コンピテンシー面接とは?やり方やデメリットについて解説

採用

コンピテンシー面接とは、応募者の行動特性(コンピテンシー)を見極める面接手法であり、採用ミスマッチを低減できるとして近年注目を集めています。

しかし、志望動機や退職理由のような形式的な質問とは異なり、「どのような質問をすればよいのか分からない」「導入に向けた事前準備の方法が分からない」と悩む採用ご担当者様も少なくないかと思います。

そこで今回は、採用支援事業に8年間従事してきた筆者が、コンピテンシー面接の概要や導入手順について解説するとともに、導入するメリットや注意点も併せてお伝えします。

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コンピテンシー面接とは

まずは、コンピテンシー面接について概要と実施の目的を解説します。

そもそもコンピテンシーとは

「コンピテンシー」とは、優れた成績や成果を創出する社員に共通して見られる「行動特性」を指す言葉です。

採用の現場においては、職種や職務に関する基礎的な能力の他、思考パターンや行動に移す際の動機、価値観などを指すこともあります。

「コンピテンシー面接」では、質問を通じて、応募者のコンピテンシーと社内で活躍している社員のコンピテンシーを比較し、共通部分の有無を見定めます

また、「自社で成果を創出できる行動特性を有しているか」「自社で活躍している人材と共通する(もしくは近い)行動特性が見られるか」などを判断したり、見極めたりします。

コンピテンシーの6領域 定義
達成・行動 達成思考、秩序・品質・正確性への関心、イニシアチブ、情報収集
援助・対人支援 対人理解、顧客支援志向
インパクト・対人影響力 インパクト・影響力、組織感覚、関係構築
管理領域 他者育成、指導、チームワークと協力、チームリーダーシップ
知的領域 分析的志向、概念的志向、技術的・専門職的・管理的専門性
個人の効果性 自己管理、自己確信、柔軟性、組織コミットメント

出典:ライルM.スペンサー シグネM.スペンサー(1993年)

コンピテンシー面接と一般的な面接の違い

コンピテンシー面接と一般的な面接は、評価の焦点や質問内容が大きく異なります。

以下に、それぞれの違いを詳しく解説します。

項目 コンピテンシー面接 一般的な面接
評価内容 成果を生み出せる行動特性があるか 総合的に見て優秀かどうか
聞く内容 具体的な経験談と、
その経験の中でとった意思決定の背景
自己PRやこれまでの取り組み、
キャリア観、将来像など多岐にわたる
質問方法 STAR質問を重ねて事細かに
深掘りする
面接官によって異なる
評価基準 明確に設定されていることから、
誰が面接官を務めても客観的に評価できる
主観評価のケースが多いため
面接官によるバラつきが出やすい
回答の信頼性 嘘や誇張表現を見抜ける可能性が高い 嘘や誇張表現を見抜きにくい

 

コンピテンシー面接の目的

コンピテンシー面接の目的は、自社に入社した後に成果を創出できる人材を採用することです。

特に中途採用では、前職では成果を出していた人材でも、自社に入社した後に期待する成果を創出できないケースも珍しくありません。

その点、コンピテンシー面接では、応募書類などで把握できるスキルや経験の他、潜在的な能力や成果に直結する思考力や判断力、成果を生み出す行動ができるかを見極める手法です。

過去の経歴や持ち合わせているスキルなど、バイアスとなり得る要素以外の観点から採否を判断することで、入社後に成果を創出してくれる可能性の高い人材を採用につなげます。

コンピテンシー面接のメリット

コンピテンシー面接は通常の面接と比較して、次のようなメリットを享受できると言われています。

客観性と公平性の担保

従来の面接では、応募書類に記載された経歴をもとに採否を判断するケースが大半を占めていました。しかしその場合、潜在的な能力や才能が評価されづらく、採用ミスマッチにつながる点が課題視されていました。

その点、コンピテンシー面接では、職歴や学歴などのフィルターや主観を取り除き、「入社後の成果創出の可能性」に焦点を当てて採否を判断します

そのため、客観性と公平性を担保しやすく、過去の経歴や第一印象に惑わされない採否判断ができるようになります。結果的に選考の場においては、自社で活躍する可能性の高い人材だけに絞り込めるでしょう。

採用後のミスマッチを防止

コンピテンシー面接は、社内で活躍している人材に近いコンピテンシーを持っているかどうかを見極める面接手法です。行動特性の共通点や合致率をもとにした根拠ある採否判断ができる点が強みとして挙げられます。

「前職で大きな成果を残しているから、自社でも活躍してくれるであろう」「大手企業に在籍していたから有能だろう」といった主観に基づいて採否を判断するわけではないため、採用後のミスマッチ防止にも寄与するでしょう。

評価基準の一貫性

コンピテンシー面接では、面接を実施する際に、「コンピテンシーモデル」と呼ばれる評価基準を策定するケースが一般的です。

コンピテンシーモデルをベースに採否を判断するため、面接官の主観が採否に影響することが少なく、面接官が違っても評価の一貫性を保ちやすくなります。
評価の精度が高まるため、ミスマッチが生じるような人材を誤って採用してしまう事態も防止できるでしょう。

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コンピテンシー面接のデメリット

コンピテンシー面接には様々なメリットがある一方で、デメリットに感じられてしまう側面もあります。コンピテンシー面接の実施・導入を検討している企業は、デメリットについても理解を深めておきましょう。

時間がかかる

コンピテンシー面接を実施するにあたっては、事前に採否の評価基準となる「コンピテンシーモデル」を策定しなければなりません

また、コンピテンシーモデルを策定するためには、活躍している社員を選定したり、選定した社員へのヒアリングを通じて活躍する可能性の高い行動特性を絞り込んだりする必要があります。加えて、採用する人材が配属される予定の部署やポジションによって求められる行動特性が変わることもあるため、場合によっては募集する職種やポジションごとにコンピテンシーモデルを策定しなければなりません。

特に採用活動に人的リソースをかけられない企業にとっては、実際の運用まで時間がかかる点が導入における大きな障壁になることもあるでしょう。

企業側にもスキルが必要

コンピテンシー面接では、事前の準備段階で活躍する社員へのヒアリングが不十分だったり、分析が甘かったりすると、正しいコンピテンシーモデルを策定できず、効果的な面接にならない場合もあります。

また、コンピテンシー面接は、応募者の見極めに特化しているものの、応募者に対して自社の志望度を高める動機づけができる手法ではありません。コンピテンシー面接を実施するのであれば、同時に動機づけするためのフォローも必要になるでしょう。

このように、事前準備や面接の実施において企業側に一定のスキルやノウハウが求められる面接であることも理解しておく必要があるでしょう。

コンピテンシー面接を導入すべき企業とは?

本章では、コンピテンシー面接を導入すべき企業の特徴を紹介します。

技術を重視する企業

スキルを重視する採用を実施する企業は、コンピテンシー面接の利点が活かされやすいと考えられます。

その理由として、コンピテンシー面接では、応募者がどのような状況で特定の技術を使用したのか、その結果どのような成果を上げたのかを詳しく聞き出せるからです。
また、技術的な知識を持つだけでなく、それをどう応用して問題を解決してきたかを確認することで、候補者が単なる知識保持者ではなく、実際に価値を生み出せる人材かどうかを見極められるでしょう。

多様性を重視する企業

コンピテンシー面接では、候補者の過去の経験や行動に焦点を当てるため、過去の経歴や性別、年齢、国籍といったバックグラウンドに左右されることなく、応募者の強みや潜在的な能力を公平に評価できるようになります。

偏見や主観を排除した評価を実施できるため、多様性を重視する企業は組織の多様性を実現できるようにもなるでしょう。

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急成長中のスタートアップ企業

急成長中のスタートアップ企業は、入社後早々に成果の創出が求められるケースが大半です。そのため、候補者がスタートアップの急成長に対応できる即戦力であるかどうかを判断する必要があるでしょう。

その点、成果創出の可能性を見極められるコンピテンシー面接とは親和性が高く、コンピテンシー面接を導入することで求める人材を採用できる可能性を高められるでしょう。

コンピテンシー面接導入の手順

ここでは、コンピテンシー面接を導入する手順について解説します。

ハイパフォーマーの行動を分析し、自社のコンピテンシーの定義づけを行う

まずは、コンピテンシーの定義づけを行います。
コンピテンシーの定義付けを行うためには、自社内で活躍している人材や今回採用したいターゲットに近い人材に共通する行動特性を特定する必要があります。

自社内で活躍している人材や今回採用したいターゲットの特性に近い人材にヒアリングを実施して、共通する行動特性を探し出しましょう。

下記を中心にヒアリンクを行います。

  • どのような行動をしたか
  • 行動を起こしたきっかけは
  • どのような工夫をして達成したか
  • どのように考えて行動を起こしたのか

ただし、そもそもの募集要項と合致しない定義を定めてしまうと採用ミスマッチを発生させてしまう要因になってしまいます。コンピテンシーの定義を定める際は、自社の社風や風土、ビジョンや理念にも合致した定義になっているかも確認しておきましょう。

ミイダスの「活躍要因診断」など、ツールを使うと手軽に分析ができます。

参考記事:【企業向け】ミイダスの料金と評判は?特徴や診断コンテンツ

STAR法に基づく質問の作成

続いて、STAR法に基づき質問を作成していきます。

STAR法とは、コンピテンシー面接で用いられることの多いフレームワークです。「Situation(状況)」「Task(課題)」「Action(行動)」「Result(結果)」の4つの単語の頭文字を取った呼称であり、応募者の過去の行動に焦点を当て、4種の質問を重ねながら応募者の行動特性を見極めていきます。

STAR法を用いた質問例は『コンピテンシー面接で使われる質問例』で紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。

参考記事:Amazonでも活用されるSTAR面接とは?質問例や実施方法を紹介

評価基準の設定

続いて、面接官ごとに評価のブレが生じないよう、評価基準を設定します。

募集する職種やポジションが複数ある場合は、職種やポジションごとに評価基準を設けましょう。また、採用基準は、「○○と回答した場合、評価は5にする」のように点数ごとに回答例を示しておくと、面接官は評価しやすくなり、採否判定の精度も高まります。

応募者を評価する際には、コンピテンシーレベルを用いることでより効果的な判断が可能です。コンピテンシーレベルとは、行動特性を5つの段階に分けた指標です。

  1. 受動行動
  2. 通常行動
  3. 能動行動
  4. 創造行動
  5. パラダイム転換行動

この5段階の評価基準を活用することで、評価のバラツキを最小限に抑えることができます。以下で、それぞれのレベルについて詳しく説明します。

レベル1:受動行動

受動行動とは、指示に従って行動する受け身の状態を指します。自ら課題を見つけたり、アイディアを出したりすることがなく、上司などの指示に従うだけの行動パターンです。このような人材は、目的意識が薄く、「言われたからやる」という姿勢で仕事に取り組むことが多いです。

能動的な人材を求める企業においては、受動行動に該当する応募者はミスマッチとなる可能性があります。

レベル2:通常行動

通常行動に分類される人は、与えられた業務をミスなくこなすことができます。受動行動と同様に、自らアイディアを出すことは少ないですが、正確に業務を遂行する点で受動行動とは異なります。

マニュアルや指示通りに業務を進めることができる一方で、独自の工夫をすることが少ない人がこのレベルに分類されます。

レベル3:能動行動

能動行動とは、自己設定した目標に向けて積極的に取り組む姿勢を指します。たとえば、「来週、新規顧客を訪問する」と言われた場合、上司の指示を待つことなく、顧客のリサーチや事前資料の準備を進めることができる人材です。

複数の選択肢を常に考え、それぞれに対応策を講じられる人がこのレベルに該当します。多くの企業では、レベル3以上のコンピテンシーレベルを持つ応募者の採用を目指しています。

レベル4:創造行動

創造行動とは、状況に変革をもたらす創意工夫を行う行動を指します。自らの役割にとらわれず、新しい可能性や進むべき道を切り開くことができる人材です。

自分だけでなく、周囲にも影響を与え、組織全体に良い変化をもたらす行動をとることができます。たとえば、新規顧客を訪問する際、自らリサーチを行うだけでなく、若手メンバーにリサーチの方法を指導するなどの対応を取ることができます。このような行動は、長期的な視野でチームの成長を促すものです。

レベル5:パラダイム転換行動

パラダイム転換行動とは、既存の枠組みや常識を覆す力を持つ行動を指します。独自の提案を通じて、組織に新しい風を吹き込むことができる人材です。

たとえば、新規顧客を訪問する際に、新たなツールを使って事前アンケートを取る、製品デモンストレーションを準備するなど、従来の手法にとらわれない試みを行うことができます。このレベルに該当する応募者は非常に希少です。

レベル5の人材が必ずしも自社に適しているとは限りません。自社の求めるコンピテンシーレベルをあらかじめ設定し、それに基づいて評価することが重要です。

面接官の選定・トレーニング

次に、面接を担当する人材の選定とトレーニングを実施します。

コンピテンシー面接は、評価の基準や対象、質問する内容などが一般的な面接とは異なります。そのため、コンピテンシー面接を実施する際は、事前にコンピテンシー面接の概要や実施の目的を面接官に理解してもらわなければなりません。

ロールプレイングを実施する、質問項目や評価シートに目を通しておいてもらう、評価基準について共有しておくなどの、取り組みを実施しておくと、目的に沿ったコンピテンシー面接を実現できるでしょう。

面接の実施

実際にコンピテンシー面接を行い、応募者を評価しましょう。
先に定めたSTAR法に基づく質問を通じて、応募者の過去の行動や体験を深掘りしていきます。なお、コンピテンシー面接は、面接官からの質問が多くなりやすい面接手法です。

圧迫面接になってしまわないよう、雰囲気作りや質問の仕方・態度には十分留意しましょう。

コンピテンシー面接で使われる質問例

続いて、コンピテンシー面接で使われる質問例を紹介します。
見極めたいコンピテンシーごとに質問例を記載しています。ぜひ、参考にしてみてください。

問題解決能力に関する質問

  • 「最近のプロジェクトで直面した最も大きな課題は何でしたか?その課題にどのように対処しましたか?」
  • 「予想外の問題に対して、どのように対応しましたか?その結果はどうでしたか?」

リーダーシップに関する質問

  • 「チームをまとめて目標を達成した具体的な例を教えてください。」
  • 「リーダーシップを発揮した経験について教えてください。その時の状況とあなたの役割は何でしたか?」

チームワークに関する質問

  • 「チームで成功したプロジェクトについて教えてください。あなたの役割は何でしたか?」
  • 「チームメンバーとの対立を解決した経験について教えてください。」

コミュニケーション能力に関する質問

  • 「難しいメッセージを伝えなければならなかった時の経験を教えてください。どのように伝えましたか?」
  • 「顧客やクライアントと効果的にコミュニケーションを取った経験について教えてください。」

適応能力に関する質問

  • 「急な変更や新しい状況に適応しなければならなかった時の経験を教えてください。どのように対処しましたか?」
  • 「新しい技術やツールを導入した経験について教えてください。その時の課題と対策は何でしたか?」

業績向上に関する質問

  • 「過去にあなたが関与して業績が向上したプロジェクトについて教えてください。どのように貢献しましたか?」
  • 「業績を改善するために新しいアイデアを提案した経験について教えてください。」

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コンピテンシー面接 まとめ

コンピテンシー面接は、導入までの工数がかかったり、ノウハウが必要になったりするものの、入社後に活躍する可能性を秘めた人材を採用できる面接手法でもあります。

また、自社内で活躍する人材のコンピテンシーが明確になれば、採用だけではなく、社員の育成にも活用できるかもしれません。面接の採否判断に課題を感じている企業は、面接手法や面接の在り方を見直す一環としてコンピテンシー面接の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

投稿者プロフィール

谷下 奈穂
谷下 奈穂
株式会社VOLLECTにて採用コンサルタントとして従事。大手広告代理店のDXコンサルタント職や、大手IT企業でのエンジニア採用など、多数の採用支援実績を持つ。