【企業向け】採用と内定の違いとは?法的な違いを理解してトラブルを回避

「採用と内定って同じ意味じゃないの?」「具体的に何が違うの?」と思われている採用担当者の方も多いのではないでしょうか?

「採用」と「内定」には、明確な違いがあります。違いを理解していないと、法的トラブルに発展する可能性も。

本記事では、「採用」と「内定」の意味の違いや、法的トラブルを避けるために知っておきたい事項を解説します

採用担当者の方にぜひ知っておいていただきたい事項ですので、最後までご覧くださいね。

採用と内定の違い

「採用」と「内定」の2つの言葉には、違う意味が存在します。それぞれ解説していきます。

採用とは

大前提として、本記事で扱う「採用」とは、「人材採用」のことを指します。本来「採用」という言葉には、「適当であると思われる人物・意見・方法などを、とり上げて用いること」※といった意味があります。※引用:デジタル大辞泉

「内定」と混同されがちな「採用」ですが、採用は「候補者に対し企業が合格の旨を伝えること」を指すことが多いです。

ただ、「採用」という言葉については法律上の定めがなく、裁判例での言及もないので、正確な意味は決まっていないのが実情です。

人材を探して雇用する(労働契約を締結する)までの一連の作業のことを「採用」と呼ぶ場合もありますこの際は「採用決定」と呼ばれることもあります。

内定とは

内定とは、簡単に言うと企業と内定者が「企業に入社する」と合意することを言います

内定によって候補者の入社が決まれば、採用目標人数に達している場合、企業は採用活動を終了できます。また、入社に向けた人材配置や手続きを計画的に進めることもできます。

一方候補者にとっても、内定することで求職活動を終え、入社に向けた転居など準備を進めることができます。たとえ入社日までに期間が空いたとしても、「入社する企業は決まっており、雇用が保証されている」と安心感を得ることができ、心理的にも負担が軽減されるのです。

内定の法的性質は一義的に論断できない?

「内定」や「内々定」も法律上の定めはありませんが、裁判例での言及は出てきます。

「内定」は、一般的には「始期付・解約権留保付の労働契約」と解されてはいるものの、法律上の用語ではありません。

正確には、最高裁は「企業が大学の新規卒業者を採用するについて、早期に採用試験を実施して採用を内定する、いわゆる採用内定の制度は、従来わが国において広く行われているところであるが、その実態は多様であるため、採用内定の法的性質について一義的に論断することは困難というべき」

「具体的事案につき、採用内定の法的性質を判断するにあたっては、当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検討する必要がある」と言っています。

判例の事案においては、内定の他に労働契約締結のための意思表示が予定されていなかったことや求職者から誓約書の提出がされていたこと等を踏まえて、「始期付・解約権留保付の労働契約」が成立したと結論付けています。

ゆえに、全ての「内定」が「始期付・解約権留保付の労働契約」になるわけではないことに留意が必要です。

 

採用通知書と内定通知書の違い

本章では、「採用通知書」と「内定通知書」の違いについて解説していきます。

採用通知書とは

採用通知書とは、企業が候補者の採用を決定した際に送付する書類です。ポイントは、候補者の入社意思がなくとも送付する点。

採用通知書は企業が必ず発行しなければならない法的な決まりはありません。

採用通知書は、採用決定から入社までの期間が短い中途採用では省略される場合が多いです。

内定通知書とは

内定通知書とは、企業が出した採用通知に対し候補者の入社意思の合意が取れ、入社が決定したことを通知する書類です。ポイントは、入社に対し双方が合意している点。

内定通知書も、発行しなければならない法的決まりはありません。しかし、一度発行すると、安易に内定取り消しができないなどの法的拘束力が発生するので注意が必要です。

採用通知書と内定通知書は、どちらも発行する企業もあれば、片方しか発行しない企業、さらにはどちらも発行しない企業もあります。また、「採用内定通知書」とひとまとめにして発行する企業もありますので、自社にとって何が適切か考えてみましょう。

採用・内定通知書の例文

ここからは、採用・内定通知書の例文を紹介します。コピペOKですので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

採用通知書の例文

採用通知書は、企業が候補者の採用を決定したことを知らせる書面です。入社の意思を確認するため、入社承諾書と返送用封筒を同封しましょう。また、不明点がある場合は連絡をもらえるよう、連絡先を明記しておくことも重要です。

〇〇年〇〇月〇〇日

▲▲ ▲▲様

株式会社 〇〇〇〇

代表取締役 ■■■ ■■

採用通知書

  拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 

  このたびは、弊社求人にご応募いただきまして、誠にありがとうございました。 

  また、先日は最終面接にご足労いただきましたこと、重ねて御礼申し上げます。

  さて、社内での厳正なる選考の結果、貴殿を弊社社員として採用することと決定

  いたしましたので、ご通知申し上げます。

  つきましては、同封の書類にご記入の上、期限までにご返送くださいますよう

  お願いいたします。

敬具  

  ■同封書類

   入社承諾書

   返送用封筒

  ■提出期日

   〇年〇月〇日

  ご不明な点等がございましたら、下記までお気軽にお問い合わせください。

  ▲▲ ▲▲様の弊社へのご入社、ご活躍を心よりお祈りしております。

  今後とも引き続きよろしくお願いいたします。

  株式会社〇〇〇〇

  採用担当 ■■ ■■■

  TEL:XXX-XXXX-XXXX

  メールアドレス:XXXX@XXXXX.co.jp

内定通知書の例文

内定通知書は、企業・候補者双方が入社への合意を取れた際に送付する書類です。内定通知書を発行した後は、安易に内定の取り消しができないので注意しましょう。
同封書類として、内定承諾書および労働条件通知書、返送用封筒を入れるのが一般的です。また、入社までのスケジュールを記載することで、候補者は安心感が得られるので記載すると良いでしょう。

〇〇年〇〇月〇〇日

▲▲ ▲▲様

株式会社 〇〇〇〇

代表取締役 ■■■ ■■

採用通知書

  拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 

  このたびは、弊社求人にご応募いただきまして、誠にありがとうございました。 

  また、先日は最終面接にご足労いただきましたこと、重ねて御礼申し上げます。

  さて、社内での厳正なる選考の結果、▲▲様の内定を決定いたしました。

  つきましては、同封の書類にご記入の上、期限までにご返送くださいますよう

  お願いいたします。

敬具 

  ■同封書類

   内定承諾書

   労働条件通知書

   返送用封筒

  ■提出期日

   〇年〇月〇日

  なお、今後のスケジュールにつきましては、下記を予定しております。

  

  〇月〇日 内定式

  〇月〇日 インターンシップ(〇日間)

  〇月〇日 現役社員との懇親会

  〇月〇日 入社式

  ご不明な点等がございましたら、下記までお気軽にお問い合わせください。

  ▲▲ ▲▲様のご入社を心よりお待ちしております。

  今後とも引き続きよろしくお願いいたします。

  株式会社〇〇〇〇

  採用担当 ■■ ■■■

  TEL:XXX-XXXX-XXXX

  メールアドレス:XXXX@XXXXX.co.jp

 

採用・内定通知メールの例文

採用・内定通知はメールで行う企業も増えてきています。ここからは、それぞれの通知について新卒採用、中途採用の場合に分けてメール例文を紹介します。

採用通知メールの例文

採用通知メールは、「企業が採用を決定した」旨を通知するメールです。内定通知メールの前のステップですので、候補者の入社意思を問う内容を盛り込むのを忘れないようにしましょう。

新卒の場合

新卒採用の場合の採用通知メールでは、「この会社に入りたい」と思われるメール文面になるよう心がけましょう。

メールで熱意が伝わり、入社に至る可能性があります。

件名:【株式会社◯◯】選考結果のご連絡

▲▲ ▲▲様(フルネームで記載)

お世話になっております。株式会社◯◯の■■です。

先日はお忙しい中、弊社の面接にお越しいただき誠にありがとうございました。

社内にて慎重に審査いたしました結果、▲▲様の学ばれてきた事項やボランティアなどでのご活躍に感激し、採用することと決定いたしました。

つきましては、ご入社意思の有無を本メールにご返信いただけますと幸いです。

ご入社される意思を確認いたしましたら、内定通知書を送付いたします。

▲▲様のその情熱をぜひ弊社に注いでいただきたく、前向きにご検討いただけますと大変幸甚に存じます。

ご不明点等ございましたら遠慮なくお申し付けください。

どうぞよろしくお願いいたします。

株式会社◯◯

■■ ■■

住所

電話

中途の場合

中途採用での採用通知メールでも、「この企業に入社したい」と思われるメール文面を作成しましょう。

また、中途採用では、今までの経験やスキルを称賛する内容とすると、候補者は今までの努力や経験が認められたと感じ気持ちが高まります。そのような内容を入れるとなお良いでしょう。

件名:【株式会社◯◯】選考結果のご連絡

▲▲ ▲▲様(フルネームで記載)

お世話になっております。株式会社◯◯の■■です。

先日はお忙しい中、弊社の面接にお越しいただき誠にありがとうございました。

社内にて厳正に審査しました結果、▲▲様にはぜひ弊社で活躍いただきたく、採用することと決定いたしました。

つきましては、ご入社の可否を本メールにご返信いただけますと幸いです。

ご入社される意思を確認いたしましたら、内定通知書を送付いたします。

▲▲様の、高い技術とコミュニケーション能力をぜひ弊社で活かしていただきたく、前向きにご検討いただけますと幸いです。

ご不明点等ございましたら遠慮なくお申し付けください。

どうぞよろしくお願いいたします。

株式会社◯◯

■■ ■■

住所

電話

内定通知メールの例文

内定通知メールは、企業・候補者双方の入社への合意が取れている状況で送付するものです。そのエビデンスとして、内定承諾書を返送してもらうようにしましょう。また、今後の予定などを記載すると内定者に安心感を与えることができます。

新卒の場合

新卒採用の内定通知の場合、採用通知メールと同じく評価した点を記載しましょう。それとともに、「自分は期待されている」「入社を心待ちにしてくれている」と内定者のモチベーションアップや維持につながる言葉も添えるとなお良いです。

件名:【株式会社◯◯】選考結果のご連絡

▲▲ ▲▲様(フルネームで記載)

お世話になっております。株式会社◯◯の■■です。

先日はお忙しい中、弊社新卒採用の最終面接にお越しいただき、誠にありがとうございました。

社内にて慎重に検討いたしました結果、▲▲様にはぜひお持ちのポジティブさや学生時代の学びを活かしていただきたく、採用を内定することに決定いたしました。

つきましては、内定承諾書を添付させていただきますので、ご確認、ご署名いただき、ご返信いただけますと幸いです。

返信期限は△月△日とさせていただき、それまでにご連絡がない場合は、辞退のご意向として承りますことをご了承ください。

以降の予定といたしまして、△月△日に内定者研修および現役社員との懇親会を予定しております。

同期のみなさんとの交流や先輩社員との交流を通し、弊社で実際に働くイメージをより膨らませていただければと存じます。

弊社社員一同、▲▲様と共に働けますことを嬉しく思い、ご入社を心より楽しみにしております。

今後とも引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

株式会社◯◯

■■ ■■

住所

電話

中途の場合

中途採用の場合の内定通知メールでも、新卒採用と同様、「自分は期待されている」「入社を心待ちにしてくれている」と内定者のモチベーションアップや維持につながる言葉を添えましょう。

件名:【株式会社◯◯】選考結果のご連絡

▲▲ ▲▲様(フルネームで記載)

お世話になっております。株式会社◯◯の■■です。

先日は最終面接にお越しいただき、ありがとうございました。

厳正なる審査の結果、▲▲様のこれまでのご経歴やスキルを高く評価し、採用の内定を決定いたしました。

つきましては、内定承諾書を添付させていただきますので、ご確認、ご署名いただき、ご返信いただけますと幸いです。

返信期限は△月△日とさせていただき、それまでにご連絡がない場合は、辞退のご意向として承りますことをご了承ください。

ご入社前に一度、会社説明や入社手続きに必要な書類のご記入をお願いしたく存じます。下記にてご来社できる日時はございますでしょうか?

===================================

△月△日 11:00〜12:00

△月△日 16:00〜17:00

△月△日 13:00〜14:00

===================================

いずれもご都合の悪い場合は、遠慮なくお申し付けくださいませ。

社員一同、▲▲様と共に働けますことを心待ちにしております。

まだまだ厳しい暑さが続きますので、体調を崩されませんよう、ご自愛くださいませ。

それでは、ご返信をお待ちしております。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

株式会社◯◯

■■ ■■

住所

電話

採用取り消しと内定取り消しの違い

採用取り消しと内定取り消しは、一般的には同じものとして扱われています。

採用取り消しと内定取り消しは、法的には解雇と同様の扱いとなります。そのため、採用・内定の取り消しが認められるのは、非常に限定的です。

内定者は内定をもらった時点で求職活動を終了させ、入社に向けた準備に取り掛かっていることが多いです。そのため、企業が一方的に内定を取り消す行為は、内定者に不利益を与えることとなります。

不利益を内定者に与えても仕方ないとされるのは、合理的な理由がある場合のみに限られます。合理的な理由がない場合、法律違反となる可能性があるので、注意しましょう。

内定取り消しに関わる知っておきたい法律

前章で述べたように、内定取り消しは内定者に不利益を与える行為であるため、無制限に行って良いものではありません。

また、法律に抵触する可能性もあり、企業にとって内定取り消しを行うことは非常にリスクが高いです。

そのため、内定取り消しに関わる法律は知っておきましょう。内定取り消しに関わる法律は、労働契約法第16条で以下のように定められています。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

引用:労働契約法|e-gov法令検索

つまり、客観的に見て内定取り消しの理由が企業側の都合だけでなく合理的なものでなければいけません。これに加え、社会通念上相当な理由がなければならないのです。

内定取り消しが認められる可能性のあるケース

ここまでの説明で、「内定は絶対に取り消してはいけないの?」と不安に思われる採用担当者の方も多いのではないでしょうか?
決してそのようなことはありません。

ここからは、内定を取り消してもその妥当性が認められる可能性の高いケースを紹介します。いずれも「内定取り消しが認められる可能性がある」ケースですので、いざ内定取り消しを行う場合は、弁護士や社労士に必ず相談しましょう。

卒業できなかった場合

新卒採用に関しては、大学を卒業予定だったにもかかわらず、卒業できなかった場合には内定取り消しを行っても適法である可能性が高いです。

通常労働者は、入社後は職務に専念することが求められます。学業と並行してこの責務を全うすることは通常困難です。そのため、このような場合は内定取り消しを行っても問題ありません。

しかし、定時外にあと少しだけ通えば卒業できる場合や、卒業に必要な単位がごくわずかで業務に支障を与えない場合などは、例外的に内定取り消しが認められないことがあります。

経歴詐称を行った場合

内定者が重大な経歴詐称を行っていることが判明した場合、内定を取り消しても適法である可能性が高いです。

ただし、経歴詐称の重大性の大きさによっては内定取り消しが認められない場合もあるので注意しましょう。

業務や要件に関係のない経歴詐称であれば、内定取り消しまでは認められない場合が多いです。

一方で、学歴詐称や業務上必要な経歴や資格に関する詐称である場合は、内定取り消しが認められる可能性は高いです。

内定後に重大な障害・病気を患った場合

内定後に重大な障害・病気を患った場合は、内定取り消しの原因として認められる可能性があります。

ただし、「就労が困難であること」が大前提です。就労に影響しない場合は、内定取り消しは認められませんので注意しましょう。

ちなみに、過去HIVに罹患しているという理由で内定取り消しを行った企業に対しては、違法という裁判結果が下されています。

HIVに感染している原告が,北海道内において病院(被告病院)を経営する被告の求人に応募し内定を得たものの,
その後被告から内定を取り消されたことをめぐり,不法行為に基づく330万円の損害賠償を求める事案について,
①内定取消しは違法である,
②被告が被告病院の保有していた原告に関する医療情報を目的外利用したことはプライバシー侵害に当たるとして,
不法行為に基づき,165万円の損害賠償請求を認容した事案。

引用:令和元年9月17日 札幌地方裁判所判決

内定後に犯罪行為をした場合

in case of crime

内定後に内定者が犯罪行為をした場合には、内定取り消しが認められる可能性が高いです。

犯罪行為をした従業員がいると噂になれば、企業のイメージや信頼は大きく損なわれます。

内定を出す前の犯罪行為は、事前に伝えられていれば選考の判断材料となります。しかし、内定後の犯罪行為については予想できず考慮できないので、内定取り消しの正当な理由となる可能性が高いです。

実際に判例上では、内定者が現行犯逮捕され起訴猶予処分を受けるほどの違法行為を行ったことが判明し、内定取り消しを行ったケースは適法とされています。

日本電信電話公社が、社員としての採用を内定したのち、その者がD委員会の指導的地位にあつて、
大阪市公安条例等違反の現行犯として逮捕され、起訴猶予処分を受ける程度の違法行為をしたことが判明したとして
留保解約権に基づき採用内定を取り消すことは、
解約権留保の趣旨、目的に照らして社会通念上相当として是認することができ、解約権の行使は有効である。

引用:昭和55年5月30日 最高裁判所判決

内定通知書などに記載した内定取り消し事項に該当した場合

企業が内定を通知する際、内定通知書を発行するのが一般的です。それに対し内定者は内定承諾書や誓約書を提出します。

これらの書類に、内定取り消しにあたる行為などが記載されており、それに該当する場合は、内定取り消しが認められる可能性が高いです。

業務に必要な資格を取得していない場合

企業側が内定者に対し、業務に必要な資格を入社日までに取得するよう指示していることもあります。この指示に従えなかった場合、つまり資格を入社日までに取得できなかった場合は、内定取り消しが認められる可能性があります。

深刻な経営難に陥った場合

内定後に企業が深刻な経営難に陥るなど、「整理解雇」に相当する場合は内定取り消しが認められる可能性があります。

なお、整理解雇には以下の4要件があり、これらを総合的に考慮し判断されます。

・経営上の必要性
人員削減が必要であること
・解雇回避努力
解雇以外の経費削減手段をすでに講じたこと
・被解雇者選定の合理性
解雇の対象者が合理的基準で選ばれていること
・手続きの相当性
対象者や組合に十分説明し、協議したこと

経営難による内定の取り消しも、整理解雇の1つです。経営悪化により人員整理がやむを得ない場合、社内で経費削減の施策を行い、それと並行して内定者には相応の補償を提示して話し合いをするなど、一方的な内定取り消しを回避する努力をしたうえで、それでも合意に至らない場合に内定を取り消すことは認められます。

内定と内々定の違いは?

内々定とは、文字通り内々でのみ決定された事項のことです。内々定の検討、手続きが進んだ先にあるのが正式決定である「内定」です。

内々定と内定には、以下のような違いがあります。

・労働契約成立の有無
・取り消し要件
・辞退手続き

それぞれ順番に解説していきます。

労働契約成立の有無

内々定では、労働契約は成立しません。一方、内定の場合はその時点で労働契約が成立している状態を指します。

内定の法的性質は、始期付解約権留保付労働契約であると考えられています。

ポイントは、「労働契約」とあるように、内定の時点で労働契約が成立している点。

「始期付」とは、就労開始日の条件が定められていることで、「解約権留保付」とは、企業側が内定を取り消す権限を留保していることを意味しています。

これらに対し、内々定は企業が採用の意思を伝えたのみで、候補者側も正式に承諾している状態ではありません。

そのため、内々定の段階では労働契約は成立していないのです。

取り消し要件

「内々定」については実態が多様ですが、言葉だけからしてもその後に「内定」が控えているであろうことは明確なので、「労働契約」成立とは解釈されにくいです。
内々定の取り消しは、まだ労働契約が成立していないため、企業側はいつでも行使することができます。

一方、内定では労働契約が成立しているため、前述したように容易に取り消しはできません。

辞退手続き

辞退手続きについても、内々定段階と内定段階ではルールが異なります。

内々定の段階では、労働契約が成立していない、ただの口約束もしくは候補者が承諾していない状態です。そのため、候補者が辞退することは、「内定不承諾」なのです。

一方、内定辞退では、労働契約が成立しているため、民法に則った手続きが必要になります。正社員などの「無期雇用」の場合、企業に対し内定辞退の旨を2週間前に通知しなければなりません。これは、民法627条1項で定められています。

契約社員などの「有期雇用」の場合は、すでに就労している労働者による雇用契約の解除にはやむを得ない事由が必要とされています(民法628条)。しかし、就労前の内定段階では、緩やかに内定辞退が認められる可能性が高いです。

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まとめ

今回は、採用と内定の違いや、内定取り消しの注意点などを紹介しました。

採用と内定には、双方で入社の合意が取れているか否かの違いがあります。

双方が合意に至った場合、「内定」となります。この内定を取り消すことは、解雇と同じ行為となり、法律が関係してくるのです。安易に内定取り消しを行うと、違法となる可能性がありますので、注意しましょう。

投稿者プロフィール

大久保 さやか
大久保 さやか
SIerにて中途エンジニア採用を経験。また、リファラル採用支援サービスを提供する企業での従事経験もあり、リファラル採用領域の知見を持つ。