ダイレクトリクルーティングのメリット・デメリットとは?副次的効果、採用成功事例も紹介
ダイレクトリクルーティングのメリットは、単なる採用成功だけではありません。世の中であまり言及されていないものも多くあります。
例えば、数値で結果を見られるため「採用の健康診断」になる、外部に頼らず自社で魅力付けから内定出しまで全て行うため「採用のトレーニング」になるといった、副次的なメリットも存在しているのです。
本記事では、「ダイレクトリクルーティングの教科書」の著者が、ダイレクトリクルーティングのメリットを7つ解説するとともに、デメリットや採用成功事例も紹介します。
また、「ダイレクトリクルーティングは費用を抑えた採用ができる」メリットが謳われているケースがありますが、それは以前の話であり、現在は多くの費用がかかることも少なくありません。こういった、最新の採用市場を踏まえながらお伝えします。
目次
ダイレクトリクルーティングとは?
ダイレクトリクルーティングとは、企業が採用したい人材に対して企業側から直接アプローチする採用手法です。
具体的には、BIZREACHなどのスカウトサービスや、LinkedInなどのSNSを利用して、求める人材にメッセージを送り企業から声をかけます。
少子高齢化が進み、労働力不足が課題になる今、求人広告といった応募を待つだけの採用方法では、必要な人材を採用できないケースが増えてきました。
そこで、企業からアプローチする、攻めの採用手法であるダイレクトリクルーティングが主流へとなりつつあります。
ダイレクトリクルーティングの7つのメリット・効果
ダイレクトリクルーティングを導入することによる、7つのメリット・効果を見ていきましょう。
採用要件に合う人材に絞った、効率的な採用活動ができる
ダイレクトリクルーティングは、ターゲットを絞った採用活動ができます。
求人広告や転職フェアなどは、応募者の質を企業側でコントロールできません。
しかし、ダイレクトリクルーティングでは、データベースに登録された候補者のプロフィールを事前に確認し、フィットする人材だけにスカウトを送ることができるため、ターゲット層に絞った効率的な採用活動を行えます。
転職潜在層にも幅広くアプローチできる
ダイレクトリクルーティングは、転職意欲がまだ高くない「転職潜在層」にもアプローチできます。
これまでの採用は、基本的に自己応募者のみとしか接点が持てず、自社を知らない人や、業界に興味が薄い人にアプローチするのが難しいというデメリットがありました。
ダイレクトリクルーティングでは、「今すぐではないが、条件が合えば転職を考える」という層もスカウトサービスのデータベースに登録されています。ゆえに、転職潜在層にもアプローチすることが可能なのです。
企業の将来を担うようなスキルフルで専門性の高い人材は、引く手数多で、現職でも活躍しているため転職市場に出回らないことが一般的です。
そのため、中長期的に、企業から能動的に優秀人材にアプローチし、接点をもつことができるのも、ダイレクトリクルーティングのメリットです。
数値で結果が見え「採用の健康診断ツール」になる
ダイレクトリクルーティングは、自社が求める人材に対して「どの程度興味を持ってもらえるか」が、数値でわかります。
例えば、年齢や性別、経験年数などでターゲットをAとBに分けて、同じスカウトを送るとします。
仮にターゲットAの返信率が4%、Bは7%だとしたら、ターゲットBと自社がフィットしていると考えられます。
返信率が平均値より大幅に低いのであれば、自社の採用要件が高すぎる(自社に興味を持ってくれない人材を狙っている)と判断できます。
このように、欲しい候補者からの反応を数値として把握できるのがダイレクトリクルーティングのメリットの1つです。
採用ブランディングの成果指標になる
最近はスカウトを受け取った後、Web上で採用サイトやSNS、口コミサイト等の情報を調べて、返信するか判断する候補者も多いです。
また、スカウト文面に動画やブログを載せる企業も少なくありません。
採用ブランディングは、実際の採用に繋がっているのか不透明という課題がありますが、ダイレクトリクルーティングと組み合わせることで、採用ブランディングの効果を数値で見ることができます。
採用ノウハウが蓄積される(採用のトレーニングになる)
人材紹介や求人広告を利用している企業も多いでしょう。
しかし、外部に頼りきりになり、自社に採用ノウハウが蓄積しないリスクがあります。
ダイレクトリクルーティングは、魅力訴求から内定出しまで一気通貫して社内で行うため、いつ誰に何を訴求するのか、すべて自社で考えなければなりません。
また、どういうターゲットにアプローチすべきか考える上で、スカウトサービスで実際に検索することで、どのくらい世の中に求める経験値を持つ人材がいるのかどうかを把握できます。
その過程で、自社に採用のノウハウが溜まっていきます。
ダイレクト リクルーティング |
人材紹介 | 求人広告 | リファラル | |
誰に(ダーゲット) | 企業が選択 | 企業が選択 | 待受型で コントロール不可 |
待受型で コントロール不可 |
何を(メッセージ) | 企業が選択 | エージェントに 任せる |
企業が選択可 | 企業(紹介する社員) が選択 |
いつ(タイミング) | 企業が選択 | エージェントに 任せる |
企業が選択可 | 待受型で コントロール不可 |
転職意向度 | 低〜高 | 高 | 高 | 低〜高 |
意向度醸成 | 企業で行う | エージェントが 介入 |
企業で行う (そもそも自分から 応募しており 意向度は高め) |
企業で行う |
また、ダイレクトリクルーティングは転職意欲の低い人と対峙し、意向醸成する必要があるなど、自社採用力がないと上手くいかないため、採用のトレーニングとして有効な採用手法と言えるでしょう。
ダイレクトリクルーティングで成果を出せれば、企業の採用力強化につながることは間違いないでしょう。
採用をコントロールできる
例えば人材紹介の場合、応募がくるかはエージェントの力量や自社との関係性次第で、企業側であり、採用をコントロールできません。また、新しい採用ポジションが誕生した際、エージェントに連絡し、求人票作成を経て、実際に候補者を紹介してもらうのに1ヶ月ほどかかることも少なくありません。
同様に、リファラル採用も、社内に周知してすぐに紹介があるとは限らず、コントロールは難しいです。
しかし、ダイレクトリクルーティングであれば、1日でスカウト文面・求人票を作成し、スカウトを送り始めることができます。
途中でターゲットや求人票に変更があっても、社内で即座に対応できます。
このように、ダイレクトリクルーティングは、採用をコントロールできる点に優れているのです。
工夫次第で採用コストを抑えられる可能性がある
ダイレクトリクルーティングは、他の採用手法に比べ、採用単価を抑えられる可能性があります。
仮に600万円の人材を人材紹介で採用すると、紹介手数料30%で180万円のコストが発生しますが、スカウトサービスのOpenWorkを利用すれば、成功報酬の80万円のみで済みます。
LinkedInやX(旧Twitter)の運用に力を入れ、DMでアプローチすれば、コストをかけずに採用も可能です。
ただ、月額費用やスカウト単価が高いスカウトサービスも存在することや、多くの企業からの引き合いの多い候補者にアプローチする場合、大量のスカウトを送っても母集団形成ができず、採用決定が出ないこともあります。その場合、他の採用手法よりも損してしまいます。
また、後述するようにダイレクトリクルーティングを運用する上では一定の工数がかかるため、採用活動に費やす人件費を含めるとコストパフォーマンスが悪くなってしまう可能性もあります。
ダイレクトリクルーティングのデメリット
ダイレクトリクルーティングはメリットだけではありません。
デメリットも把握しておきましょう。
スカウトの業務負荷が高い
ダイレクトリクルーティングでは、スカウト文面や求人票の作成、候補者選定、配信、カジュアル面談の実施、魅力付け、数値振り返りなどを自社で行う必要があるため、工数がかかります。
1人採用するためには、スカウトを数百通送ることも多く、想像以上に業務負荷がかかってしまいます。
工数の確保が難しい場合は、PRO SCOUTなどのダイレクトリクルーティング支援サービスを活用するのがおすすめです。
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大規模採用に不向き
ダイレクトリクルーティングは、基本的に1to1でアプローチしていくため、何十名〜何百名も大量に採用するような大規模採用の場合にかかる工数を考えると現実的ではありません。
また、契約しているスカウトサービスに特定の経験を持つ人材が少なく、データベースの枯渇によりアプローチ量をそもそも確保できないこともあります。
未経験採用に向かない
ダイレクトリクルーティングは、企業から直接アプローチするため、アプローチした理由を候補者に訴求する必要があります。
ただ、未経験採用のような幅広くアプローチする場合は、理由が薄くなってしまう事を避けられず、結果的にうまくいかない事が多いのが現状です。候補者からすると、「経歴をよく見ずに、誰にでも送っている」と捉えられてしまいます。
未経験採用だとはいえ、どういう経験やスキル、経歴の方にアプローチするべきなのか等、しっかりとペルソナを考えてからダイレクトリクルーティングを活用しましょう。
欠員補充としての利用には不向き
ダイレクトリクルーティングは、「中長期的」に良い人材を採用する方法として最も効果を発揮するものであり、欠員補充的な「短期的」な採用にはあまり向きません。
欠員補充の場合は、エージェントのように既に転職活動を積極的にされている方の中から採用した方が良い結果をもたらすでしょう。
ダイレクトリクルーティングの成功事例
ダイレクトリクルーティングの導入事例を紹介します。
メリットで記載したように、採用実績以外の目的で導入する企業も少なくありません。
詳しく見ていきましょう。
株式会社プレイド:自社採用力を高めるべくダイレクトリクルーティングを導入
株式会社プレイドは「データによって人の価値を最大化する」ことをミッションに掲げ、顧客体験(CX)プラットフォーム「KARTE」やデータを活用した新規事業創出と既存事業の変革を支援しています。
プレイドは自社採用力を強化するため、ダイレクトリクルーティングに注力しています。従来はエージェント経由の採用が主流でしたが、より効率的かつターゲットを絞った採用を目指し、ダイレクトリクルーティングを取り入れました。
ダイレクトリクルーティングの強みは、エージェントに依存せず、自社の定性的な人材要件を直接確認できることです。これにより、プレイドのニーズに合った人材をピンポイントでアプローチできるようになり、現在では、ダイレクトリクルーティング経由で6〜7割の母集団形成が行われています。
ダイレクトリクルーティング成功のためには、候補者のニーズを把握し、個別の選考設計を行うことが重要だと語ります。例えば、プレイドでは面談前にアンケートを実施し、候補者の関心や温度感を把握した上で面談を行っています。また、候補者に合わせた選考プロセスを設け、カジュアル面談や会食を設けることもあるそうです。
今後の目標として、同社は全員をダイレクトリクルーティングで採用できるほどの自社採用力を身につけたいと考えています。
株式会社セレブリックス:採用の健康診断としての活用事例
株式会社セレブリックスは、ダイレクトリクルーティングを「採用の健康診断」目的で導入しました。
同社は営業代行や営業コンサルティングを行っており、新規事業「SQiL Career Agent」では営業職に特化した人材紹介サービスを提供しています。
SQiL Career Agentの立ち上げ当初、スカウト文面や求人票に目立つ実績がなく、競争の激しい人材紹介業界では目を引くことが難しいと自覚していたそうです。
ダイレクトリクルーティングを導入した理由は、欲しい人材に直接アプローチできる採用手法として魅力を感じたこと以上に、今の状態で求める人材要件に対してどれくらいの反応が得られるものなのか、人材要件は市場とマッチしているのかを検証してみたかったという目的がありました。
ダイレクトリクルーティングを進めていくと、求める要件に対する候補者が市場に少ないことに気づき、採用要件の緩和を検討するきっかけとなりました。
最終的に、ダイレクトリクルーティングで採用実績を作れたとは言えないものの、事業の現状に合わせた採用手法の見直しができたことが大きな成果でした。
また、SQiL Career Agentをより魅力的にするための広報やブランディングの重要性を再認識する機会にもなりました。
今後は、採用広報・ブランディングを強化し、ダイレクトリクルーティングを活用してより魅力的な求職者を引きつけることに力を入れていく予定です。
また、マネジメントポジションや他の職種でのダイレクトリクルーティングの効果も検証していきたいと考えているそうです。
株式会社オーレンジ:24卒4名の採用に成功
東海地方を拠点に、ソフトバンクやauブランドをはじめとした携帯電話販売ショップの運営事業を行う株式会社オーレンジは、ダイレクトリクルーティングで24卒を4名の採用に成功しました。
元々は大手求人広告やナビサイトを利用していましたが、採用の苦戦からリファラル採用に切り替えました。しかしリファラル採用も紹介者数に限界があったため、ダイレクトリクルーティングを導入しました。
ダイレクトリクルーティングは、事前に学生のプロフィールを見て、学生のことを深く知った上で面談ができるので、相互理解が深まりやすいと言います。
今後もダイレクトリクルーティングを続け、SNS運用と組み合わせた採用戦略を描いているそうです。
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投稿者プロフィール
- 「ダイレクトリクルーティングの教科書」著者。日経トレンディや東洋経済への寄稿も果たす。新卒でパーソルキャリア株式会社にてクライアントに対して採用コンサルティングに従事。その後、外資系コンサル企業の採用支援をする中でダイレクトリクルーティングの魅力に気づき株式会社VOLLECTを創業。スカウト採用支援実績は500社超。