採用面接で聞いてはいけないことは?どんな質問をすれば良い?

人事

採用面接では聞いてはいけない事項があることをご存知でしょうか?

日本では、「公正な採用選考」を行うことが求められています。国籍や人種、出身地、家族など候補者の適性・能力とは関係のないことで採用可否を判断してはいけません。

今回は、採用面接で聞いてはいけない質問項目や、採用面接でトラブルを避けるために企業が取るべき対策を解説します

採用担当者のみなさんは、トラブル回避のためにもぜひ最後まで読んでくださいね。

採用面接で聞いてはいけないことがある理由

そもそも、採用で聞いてはいけない質問があるのはなぜでしょうか?厚生労働省では「公正な採用選考の基本」※として以下の事項を掲げています。

応募者に広く門戸を開くこと
応募者の適性・能力に基づいた採用基準とすること

企業は、求人条件に合致するすべての候補者が応募できるようにし、応募者の適性・能力とは関係のない事項で採否を決定してはいけません。

※参考:公正な採用選考の基本|厚生労働省

ただ、「面接で聞いてはいけないこと」はケースバイケースです。

面接で収集してはいけない個人情報とされているのは、「業務の目的の達成に必要な範囲」を超えたものであり、単純に次の項目で解説する「宗教」や「前科や犯罪歴」といった項目を聞いてはいけないわけではありません

例えば、就業先が教会の場合は「宗教」の確認は必要でしょうし、タクシーの運転手であれば飲酒運転等に関する「前科や犯罪歴」の確認は必要と考えられます。

一方、下記差別は禁止されているので、聞くことで差別が助長されたり疑われたりするようなものは、あらかじめ聞かないようにルール決めしておくと良いでしょう。

・性別による差別の禁止
・性別による間接差別(身長、体調差別、体力に基準を設定すること等)は、原則禁止(合理的な理由があればOK)
・年齢制限の原則禁止(やむを得ない理由があればOK)

採用面接で聞いてはいけないこと

企業は採用面接で、性別や出身地・居住地域、家族など、本人の適性・能力に関係のない要素で採用可否を判断してはいけません。

そのため、それに該当する質問は極力避けましょう。具体的にどのようなことを聞いてはいけないのか、解説していきます。

宗教に関する質問

日本国憲法第20条では、信教の自由が保障されています。候補者の信仰している宗教で採用可否を判断することは、憲法に反するのです。

信仰する宗教によって候補者の適性や能力は左右されません。そのため、宗教に関する質問は採用活動において基本的には必要のないものです。無意味に聞かないようにしましょう。

宗教に関する質問の例

・何の宗教を信仰していますか?それはなぜですか?
・あなたは〇〇教についてどう思いますか?
・神や仏はいると思いますか? など

支持政党に関する質問

支持政党に関しても宗教と同じく、個人の自由が尊重されるべき事項です。支持政党によって候補者の適性や能力は変わりません。

2016年に選挙権年齢が「満18歳以上」に引き下げられたため、学生のアルバイトなどの面接でもホットトピックとして話題が挙がりがちです。

しかし、たとえ「この前の選挙に行った?」などの質問でも、相手によっては「支持政党を聞こうとしていたんだ」と受け止められる可能性があるため、質問しないほうが安全でしょう。

支持政党に関する質問の例

・支持する政党はどこですか?
・この前の選挙には行きましたか?誰に投票しましたか?
・あなたの親御さんはどの政党を支持していますか? など

恋愛・結婚に関する質問

恋愛、結婚に関しての質問をすることは、2つのリスクを生みます。一つ目は、「男女雇用機会均等法」への抵触。もう一つは、セクシャルハラスメントです

後ほど詳しく説明しますが、男女雇用機会均等法では、性別に関係なく均等な雇用機会を得られ、意欲と能力に応じた均等な待遇を受けられることを目的としています。

「結婚(出産)をしたら辞めると答えれば採用しない」などという意図が垣間見え、「男女差別だ」と捉えられる可能性があります。

また、「場を和ませる質問」として恋人の有無や好きなタイプなど、恋愛に関することを聞いたとしても、「セクハラだ」と思われる可能性があります。

恋愛・結婚に関する質問の例

・近々結婚(出産)予定はありますか?
・結婚(出産)したら会社を辞めますか?
・恋人はいますか?
・好きなタイプを教えてください など

国籍や人種、出身地に関する質問

国籍や人種、出身地に関する質問も、「差別だ」と捉えかねられないのでしないようにしましょう。

国籍・人種については、特定の国籍や人種を理由に不採用にすることは職業安定法で禁じられています。国籍の確認は、多くの会社が提出を求める住民票記載事項証明や雇用保険等の手続き時に自然と行うこととなります。また、在留資格の確認の確認も必要です。しかし、これはあくまでも「採用後」かつ手続きに必要であるなどの明確な理由があります。安易に採用面接段階で聞いてはいけません。

また、差別が発生しやすいのは国籍だけにとどまりません。日本には昔から「部落差別」と呼ばれる、出身や住んでいる地域による差別が存在します。その歴史は古く、江戸時代までさかのぼります。江戸時代には身分制度が存在し、その中でも「えた」「ひにん」などと呼ばれる人々への差別はひどかったのです。住む場所や職業が決められ、結婚、服装、時には食べるものさえも規制されていました。1871(明治4)年の太政官布告(いわゆる「解放令」)によってこの身分制度は廃止されましたが、部落差別は続きました。同和地区や被差別部落などと呼ばれる地域の出身であることや、そこに住んでいることだけを理由に、結婚や就職などに差別や不利益を受けてきたのです。

今でも部落差別は完全には解消されていません。逆に、ネットの普及によって差別地区が特定され拡散されるなど、新たな問題も生じてきています。

このようなリスクがあることを知らず、安易に質問をすることは絶対にしてはいけません。

また、エントリーシートなどに本籍地や帰省先を記入させることも、それを理由に採用されなかったのではないかと捉えられる可能性があるため、そのような欄は設けないようにしましょう。

国籍や人種、出身地に関する質問の例

・あなたの国籍はどこですか?
・あなたの人種は何ですか?
・あなたの出身地はどこですか?
・あなたの居住地はどこですか?
・あなたの家族の中に〇〇出身の人はいますか? など

参考:あなたの会社は大丈夫?人権に配慮した公正な採用選考できているか、チェックしてみましょう|厚生労働省
部落差別(同和問題)を正しく理解しましょう|名古屋市

思想や信条に関する質問

思想や信条は、宗教などと同じように、本来個人の自由が尊重されるべき事項で、配慮すべきです。

思想の自由は日本国憲法第19条で保障されています。そのため、採用選考に持ち込むと基本的人権を侵害する可能性があるのです。

また、候補者の思想や信条を聞くことはプライバシーの侵害にもつながりかねませんので、このような質問は控えましょう。

思想や信条に関する質問の例

・自分の生き方についてどのように思いますか?
・ハラスメントについての持論を教えてください
・尊敬する人は誰ですか?
・今の日本についてどう思いますか? など

健康状態や病歴に関する質問

健康状態や病歴に関する質問にも、注意を払う必要があります。HIVやB型肝炎、C型肝炎などは職場で感染するリスクは非常に少ないです。また、色覚異常などの遺伝性障害については、就業上特別に配慮すべき事項がある場合のみ質問するようにしましょう。感染リスクがほぼないにも関わらず、このような質問をすることは公正な採用選考を行っているとは言えず、プライバシーの侵害だと訴えられるリスクがあるのです。

ただし、企業は候補者のすべての健康状態、病歴を把握してはいけないわけではありません。候補者が、「入社してから業務に耐えうる健康を有しているかを見極める目的」であれば質問をしても構わないのです。

具体的には、一般的な健康診断で取得される、既往歴も含む健康状態の範囲内で取得しましょう。

下記は、労働安全衛生規則43条に記載のある「雇入時の健康診断」項目の一部抜粋です。下記項目に関することであれば、聞いても問題はないでしょう。

・既往歴及び業務歴の調査
・自覚症状及び他覚症状の有無の検査
・身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
・胸部エックス線検査
・血圧の測定
・貧血検査
・肝機能検査
・血中脂質検査
・血糖検査
・尿検査
・心電図検査

また、近年のストレス社会で精神疾患者が増加している関係で、候補者が精神疾患を患っていないか気になる企業も多いのではないでしょうか?

「入社してから業務に耐えうる健康を有しているかを見極める目的」であれば精神疾患についての質問を行っても構いません。しかし、非常にセンシティブかつ個人的な情報のため、かなり慎重に取り扱うべきであり、細心の注意を払う必要があります。

質問を行う際には必ず「業務に耐えうるか判断するための質問だ」と前置きします。また、ストレートに聞くのではなく、下記のように質問をすると良いでしょう。

・休職したことがありますか?(ある場合には休職の理由も併せて聞く)
・仕事のストレスの解消法は何ですか?
・前職の退職理由を教えてください。 など

適性検査などでストレス耐性を測れるものがありますので、活用してみても良いでしょう。

健康診断項目や病歴、精神疾患有無などは個人情報保護上の「要配慮個人情報」に該当します。そのため、取得の前には本人の同意が必要となります。(個人情報保護法20条2項)しかし、必ずしも候補者別の同意書が必要なわけではありません。採用時に健康情報等の取得に関して候補者に知らせている場合は、候補者が健康情報を提出したり答えたりしたことをもって同意したとみなされます。

しかし、同意したことを明確にしエビデンスとして残しておくためには、個々人に同意書を書いてもらうべきでしょう。同意書を作成する際のポイントは、利用目的を明示すること、健康情報について任意の回答を求める形で同意を取得することです。

ルールを守り、取得が必要な健康情報には十分に配慮したうえで、質問を行いましょう。不安な場合は弁護士や社労士などに相談することをおすすめします。

労働組合への加入状況に関する質問

労働組合への加入状況について質問することは、個人の社会的活動によって採用可否を判断されていると捉えられる可能性があります。

個人の社会的活動は基本的に自由であり、制限されるべきものではありません。

労働組合への加入状況に関する質問の例

・過去に労働組合に加入していたことはありますか?
・弊社に入社した場合、労働組合に加入しますか?
・労働組合についてどう思いますか? など

前科や犯罪歴に関する質問

前科や犯罪歴を聞くことは、プライバシーの侵害や差別にあたる可能性が高いです。

ただし、業務に関わる場合は例外的に聞いてよい場合があります。例えば、バスやタクシーの運転手などを採用する場合、免許停止処分を受けていれば業務に就かせることはできません。また、交通違反を複数回重ねている場合は、安全に業務を遂行できないと判断できます。このような場合は、免許停止処分を受けていないか、交通違反を繰り返していないかなどを聞くことは重要です。

前科や犯罪歴を聞く場合は、あくまでも業務に関わる項目のみ聞くようにしましょう

経済状況や財産に関する質問

経済状況や財産に関する質問は、本人の努力ではどうしようもできない事項であり、候補者の適性や能力を測る材料にはなりません。プライバシーの侵害にあたる恐れがあります。

また、先述した平等な教育や就職の機会を与えられなかった部落差別による排除にもつながる恐れもあります。

経済状況や財産に関する質問の例

・あなたの家は持ち家ですか?借家ですか?
・あなたはどの程度の土地を持っていますか?
・貯金額を教えてください など

家族に関する質問

家族に関する質問も、本人の適性や能力を判断する材料とはならず、選考において関係のない質問です。

ハローワークが行った調査によると、「本人の適性・能力以外の事項を把握された」と指摘があったもののうち、「家族に関すること」の質問が一番多くの割合を占めています

家庭環境で候補者の人柄を判断したり、親の職業で採用可否を判断することは、差別につながるのです。とくに家柄を重視することは、先ほどから述べている部落差別による排除につながります。

家族に関する質問の例

・あなたのお父さんはどこの会社に勤めていて、役職は何ですか?
・あなたの家族全員の職業を教えてください
・あなたの学費は誰が出しましたか?
・あなたの家族の世帯収入を教えてください
・お父さん(お母さん)がいないようですが、なぜですか? など

参考:公正採用選考特設サイト「求職者のみなさんへ」|厚生労働省

採用面接で聞いてはいけないことを聞いてしまった場合のリスク

採用面接で聞いてはいけないことを聞いてしまった場合は、法律違反や訴訟に発展する可能性など、さまざまなリスクがあります。それぞれ解説していきます。

法律違反の可能性

一つ目のリスクとして、法律違反の可能性があることが挙げられます。

職業安定法第五条の五では、採用活動において必要な範囲内を超える個人情報を応募者の同意なく収集してはならないと定められています。

候補者が「必要な範囲を超える個人情報について聞かれた」と不快に思い通報した場合、厚生労働大臣は該当企業に改善命令を通告。それでも改善されない場合、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑」を課されるのです。

また、「男女雇用機会均等法」にも違反する恐れがあります。「恋愛・結婚に関する質問」で紹介したような結婚や出産などの質問を行い、不採用とした結果「性別によって雇用の機会を平等に与えられなかった」と候補者が感じる可能性が高いでしょう。そのような場合、罰則を受ける可能性があるのです。

男女雇用機会均等法に違反すると、厚生労働大臣または都道府県労働局長から報告を求められたり、助言や指導、勧告を受けたりします。その勧告にも従わない場合、企業名が公表され、20万円以下の過料が課されます。

訴訟に発展する可能性

前節で述べたように、聞いてはいけない質問をすることは法律違反の可能性があります。そのため、候補者が法律違反だとして企業を通報するだけにとどまらず、訴訟に発展する可能性もあるのです。

法律違反に対しての訴訟だけでなく、名誉毀損罪や侮辱罪で訴えられる可能性も。

訴訟に発展した場合、企業は多大な時間とコストをかけ、裁判に臨まなくてはなりません。また、示談に持ち込んだとしても多大なコストがかかるでしょう。

企業の評判低下

企業が訴訟を起こされたり、候補者がネットに悪評を書き込んだりすると、評判の低下につながります。

評判の低下は求人への応募が少なくなるだけでなく、取引先の減少や不買運動などにより企業の存続危機にもつながってしまうのです。

応募者の減少

たとえ厚生労働大臣から勧告されたり、候補者から訴訟を起こされたりしなくとも、企業の評判の低下を招くことがあります。

それは、SNSやインターネットの口コミサイトなどで候補者が「選考に関係のない質問をされ、不快な思いをした」と書き込むことで起こります

ネットやSNSが当たり前となった現代では、候補者にとって企業の口コミを調べることはもはや当然のことです。

WEBリスクコンサルタント事業を展開する株式会社エフェクチュアルが行った調査※によると、就職・転職時に企業情報を調べると答えた人のうち、76.7%もの人が「口コミサイト」で調べると答えたそう。

聞いてはいけない質問をすることで口コミサイトにマイナスの印象を抱かせる情報を載せられ、応募者の減少につながります。

結果的に、必要な人材が枯渇し、企業活動の存続にまで影響する可能性もあるでしょう。

求職者が就職活動時に信頼する情報源は?オンライン上の企業情報に関する信頼性について、エフェクチュアルとグローバルウェイが合同調査!|株式会社エフェクチュアル

社内での信用失墜

聞いてはいけない質問をすることは、面接官の社内での信用失墜につながります。

不適切な質問をした話が社内で広がることで、誰もその面接官に仕事を依頼しなくなったり、降格したりすることもあり得るでしょう。

採用面接で聞くべきこと

ここまで採用面接で聞いてはいけない事項を紹介してきました。

しかし、そもそも企業には「採用の自由」が担保されています。採用の自由とは、人を雇用する企業、つまり「使用者側」に、雇用契約を結ぶときに認められる契約の自由のことを指します。採用の自由の中には「調査の自由」があり、採用時の考慮要素となる事情については自由に調査できることとなっているのです。

本章では、採用の自由を行使するため、企業が採用面接で聞くべき事項を紹介します。

職務経験やスキルに関する質問

職務経験やスキルに関する質問は、自社の業務を遂行できるかどうかの重要な判断基準となります。

履歴書や職務経歴書の記載内容をもとに、どのような仕事をしてきたのか、その内容や規模、培ったスキルなどを深堀りして聞くと良いでしょう。

職務経験やスキルに関する質問の例

・あなたが当社に貢献できると思うスキルは何ですか?また、なぜそう思いますか?
・今まで苦労した業務経験と、それを乗り越えた方法を教えてください
・大規模プロジェクトに参加したとありますが、どの程度の規模で難易度はどれくらいでしたか?その中であなたの役割は何でしたか? など

志望動機に関する質問

早期離職やミスマッチを防ぐためには、志望動機を聞くことが重要です。多くの候補者は、複数社に応募しており、自社が第一志望とは限りません。

自社に対する思い入れがどのくらいあるのか、また、自社を理解しているかどうかを見極めることがポイントです。

志望動機に関する質問の例

・当社のどこに魅力を感じてくれていますか?
・当社にどのような印象を持っていますか?
・転職理由である〇〇は、当社で解消または実現できそうですか?なぜそう思われますか?
・業界内での当社の強みは何だと思いますか? など

入社後の目標やビジョンに関する質問

入社後の目標やビジョンを明確に持っていなければ、早期離職や貢献度が低くなる可能性があります。企業は従業員一人ひとりの力が合わさり成り立っています。

従業員一人ひとりの目標や成長意欲がなければ、企業の目標は達成できず、成長もできません。

入社後の目標やビジョンに関する質問の例/span>

・入社後はどのようなキャリアを築きたいですか?
・当社に入社したら何を実現したいですか?
・具体的にどのような仕事を行いたいですか?それは当社で叶えられそうですか? など

チームワークやコミュニケーションに関する質問

企業で組織の一員として働くためには、チームワークやコミュニケーション能力が必要です。チームの輪を乱せば成果は出にくくなり、コミュニケーションがうまく取れないと仕事が滞る可能性があるからです。

チームワークやコミュニケーションに関する質問の例

・今までチームや組織で活躍した経験があれば教えてください
・チームワークを維持するためには何が大事だと思いますか?
・チームワークやコミュニケーションをとるうえで大切にしていることは何ですか? など/span>

問題解決能力に関する質問

問題解決能力を測るための質問は、困難な業務や予想しなかった事態に対応するために必要な能力です。

問題解決能力に関する質問の例

・困難な場面に直面した具体的な経験と乗り越えた方法を教えてください
・もし今○○に関するトラブル(システムトラブルや顧客からのクレームなど)が起きたらあなたはどのような対応をしますか? など

関連記事:新卒の面接で採用担当者が使える質問集や評価ポイントを紹介

質問以外で面接官がしてはいけないこと

質問以外にも、面接官にはしてはいけないことがあります。それぞれ紹介していき
ます。

不適切な態度や言動

不適切な態度や言動は、候補者に不快感や恐怖を与えます。

例えば、あくびや頬杖をついたり、面接中にもかかわらず携帯電話をいじったりしていると、候補者からは「この人は私の話に興味がないんだ…」と捉えられます。

また、「あなたはこの会社を受ける資格がない」「採用してもやっていけないと思う」などと強い言葉をかけると、候補者は恐怖を感じ、パワハラだと感じる可能性もあるのです。

このような不適切な態度や言動は、圧迫面接とも呼ばれます。候補者のストレス耐性や問題解決能力を測るために、わざとひどい態度や言葉をかけるものです。しかし、聞いてはいけない質問をした際と同様、会社や個人の信用を失墜させ、評判の低下は避けられないでしょう。また、パワハラなどと訴えられる可能性もあります。候補者が企業を選ぶ現代では、圧迫面接は時代遅れです

候補者がどう受け止めるかを考え、お互い気持ちよく面接ができるようにしましょう。

候補者の個人情報の無断開示

候補者の個人情報を無断で開示することも、決して行ってはいけない行動です。

採用面接で取り扱う個人情報は、とくに配慮が必要とされる「要配慮個人情報」とされており、採用活動目的以外で使用したり、本人の許可なく第三者に開示をしたりしてはいけません

不正な利益を得る目的をもって個人情報を漏えいした場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課されます。

誤って個人情報を開示してしまった場合には、個人情報保護委員会と本人への報告が義務化されているので、必ず行いましょう。そのうえで、被害拡大の防止、事実関係の調査および原因の究明、再発防止策の検討・実施など、適切な措置をとることが重要です。

基準の一貫性や公平性の欠如

基準の一貫性や公平性の欠如は、採用において決して行ってはいけないことの一つです。

基準の一貫性がないと、ミスマッチな人材を採用してしまうほか、なかなか内定者が出ないなどの問題が発生します。
また、公平性に欠けると、「差別」と捉えられ、訴訟のリスクや評判低下などの影響があります。

適切な採用基準を設け、それに沿って採用活動を行いましょう。

面接時間の大幅な遅延や変更

面接時間の大幅な遅延や変更は、候補者に不信感や嫌悪感を抱かせます。

候補者は、わざわざ面接を受ける時間を作り、そこに向けて企業研究などの準備をしています。採用難の時代の中でせっかく自社を選んでくれたのに、面接時間に大幅に遅れたり、急に変更をすることは大変失礼です

結果的に、不信感や嫌悪感を抱かれ、改めて設定した面接に来なかったり、内定辞退につながったりしてしまいます。

さらに、口コミサイトなどに投稿され、応募者が減ってしまう可能性もあります。約束はきちんと守ることは大前提ですが、やむを得ず面接の予定を変えなければいけない場合は速やかに連絡をし、きちんと謝罪しましょう。

採用条件や業務内容について虚偽の説明

採用条件や業務内容について虚偽の説明をすることも、採用面接で行ってはいけません。

虚偽の説明について、職業安定法では厚生労働大臣からの指導がなされるとともに、この指導に従わなかった場合はその旨を世間に公開すると定められています。(職業安定法第 48 条の2、職業安定法第 48 条の3第3項

さらに、候補者が入社し、採用面接で行われた採用条件や業務内容が実際と異なる場合、訴訟を起こされるリスクもあります

このようなリスクがある中で、人材不足で人が欲しいがゆえに嘘をつくのは賢明とは言えません。嘘をつくことで会社の信頼性は下がり、さらに応募が減ってしまうのは目に見えています。

候補者のニーズを今一度調査し、採用条件や業務内容に反映しましょう。

採用面接でのトラブルを避けるための取り組み

ここからは、採用面接でトラブルを避けるための取り組みについてそれぞれ解説していきます。

面接官のトレーニング

採用面接でトラブルを回避するためには、面接官のトレーニングが必須です。

企業が聞いてはいけない質問を把握していても、面接を実施する面接官に共有がなされてなければ意味がありません。

次に紹介する面接ガイドラインを作成し、面接官に共有しておきましょう。共有するだけでなく、面接官への教育研修を行うとルールの定着率が上がり効果が出やすいです。社内に研修を行うノウハウがない場合は、大手人材会社などの行う研修に参加してもらうのも良いでしょう。

面接官のトレーニングはトラブルを防ぐだけでなく、「面接官の人柄が良かったので、入社を決めた」と候補者への入社の動機付けにもなります。

採用難の中で生き残るためにも、面接官のトレーニングは企業に求められるものの一つと言えるでしょう。

面接ガイドラインの作成

面接ガイドラインとは、面接にあたってのルールを記載したものです。候補者に対し一貫した評価基準を維持するため、「採用を公正かつ円滑に行うための指針」と位置づけられます。

面接ガイドラインには下記の事項を盛り込みましょう。

・面接官の役割
面接官に自身の役割を意識してもらうために記載。
例:「自社の魅力を候補者に伝えること」「会社の顔として候補者の入社意向を高めること」など

・面接官に求められる行動・心構え
候補者から好印象を持たれる行動や心構えを記載。
例:「礼儀正しく穏やかな態度で候補者に接する」「適切な相槌をうち話しやすい雰囲気を作る」「企業側も候補者に吟味されている意識を持つ」など

・面接のステップ
選考がスムーズに進行するよう、面接のステップを記載。「アイスブレイク」や「質問タイム」など、段階に応じた行動や注意点もあわせて記載すると良い。

・選考基準
見るべき評価項目を記載。評価しやすいよう、一覧にし「◎」「○」「△」「×」などをつけられるようなフォーマットを作成しておくと便利。
評価項目例:コミュニケーション能力、専門知識、論理的思考、実践力、学習欲 など

・質問例
面接に慣れていない面接官向けに、質問例を記載。面接がスムーズに進み、見るべき評価項目も測ることができる。面接のステップごとに記載しておくと見やすい。
例:アイスブレイクで使える質問10選 など

・聞いてはいけない質問、とってはいけない行動
本記事で紹介した、聞いてはいけない質問やとってはいけない行動などを記載。法律に抵触する恐れや訴訟リスクなど、なぜそのような行動・質問をしてはいけないのかの理由も明記しておく。

最初から完璧な面接ガイドラインでなくても構いません。面接を重ねていくとともに、ガイドラインもブラッシュアップしていくことが重要です。適切なガイドラインを作成し、最大限活用しましょう。

関連記事:面接官のやり方とは|聞くべき質問や進行のシナリオを解説

チェックリストの導入

チェックリストも採用面接でトラブルを回避するための一手です。チェックリストには、評価項目や評価基準とともにその内容に合った質問を記載しておきます。

質問を決めておくことで余計な質問をするリスクを軽減します。また、どの面接官が担当することになっても同じ質問を行うことで、面接の質が画一的になり、評価がしやすくなるのもメリットです。

ロールプレイやシミュレーションの実施

面接官を対象とし、ロールプレイやシミュレーションを実施することでトラブルを避ける方法もあります

指導者があえて間違った質問をすることで、参加者からの指摘を促すのも良いでしょう。面接官に実際に擬似面接を行ってもらうことで、文章でルールを読むだけでは気づけなかった疑問や実感が湧いてくるはずです。

定期的な法令遵守のチェック

これまで説明してきた通り、採用面接には「個人情報保護法」や「男女雇用機会均等法」、「職業安定法」などの法律が関わってきます。

そのため、定期的に法令遵守のチェックを行いましょう。わかりやすいよう、チェックシートを作成し面接官に答えてもらうのが簡単な方法です。

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まとめ

今回は、採用面接で聞いてはいけない質問や、そのような質問をするリスク、トラブルを避けるための取り組みを紹介しました。

採用における面接では、採用の公平性を保つことが求められます。差別や侮辱、ハラスメントにつながる質問をしてはいけません。

この原則に背くことで、法律違反や訴訟などのリスクがあります。

企業はこのようなリスクを避けるため、面接官のトレーニングやガイドラインの作成などの対策が求められます。

公平な面接を行うことはもちろん、候補者への動機付けとなるような面接を行えるようになると、採用難を勝ち抜く一助となるでしょう。

ぜひこの機会に、貴社も今一度自社の面接を見直してみてはいかがでしょうか?

投稿者プロフィール

大久保 さやか
大久保 さやか
SIerにて中途エンジニア採用を経験。また、リファラル採用支援サービスを提供する企業での従事経験もあり、リファラル採用領域の知見を持つ。