始めたいけど適切な報酬額がわからない、現在の報酬設定を見直したい人事担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
関連記事:リファラル採用とは?メリットや規程例、トラブルを避ける方法を紹介
目次
リファラル採用のメリットとデメリット
リファラル採用とは、自社の社員から知人を紹介してもらう採用手法です。労働人口が減り、有効求人倍率も右肩上がりの日本の労働市場において、近年重要視されています。
こちらでは、リファラル採用のメリット・デメリットを紹介します。
メリット
リファラル採用には、5つのメリットがあります。
・自社にマッチした候補者と出会える
・早期離職率が低い
・採用コストを削減できる
・転職潜在層にアプローチできる
・社員のエンゲージメント向上につながる
それぞれ順番に解説していきます。
自社にマッチした候補者と出会える
現役社員が「自社に合いそう」と判断した候補者を紹介してもらえるため、マッチング率が高いのがリファラル採用の大きな特徴です。
「自社に合う」とは、候補者の有しているスキルはもちろんのこと、自社にカルチャーフィットするかなどの観点から総合的に判断することです。
また、社員と候補者は大学や前職が同じなどの場合が多く、属性が似ています。そのため、自社が求める人材像に合った候補者を紹介される可能性が高く、マッチング率が高いと言えます。
早期離職率が低い
知人に紹介してもらった企業に入社することは、採用後の早期離職率が低い傾向があります。
「せっかく知人に紹介してもらい入社もできたのに、早々に辞めるのは気が引ける」といった心理が働くからです。
また、そもそも現役社員から見て「自社の風土、社風に合いそう」「職務内容がぴったり」と判断され紹介されるため、ミスマッチが起こりにくいとされています。そのため、早期離職の可能性も自然と下がるのです。
採用コストを削減できる
リファラル採用は採用コスト削減にもつながります。
従来の採用手法は、求人広告や、エージェントと呼ばれる人材紹介会社からの紹介が一般的でした。
求人広告は1枠20万円~100万円、人材紹介は成果報酬型で転職先の理論年収の25~35%が相場です。
しかし、リファラル採用では自社の社員のみで採用活動を行うため、採用コストがほぼかかりません。
今回お伝えする報酬もそこまで高額には設定できないため、採用コストを削減できる可能性が高いです。
転職潜在層にアプローチできる
リファラル採用は、直近で転職をしたいと思っていない「転職潜在層」と呼ばれる人材にもアプローチができます。
このような人材は、信頼のおける知人から自社に来ないかと言われて、はじめて転職してみようかなという気持ちになります。
転職潜在層は求人広告サービスや人材紹介会社にも登録していないため、優秀な人材の単願応募やスピーディな内定承諾につながるのです。
社員のエンゲージメント向上につながる
リファラル採用は、紹介した自社の社員も、採用に至った候補者も会社に対するエンゲージメントが向上する傾向があります。
紹介する社員は、知人を自社に誘う際には、知人が採用選考を受けてみたいと思えるように説明することが不可欠です。
そのためには、自社の魅力を言語化しなくてはなりません。伝える内容を考えることにより、自社の魅力を改めて認識できるのです。
候補者側も、入社当初から知人がいる安心感や、社風や風土にマッチし馴染みやすい特性があるため、愛社精神が醸成されやすい傾向にあります。
デメリット
メリットが多数ある一方で、下記のデメリットもあります。
・人間関係に影響を与える可能性がある
・人材が偏る可能性がある
・計画的な採用が難しい
それぞれ解説していきます。
人間関係に影響を与える可能性がある
リファラル採用は、自社の社員と知人の人間関係に影響を与える可能性があります。リファラル採用では、通常の採用基準で採用可否を判断されるため、不採用になる候補者も出てくるからです。
また、入社後に「聞いていた話と違う」と候補者が思ってしまう場合は、紹介した社員との人間関係が悪化してしまう可能性もあるのです。
さらに、紹介した候補者が早期退職してしまった場合は、紹介した社員は会社に対し居心地の悪さを感じてしまったり、モチベーション低下につながる可能性もあります。
ですので、企業側は紹介してくれた社員と定期的にコミュニケーションを取ったり、採用後の人員配置を適切に行うことが重要です。
人材が偏る可能性がある
リファラル採用の懸念点として、紹介される候補者は属性が似ている場合が多く、人材の偏りが起こる可能性があります。
例えば、「マネジメントよりもプレイヤーでいたい」人材が多く集まれば、マネジメントする人間がおらず、組織として機能しなくなってしまいます。
このように、人材が偏りすぎると組織構造に問題が生じてしまったり、思考がマンネリするなどの恐れもあります。
組織のバランスを考え採用していくことが重要です。
計画的な採用が難しい
リファラル採用は、「〇月までに〇人採用する」など計画的な採用が困難です。
社員の活動次第で採用活動が進む特性があるからです。
そのため、すぐ人材が欲しい場合ではなく、長期的に考えて体制強化をしたい場合にリファラル採用が適していると言えるでしょう。
リファラル採用の報酬の相場とは
リファラル採用では、紹介してくれた社員に報酬を支払う企業もあります。報酬を設けることによって、社員からの紹介が活性化します。
しかし、いくら報酬額を高額に設定していたとしても、自社の社員が「知人にも胸を張っておすすめできる会社」と思ってくれなくては紹介数は伸びません。ですので、報酬を設定しているからといって続々と紹介があるとは限らないので留意しておきましょう。
今回は金銭の報酬相場を紹介します。
2018年にリファラル採用支援を行う企業の株式会社MyReferが公開した報酬相場は下記です。
1~9万円のインセンティブ:69社(46.9%)
10~29万円のインセンティブ:46社(31.3%)
30万円以上のインセンティブ:10社(6.8%)
1~9万円の報酬に設定している企業が46.9%と最も多く、次いで10~29万円が31.3%でした。
ただし、報酬自体設けていない企業も14.3%あったり、30万円以上の高額な報酬を設けている企業も6.8%いたりと、企業によってさまざまです。
また、企業によって報酬を渡す時期は「使用期間半年が経過した後」「紹介してくれた時点」など様々です。下記に報酬額と時期・支給方法の例を示します。
A社
対象:採用決裁権を持つ役員以外の従業員
金額:一律10万円
時期:入社後、試用期間3ヶ月が終了した翌月
方法::組織貢献インセンティブとして、給与支給
B社
対象:役員を除いた従業員
金額:面談実施は1万円、採用決定は5万円
時期:入社月に紹介従業員に支給
方法:社員紹介礼金として給与支給
C社
対象:全従業員
金額:ギフト券 1万円分
時期:入社日
方法:ギフトを支給(雑所得とする)
D社
対象:部長以上を除く、従業員
金額:10~80万円(職種や役職による)
時期:ご友人の試用期間3ヶ月終了後、次の賞与支給時
方法:社員紹介賞与としてインセンティブ支給
現金以外の報酬もある
報酬内容は、金銭である場合が多いですが、企業によっては休暇やディナー券などを支給しているところもあります。
現金だけがリファラル採用の促進につながる訳ではありません。
金額が高いと、むやみやたらに紹介し、紹介者の質が下がることも考えられます。
特に海外では、金銭以外の報酬も豊富です。金銭以外の報酬には、下記があります。
②体験:スパや劇場、スポーツ、テーマパークのチケットなど。従業員が選べる形もある。
③休暇:リファラル採用の特別休暇や、それに付随する旅費の補助
④チャリティ:報酬の一部または全額を、慈善団体に寄付する
⑤評価:会社の人事制度により、紹介者を評価する
⑥会食費:紹介者との食事代を支払う
リファラル採用の報酬の決め方
リファラル採用の報酬の決め方はさまざまです。こちらでは、目的別の報酬設定の仕方を解説します。
【目的】スキルの高い人材を紹介してもらう
転職市場では希少なスキルの高い人材を紹介してほしい場合には、報酬を高めに設定することが有効です。
採用難であるエンジニア職種や、特別な資格を有している人材、採用難職種で経験年数を積んでいる人材を紹介してもらった場合には、他の紹介よりも報酬を上げることも考えましょう。
【目的】紹介応募数を増やす
リファラル採用で母集団形成をしたい場合は、採用に至った場合ではなく、紹介を受けた時点で報酬を支給しましょう。
ただし、この方法には危険な一面もあります。報酬目的で無責任に知人紹介する社員が出てきてしまう点です。
また、1人の社員が多数の知人を紹介する可能性もありますので、「年度中の紹介は1社員〇人まで」などルールを決めると良いでしょう。
【目的】紹介入社の早期離職を防ぐ
紹介入社後の早期離職を防ぐために、入社後一定期間経った後に紹介者に報酬を支給する方法もあります。一定期間とは、例えば試用期間終了時期の入社6ヶ月後などです。
早期離職を防ぐためには、報酬のタイミングを工夫するだけでなく、ミスマッチが起こらないよう、選考段階できちんと自社の実態を伝えることも大切です。
リファラル採用の報酬に規程や上限はある?
リファラル採用の報酬支給を行う際には、知っておかなければいけない法律が4つあります。また、報酬の明確な上限はありませんが、注意すべきラインはあります。
それぞれ解説していきます。
知っておくべき法律
リファラル採用を行う際に必ず知っておくべき法律は下記4つです。
・職業安定法第30条
・職業安定法第40条
・労働基準法第11条
・労働基準法第15条
それぞれ順番に中身を見ていきましょう。
職業安定法第30条
職業安定法とは、職業紹介・労働者募集・労働者供給に関するルールについて定めた法律のことです。職安法と略されるのが一般的です。
職安法の第30条では、以下のように定められています。
(有料職業紹介事業の許可) 第三十条 有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。 |
引用:職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)|e-Gov法令検索
人材紹介は、厚生労働省の需給調整課が管轄する国の許認可事業です。つまり、職業紹介によって報酬が発生する場合は、厚生労働大臣の許可を受けていないと違法であるとみなされる可能性があります。
しかし、リファラル採用実施のために、社員が厚生労働省から一人ひとり認可を受けるのは現実的ではありません。そこで、職業安定法第40条が関係してきます。
職業安定法第40条
職安法第40条は、労働者の募集に関する報酬の供与の禁止について定めたものです。
(報酬の供与の禁止) 第四十条 労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、 賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、 報酬を与えてはならない。 |
引用:職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)|e-Gov法令検索
企業がリファラル採用の報酬を従業員に払うことは原則違法となります。しかし、例外として、賃金や給料として支払うことは認められているのです。
そのため、リファラル採用の報酬は、賃金や給料の形で支払うことが必要となります。
労働基準法第11条
労働基準法は、労働条件の最低条件を定めた法律です。労基法と略されるのが一般的です。
労基法第11条に、以下のような記述があります。
第十一条 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、 労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。 |
引用:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)|e-Gov法令検索
賃金としてリファラル採用の報酬を支給する場合は、賃金の定義を確認しておきましょう。
労働基準法第15条
労基法第15条では、労働条件の明示について以下のように定められています。
(労働条件の明示) 第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を 明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で 定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。 |
引用:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)|e-Gov法令検索
リファラル採用の報酬を賃金や給与として支払う場合は、その旨を条件とともに就業規則や雇用契約などに記載し明示する必要があります。
就業規則に明記することで、リファラル採用を労働条件として日常業務と位置づけられるとともに、人材紹介業務だけに対して報酬を与えているのではないことを証明できるのです。
報酬の上限目安
リファラル採用の報酬は、法律では明確な上限が定められていません。
しかし、あまりに高額な場合は、事業として人材紹介を行っているとみなされてしまいます。その場合、人材紹介事業に関する許可を受けていないと、違法となってしまうのです。
そのため、報酬の目安として、人材紹介を事業として行っている人材紹介会社の成功報酬額である理論年収の25~35%よりも低い額に設定しておくと良いでしょう。
リファラル採用の報酬で違法になるケースとは?
<就業規則にリファラル採用に関する事項を明記していないケース>
前章でも説明したように、リファラル採用の報酬を賃金や給与として支払う場合は、その旨を条件とともに就業規則や雇用契約などに明記しなければなりません。
リファラル採用を行う場合は、リファラル採用を業務の一部と定め、報酬の規定について必ず明記しましょう。
規定例が記載されている記事▶︎リファラル採用とは?メリットや規程例、トラブルを避ける方法を紹介
リファラル採用の成功事例
本章では、リファラル採用に成功している企業を紹介します。ぜひ参考にしてみてくださいね。
株式会社セールスフォース・ジャパン
株式会社セールスフォース・ドットコムは、CRM(顧客関係管理)プラットフォーム「Salesforce」を販売している企業です。アメリカに本社を置き、世界各地に拠点を置いています。
日本にも東京本社と大阪および名古屋、福岡 、白浜サテライトオフィスの5箇所の拠点があり、毎年数百人規模の採用を実施しています。なんとその半数はリファラル採用での採用とのことです。
リファラル採用における施策・ポイントは以下の通りです。
・コアバリューに沿った人材の採用
会社が大事にしているコアバリュー(会社のベースとなる価値観)にフィットする人材を採用する。この施策を続けると、採用された候補者が、バリューにフィットする別の候補者を連れてくるプラスの連鎖が生まれる。
・各フェーズに合わせた社員に対するアプローチ
エンプロイージャーニーと呼ばれ、採用前から入社後活躍するまでのオンボーディングプロセスに沿った形で、社員にアプローチする。入社1ヶ月後には社員紹介を依頼するメールの送付、入社1年後には転職クチコミサイトへの入力依頼を行う。「会社にとって採用が重要だ」と自部門のマネージャーやリクルーターから何度も聞かされているので、「自分も協力しなくては」という気持ちが醸成される。
・報酬
紹介してくれた社員へ旅行券をプレゼント
参考:約半数をリファラルで採用するSalesforceの成果を支える「コアバリュー採用」とは
参考:リファラル採用の成功事例12選|メルカリ、富士通、セールスフォースなど
freee株式会社
クラウド会計ソフトを展開するfreee株式会社。Google出身の佐々木大輔氏らが2012年に設立しました。同社は、創業当初からリファラル採用を推進しており、会社が拡大した今もなお、施策を続けています。
リファラル採用における施策・ポイントは以下の通りです。
・友達を呼ぶハードルを下げる
入社時に友人をオフィスに招いていいとしっかり伝えている。また、「お弁当制度」を作り、オフィスでとる食事の費用を援助している。そうすることで、友人と食事をしているときにfreeeの社員に自然と囲まれる形になり、freeeをよく知ってもらう機会を作っている。
・求める人物像を具体的に伝える
条件や必須経験を細かく伝えることで、どのような人材を紹介すれば良いかわかるようにしている。
・採用の重要性と必要性を伝える
月1回程度の頻度で友人紹介のお願いをしている。採用担当者が社内を歩き、誰か紹介できる人はいないかなどと社員をどんどん巻き込んで話をしている。
・協力者に感謝の気持ちを伝える
毎年開催される周年パーティーでリファラル採用の協力者へ「リクルーティングアワード」を表彰し、感謝の気持ちを伝えている。
・報酬
限定のTシャツ。freeeでは毎年組織作りや環境づくりをしているチームがTシャツを作るほどTシャツ作りの文化には思い入れがある。
参考:freeeのリファラル3カ条|社内で協力体制をつくる秘訣とは|HR NOTE
参考:リファラル採用の紹介プロセスを可視化し、簡易化することによって中途採用での成果を最大化|株式会社リフカム
企業に合う人材の採用なら「PRO SCOUT」
リファラル採用のように、自社にフィットする人材を採用したい場合はぜひPRO SCOUTをご利用ください。
700社以上の導入実績を持つPRO SCOUTでは、ダイレクトリクルーティングを用いてのご支援を中心に個社ごとにマッチした人材の採用代行を行っています。
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リファラル採用の報酬についてのまとめ
本記事では、リファラル採用のメリット・デメリット、報酬設定時の注意点を紹介しました。
リファラル採用では、自社にマッチした人材や転職潜在層にアプローチすることができます。また、リファラル採用活動を行うことで社員のエンゲージメント向上を図ることもできるのです。
リファラル採用を行う際は、報酬設定に注意が必要です。
適切な報酬額を設定し、リファラル採用を促進することで、優秀な人材を獲得しましょう。
投稿者プロフィール
- SIerにて中途エンジニア採用を経験。また、リファラル採用支援サービスを提供する企業での従事経験もあり、リファラル採用領域の知見を持つ。
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