女性の採用を成功させるには|クリアすべき課題と導入すべき制度について

人事

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近年、女性役員の比率や女性採用数の向上を目指す企業が多く存在します。これは、人手不足の解消や企業イメージ向上に寄与するためです。

しかし、出産・子育てや身体の不調など、女性にはさまざまなライフステージや健康面が仕事に影響してきます。

これらの課題の解決を図りつつ、女性の採用を成功させるためには企業はどのような取り組みを行うべきなのでしょうか?

本記事では、女性の採用が注目される背景や、女性採用を成功に導くポイント、課題などを解説します

「女性の採用を推進したいが何をすればいいかわからない」などとお悩みの採用担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

女性の採用が注目される背景

女性の採用が注目される背景として、人手不足や多様な働き方の普及などが挙げられます。それぞれ解説していきます。

労働人口の減少と人手不足に悩まされる企業の増加

現在の日本は少子高齢化により、労働力人口が大幅に減少しています。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構 によると、2020年に6,904万人いた労働力人口は、最悪の場合2040年には6,002万人まで減少すると推測されています。


引用:2023年度版 労働力需給の推計(速報) 労働力需給モデルによるシミュレーション |独立行政法人 労働政策研究・研修機構

本調査では推計するにあたり、3つのシナリオが存在します。

それぞれのシナリオの詳細な説明は割愛しますが、一番減少数の少ない「成長実現・労働参加進展シナリオ」は、経済・雇用政策を講じ、成長分野の市場拡大が進み、女性及び高齢者等の労働市場への参加が進展する場合と定義されています。

つまり、女性の労働市場への参加は労働力人口の減少率の低下に寄与すると言えます。

また、厚生労働省の発表によると、令和5年の女性の労働力人口は、前年より28万人も増加しています。一方で、男性の労働力人口は令和4年より1万人減少しています。

引用:令和5年版「働く女性の実情」のポイント(概要)|厚生労働省

このように、労働力人口における女性の割合は年々増加しており、今後も増加すると予想できます。

以上の2点から、女性の採用が注目を集めています。

今後の日本の労働力不足、ひいては自社の労働力不足になくてはならない一つが、女性の採用なのです。

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多様で柔軟な働き方が普及しているため

昨今は共働き世帯が増え、男性も積極的に育児に参加するようになってきています。


出典:共働き世帯の増加|厚生労働省

コロナ禍でのリモートワークやフレックス制度など、柔軟な働き方ができる社会になったことでさらに、女性の社会進出が進んでいます。これまで小さい子どもがいて働けないと悩んでいた女性も、「柔軟な働き方ができるなら私も働けそうだ」と労働に参画できるようになったのです。

また、昨今「ダイバーシティ採用」という言葉が注目されています。ダイバーシティ採用とは、多様な人材を雇用するための採用活動を指します。

女性の採用もダイバーシティ採用にあたりますが、その他にも外国人採用や障がい者採用、幅広い年齢層の採用などもそれにあたります。

女性の採用を促進することで多様な働き方や価値観を受け入れ、ダイバーシティ採用の促進や、促進するための環境整備にもつながるのです。

このように、女性の採用が促進されることで、従業員や企業にとってプラスになる事柄が増えるでしょう。

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女性活躍推進法の改正

2016年に、女性活躍推進法と呼ばれる法律が施行されました。本法律は、女性が活躍しやすい職場環境を作ることを目的として、下記を定めています。

・女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供及びその活用と、性別による固定的役割分担等を反映した職場慣行が及ぼす影響への配慮が行われること
・職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備により、職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立を可能にすること
女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきこと

引用:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の概要|厚生労働省

本法律では、事業主に対し、以下の情報を把握し、改善・公表することも義務付けられています。

・女性採用比率
・勤続年数男女差
・労働時間の状況
・女性管理職比率

さらに、女性活躍推進に関する「一般事業主行動計画(行動計画)」の策定・公表も義務付けられているのです。

従来は従業員数301名以上の企業が対象でしたが、2022年の法改正により101人以上の企業も対象となりました。

後述する「えるぼし認定」は、本法律での提出が義務化されている「一般事業主行動計画(行動計画)」をもとに、その取り組み状況が優良な企業を厚生労働大臣が認定する制度です。

企業イメージ向上の一環として

女性の採用を積極的に行っている企業は、企業イメージが向上します。なぜなら、「女性が働きやすい環境づくりを行っている」「多様な価値観を受け入れている」といった良いイメージを持たれやすいからです。

これらは、ワークライフバランスを重視する若手には魅力的なポイントでしょう。女性採用へ向けての労働環境の整備などの様子がメディアで報道されたりSNSで拡散されたりすれば、ステークホルダーへの良い印象付けにもなり得ます。

企業の取り組みの姿勢が評価され、新たな取引先が増えたり商品の売れ行きが伸びたりする可能性をもあるのです。

女性の採用を成功させるためのポイント

女性の採用を成功させるためには、環境の整備や女性管理職の積極的な登用などがあります。それぞれ解説していきます。

女性が働きやすい環境の整備

女性の採用を成功させるための一つ目のポイントは、女性が働きやすい環境を整備することです。

「女性が働きやすい」とは主に下記を意味します。

・キャリアアップが図れる制度が整っている
・生理や更年期障害など、女性特有の身体の不調に対応する制度がある
・男性と同等の給与やキャリアアップのチャンスがある
・結婚・出産後も働ける環境がある など

上記を叶える制度を整えることが重要です。

25〜29歳時点の労働力率が49歳まで維持されると、働く女性は102万人増加することになります。


出展:パーソル総合研究所「労働市場の未来推計 2030」

日本において女性の労働力を増やすには、いわゆる「M字カーブ」を解消することが鍵となります。このカーブは、出産や育児を理由にした離職が主な要因とされています。

25〜49歳の間に生じるM字カーブの背景を「保育環境」に限定して試算した結果、もし保育所定員が増え、育児に伴う問題が解消された場合、25〜29歳時点の労働力率が49歳まで維持されると仮定すると、新たに102万人の労働人口が生まれると推計されました。


出展:パーソル総合研究所「労働市場の未来推計 2030」
※参考資料:総務省「国勢調査(2015)」、厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(2017)」、総務省統計局「人口推計(2016)」

また、地域ごとの保育所定員と女性の労働参加率を比較すると、「女性ひとり当たりの保育所定員が多い都道府県ほど労働参加率が高い」傾向が見られます。

これを踏まえると、企業内保育所などの保育サービスを拡充し、必要な人が必要なタイミングで利用できる環境を整えることが、女性の就労促進に寄与する可能性があると考えられます。

女性管理職の積極的な登用

女性が求職活動を行う際、管理職に就いている女性がいると、自身のキャリアビジョンを想像しやすいものです

しかし、日本の役職者や役員を占める女性の割合は未だに低いままです。内閣府の男女共同参画局の調査によると、常用労働者100人以上を雇用する企業の労働者のうち役職者に占める女性の割合を役職別に見ると、係長級20.7%、課長級12.4%、部長級7.7%と上位の役職ほど女性の割合が低いことがわかりました。


出典:諸外国の就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合

また、上場企業の役員に占める女性の割合は12.6%と、諸外国と比べて低い水準となっています。


出典:諸外国の役員に占める女性の割合

そのため、女性管理職の積極的な登用を推進し、女性のキャリアアップが叶う場所だとアピールしましょう。

求人・採用ページの工夫

求人・採用ページの工夫も女性採用成功の鍵です。

まずは、どのような女性を採用したいのか、自社のターゲットを策定しましょう。そのターゲットが仕事選びの際、何に重きを置くのか確認することが重要です。

重要視する事項を確認したら、求人や採用ページでアピールする工夫をしましょう。ターゲットごとにアピールすべき項目の例は下記です。

ターゲット アピール項目
育児中だがハイスキルを持ち合わせている女性 ・育児に関わる制度の紹介

・実際に子どもを育てながら仕事をする女性社員の紹介 

・具体的なキャリアアップのステップの紹介 など

バリバリ働き、将来管理職を目指したい女性 ・女性管理職や役員の紹介

・具体的なキャリアパス

・評価制度の紹介 など

1つの会社で長く働きたいと思っている女性 ・長く働くメリットの紹介(勤続10年で長期休暇が取得できるなど)

・勤続10年や20年以上の女性社員の紹介

現代の求人はさまざまなカスタマイズが可能です。その機能を使用し、自社の好みやターゲットの好みに合うような情報を掲載しましょう。

ダイレクトリクルーティングの活用

ダイレクトリクルーティングの活用も、女性の採用には有効です。

求人票などの応募資格欄に「女性であること」などと記載することは、男女雇用機会均等法で禁じられています。

ただ、ダイレクトリクルーティングは企業がターゲットに対し直接アプローチできる採用手法です。求人票を公開して母集団を広く集めるのではなく、ビズリーチやLinkedIn、OfferBoxなどで、企業が事前に選定した候補者に直接コンタクトを取ります。

これにより、性別やスキルセット、職歴など、企業が求める条件に合致する人材をピンポイントで採用することができます。

関連記事:ダイレクトリクルーティングのデメリットを押さえて効率的な採用活動を!

女性の採用における課題

女性の採用には、仕事と家庭の両立や管理職登用への難しさなど、さまざまな課題が存在します。それぞれ解説していきます。

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仕事と家庭の両立

結婚・出産などのライフイベントに伴い、女性は仕事と家庭の両立が難しい場合があります。
マイナビが行った調査によると、「育児との兼ね合いが原因で退職・転職をした、または検討した経験」を持つワーキングマザーの割合は、4割強もいることがわかりました。


引用:「育児退職」を経験した女性は5人に1人、育休経験男性も4割弱が退職を経験・検討|株式会社マイナビ

このように、仕事と家庭の両立に難しさを感じている女性が多いのです。

管理職への登用の難しさ

女性管理職の少なさは、「2‐2.女性管理職の積極的な登用」で紹介しましたが、実はこの一つの理由は、女性の意識そのものにあります。

独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査によると、課長以上への昇進を希望する者の割合は、男性に比べて女性が顕著に低いことがわかりました。

引用:男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査|独立行政法人労働政策研究・研修機構

その理由として、「自分には能力がない」「責任が重くなる」を挙げる割合は男女でほとんど差がなかったものの、「仕事と家庭の両立が困難になる」「周りに同性の管理職がいない」という理由は女性が男性より多く挙げていました。

「女性自身が望んでいない」とはいえ、仕事と家庭の両立の難しさや、周りの女性管理職の少なさ故の結果なのです。

職場文化や無意識の偏見

職場文化や無意識の偏見もまた、女性の採用推進を妨げる一因となっています。

株式会社キャリアデザインセンターが運営する「女の転職type」が行った「女性の活躍を阻害している原因」に関する調査によると、「男性優位の会社が多い」と答えた女性は約6割にものぼりました。

さらに、「産休・育休が取りにくい」「産休・育休後は責任のある仕事を任されない」という回答も多く、職場の文化が女性の活躍を妨げている一因であることがわかったのです。


引用:女性活躍のために企業が取り組むべきこととは?7つのポイントや事例をご紹介

また、「先入観や思い込みによって偏った見方をしてしまうこと」という意味である「アンコンシャス・バイアス」も、女性の採用を妨げています。

「1‐1.労働人口の減少と人手不足に悩まされる企業の増加」で紹介したように、共働きの家庭は1997年を境に増加しています。しかし、それ以前は夫のみが働く家庭が多くありました。そのため、その世代を生きてきた男性は「女性は結婚したらすぐ辞める」というアンコンシャス・バイアスが働いている場合があります。

また、「女性は総合職より一般職が向いている」などのアンコンシャス・バイアスが働き、女性を総合職採用しない企業も未だにあるのも事実です。

育児支援の不足

「3‐1.仕事と家庭の両立」でも挙げたように、女性は育児との兼ね合いで仕事を辞めたり退職を検討したりします。

実際に、女性の世代別労働力率を見てみると、子育て世代が多いとされる30代の割合が低くなっています。


引用:令和5年版「働く女性の実情」のポイント(概要)|厚生労働省

これは、育児支援の不足が一因です。例えば、最近よく耳にする「小1の壁」もそれにあたります。

「小1の壁」とは、子どもの小学校入学を機に、共働き家庭が仕事と子育ての両立が困難になる状況を指します。

主に、次のような理由からです。

・親が出勤時間に間に合うように家を出ようとすると、子どもの登校時間より早くなる場合がある。
・帰宅も、親が帰宅する時間よりずっと早く、家で一人になってしまう。学童に通っていても、18時までしか見てくれない場合が多い。(保育園の通常保育では18:30まで見てくれ、延長保育も19:30頃まで可能)
・夏休みや冬休み、春休みなどの長期休暇期間は、給食がお休みになってしまうため、お弁当を用意しなければいけない。
・「小学校入学前までの時短勤務が可能」としている企業が多いため、時短勤務ができず子どもが家で一人になる場合が多くなる。
・授業参観・保護者会・運動会・PTA活動など、親が参加しなければいけない行事が多い。さらに、これらの開催は通常平日である。
・学童の待機児童が過去最多の1万8462人で、預け先がない※
※子ども家庭庁 調査より

さらに、行政の支援だけでなく、夫(パートナー)の家事や育児への協力不足も、育児支援の不足の一つと言えるでしょう。

エン・ジャパン株式会社が行った調査によると、家事・育児の分担割合は「女性7割、男性3割」が最多の回答となりました。

引用:社会人4800人に聞いた「男女の家事・育児分担」調査|エン・ジャパン株式会社

また、保育園や幼稚園に通い始める小さい子どもは、まだ集団生活に耐えうる免疫を持ち合わせていません。そのため、高頻度で発熱したり、風邪をひいたりします。すると、仕事を休み看病しなければならず、有休を使い果たし、欠勤となってしまうのです。筆者も同様の状況に陥り、社内の目が厳しくなり退職を決意しました。

企業内に病児保育を設ける、子の看護休暇をもっと増やす、フルフレックスタイム制度下で働けるなどの措置があれば助かったのにと思います。

以上のような現状から、育児支援の不足が女性の採用や活躍を妨げている要因となっています。

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女性の採用を強化するために導入したい制度

女性の採用を強化するためには、導入したい制度が5つあります。それぞれ解説していきます。

育児の支援制度

女性の活躍において育児の支援制度は欠かせません。
下記のような制度を導入・整備すると良いでしょう。

制度 内容
産休・育休制度 女性だけでなく、男性も産休・育休が取れる制度。
子どもの誕生直後8週間以内に男性が最大4週間の休みを取得できる「出生時育児休業」
※(通称:男性版産休)の導入・促進を図る。
企業として、産休・育休が取りやすいよう業務の属人化の解消や防止が必要。「産休・育休を取りづらい」と感じる社員が多いため、
理解を促す・深める研修などの開催を行う。
※“男性の育児休業取得促進”を目的とした「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を
行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)及び雇用保険法の一部を
改正する法律」内で定められている
シッター利用補助制度 残業や出張などに伴い、シッターを利用する際の利用料金の補助を行う。

学童の待機児童など、家で一人になってしまう子どもがいる家庭も利用できるよう、
小学生の子どもがいる社員も対象とする。

短時間勤務を取得しやすくする制度 短時間勤務を行う社員の代替要員体制を整える。

また、「取りづらい」という声が出ないよう、短時間勤務の
積極的な利用を促し、取りやすい雰囲気づくりが必要。

出産見舞金制度 出産した際に会社からお祝いとして社員に贈られる見舞金制度。

出産した女性だけでなく、妻(パートナー)が出産した場合にも
男性社員が受け取れる制度を策定する企業も増えてきている。

相場は約3~5万円。

家事代行サービス利用補助制度 働く女性にとって負担である毎日の掃除や食事づくりをお願いする
家事代行サービスの利用料の一部を補助する制度。
社員自らがサービスを探すのは負担であるため、企業があらかじめ
家事代行サービス業者と提携しておくとなお良い。
復職前の支援制度 復職前に不安を抱く女性は約9割と高い割合を占めるため、
不安を払拭できる支援制度を導入する。
例えば、カウンセラーとの面談実施や、産休・育休中の会社の様子を
知れる社内報の配布、先輩ワーキングマザーへの相談会実施など。
企業内保育園・学童や病児保育所の設置 企業内に保育園・学童や病児保育所を併設する。

小学校卒業まで預けられる学童も設置することがポイント。

また、免疫がつくまで子どもは高い頻度で発熱したり風邪をひいたりするため、
有休を使い果たす女性も少なくない。その結果、評価に影響が出る
可能性もあるため、病気の子どもでも預かってくれる病児保育所の併設ができるとなお良い。

女性に特化した休暇・支援制度

女性に特化した休暇や支援制度の策定も必要です。女性ホルモンによる体調不良は、多くの女性の悩みの種でしょう。

女性特有の体調不良として最も多いのが生理に関するものです。生理中に限らず、生理前はPMS(月経前症候群)と呼ばれる心身の不調が発生します。そのため、「女性が心身ともに体調が良好な期間は月の半分しかない」とも言われているのです

生理のほかにも、女性は更年期障害になりやすく、その症状もめまいやホットフラッシュ、吐き気など、仕事に支障をきたします。

また、近年では不妊治療に取り組む女性も少なくありません。ある調査によると、不妊の検査・治療の経験がある夫婦は22.7%で約4.4組に1組といわれています。

引用:不妊は特別ではない|こども家庭庁

不妊治療は突発的な通院が起こったり、通院頻度が高かったりするため、仕事と治療を両立させるのは難しいと感じる女性が多いのです。

厚生労働省の調査によると、不妊治療をしたことがあると答えた人のうち、不妊治療と仕事の両立ができずに仕事を辞めた人は10.9%であることがわかっています


引用: 「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」結果概要|厚生労働省

筆者も、不妊治療経験者の一人です。不妊治療では、生理が来たらその翌々日までに病院に行かなくてはいけません。そのため、突発的な通院が発生するのです。その後も決められた日時に必ず病院に行かなければならず、フルタイムで働きながら治療を続けるのは困難と判断し、退職に至りました。

そのため、「不妊治療のための休暇があればいいのに…」と強く思っていました。

以上のことから、女性特有の課題に配慮した下記のような休暇や支援制度を整えると良いでしょう。

休暇・支援制度 内容
生理休暇・婦人科への通院休暇制度 生理時に取ることができる休暇。労働基準法に従うと、
生理休暇の日数を企業が定めることはできない。無給とする企業が多く、
また、「生理休暇を取る」と伝えるのが恥ずかしい
という理由でなかなか取れないのが現状。
「生理休暇」という名前を変えたり、有休にしたりすると
気兼ねなく利用できる。
また、生理だけでなく、検査などでの婦人科への通院にも
使える休暇を設定するとなお良い。
不妊治療のための休暇・支援制度 不妊治療を行っている社員に対し、休暇を与える制度。
年間〇日までと設定している企業が多い。
また、2022年より不妊治療の保険適用が開始されたものの、
まだまだその費用負担は高額であるため、治療費の一部を助成するなどの制度も効果的。
低用量ピルや漢方などの購入補助制度 生理痛の重い女性は、歩けないほどの痛みを感じることもあるため、仕事に支障をきたす。

それを緩和するための一環として、生理痛を和らげるという
低用量ピルや漢方などの購入費用を補助する制度を設ける。

更年期休暇・支援制度 更年期の症状がひどいときに取れる休暇。生理休暇と同様、
取りやすい名称にすることがポイント。
自身の不調が更年期によるものなのかを相談できるオンライン診察の機会を
提供したり、全社員が更年期障害についての理解を深める
セミナーを実施したりする施策も効果的。

キャリアアップ支援と研修制度

助成のキャリアアップ支援と研修制度もまた、取り入れたい制度の一つです。

前述したように、周りにロールモデルがいなかったり、アンコンシャス・バイアスのせいで女性のキャリアアップを推進していなかったりする企業が存在します。

そのため、下記のようなキャリアアップ支援と研修制度を導入すると良いでしょう。

支援・制度 内容
キャリアデザイン研修 自身の強みや希望を言語化しながら、今後のキャリアを考えたり、
その実現に向かって具体的な行動計画を立てたりする研修
スキルアップ研修 現在持ち合わせているスキルのさらなる向上や、
新たなスキル習得を行う研修
女性管理職とのコミュニケーションの場の提供 座談会やランチミーティングなど、ロールモデルとなる
女性社員と交流する場を企業が提供する。
自身のキャリアステップやキャリアプランが明確になる。
キャリアステップの明示 どのような基準をクリアすればキャリアアップできるのかを明示する。

明示することによって、性別に関係ない評価の公平性を
示すことができる。また、明確な目標に向かって突き進みやすくなる。

男性社員向けの、女性管理職に関する理解を深めるための研修 日本での女性管理職者数の現状や、女性管理職を
登用することのメリットを伝える研修

「えるぼし」「くるみん」認定の取得

女性の採用を強化するためには、国から認定を受けていると企業のイメージが良く、母集団形成がしやすくなります。

「えるぼし」「くるみん」の認定制度の概要は、それぞれ下記です。

認定制度 概要
えるぼし認定 女性活躍推進法に基づく一定の基準を満たした企業を、
女性活躍推進に前向きで優秀な企業として認定する制度。
「採用」、「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」
の5項目の認定基準がある。
認定基準を満たしている項目数によって、3段階のえるぼし認定が用意されており、
さらにその中でも優良と認められた企業は「プラチナえるぼし」の認定が受けられる。
2024年3月末時点で、えるぼし認定は2,716社、プラチナえるぼし認定は56社が認定を受けている。
くるみん 女性活躍推進に向け行動している企業を「子育てサポート企業」として
厚生労働大臣が認定する制度。
認定基準は通常のくるみんは10項目、プラチナくるみんは12項目あり、
それぞれの評価によって3段階の認定が用意されている。
2024年3月末時点で、くるみん認定4,481社、プラチナくるみん認定630社、
トライくるみん認定2社、くるみんプラス認定28社、プラチナくるみんプラス認定44社存在する。

 

参考:「えるぼし」認定とは |厚生労働省
女性活躍推進企業認定「えるぼし認定・プラチナえるぼし認定」|厚生労働省
くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて|厚生労働省
くるみん認定・トライくるみん認定・プラチナくるみん認定とは|厚生労働省

テレワークやフレックスタイム

テレワークやフレックスタイムの制度導入も、女性の採用強化につながります。テレワークやフレックスタイムであれば自身の都合に合わせて働くことができ、先述した育児やホルモンバランスによる心身の不調、通院などがしやすくなるのです。

また、男性も同じようにテレワークやフレックスタイムを利用することで、育児に積極的に参加したり、パートナーの支援ができたりします。

女性の採用における企業の取組事例

ここからは、女性の採用における企業の取り組み事例を紹介します。

株式会社栗本鐵工所

株式会社栗本鐵工所は、日本シェア第二位の鋳鉄管メーカーです。

同社は男性社員の割合が多いため、配偶者が出産をする男性従業員に向けた制度の整備や、制度利用者に対する職場の理解促進といった全従業員を巻き込んだ整備を進めてきました。

具体的には、「育児と仕事の両立ガイドブック」を独自に作成して従業員に発信。会社の人事制度や経済支援の説明、「産後うつ」「小1の壁」といったトピックス、実際に制度を利用した従業員の事例を掲載しています。

本ガイドブックの特徴は、「ママ・パパ」だけでなく「ボス」の視点も取り入れている点です。ボスの内容を充実させ、同じページに「ママ・パパ」向けと「ボス」向けの内容を並べて記載することで、お互いの状況を自然と知ることができる構成にしているそう。

本人の努力だけではどうにもならない、周囲の理解の大切さを感じたために、この構成にしたとのことです。

ほかにも、子どもが産まれる予定の従業員が所属する職場には、人事部主催で1~2時間にわたる研修を実施。研修内でアンコンシャス・バイアスのチェックを実施すると、小さい子どもがいる従業員や定時で帰る従業員に対して、勝手なイメージを持って接していたことに気づき、「理解していたつもりで理解していなかった」という声が上がることも。

これらの取り組みの結果、育児休業取得率の増加や労働時間の削減といった目に見える形での効果が現れているそうです。

同社はくるみん認定、プラチナくるみん認定を受けています。

参考:ママ・パパだけでない従業員一丸となった取組で仕事と育児の両立がしやすい会社へ|厚生労働省

ウェザーニューズ

ウェザーニューズは、気象観測や、海象・水象・地象などのあらゆるデータを収集・解析・予報などを行う気象情報会社です。

同社は2015年、社員が子育てと職場での活躍を両立できる環境づくりを目指し、企業内保育園「WNI RAIN KIDS HOUSE」を開設しました。

なにかあればすぐに子どもを迎えに行ける、様子を見に行くことができるという安心感を持って業務に取り組むことができるようにとの願いを込めて開設されました。

女性社員だけでなく、男性社員や外国籍の社員も利用可能です。

さらに、小学校6年生まで受け入れ可能な学童スクールも併設。業務中の社員に代わり、学童スクールのスタッフが放課後に児童を小学校まで迎えに行ったり、夏休みなどの長期休暇中は学童スクールの開園時間を延長したりと、手厚いサポートが受けられます。

参考:ウェザーニューズ、企業内保育園『WNI RAIN KIDS HOUSE』を開設|株式会社ウェザーニューズ

LINEヤフー株式会社

LINEヤフー株式会社は、「ヤフージャパン」や「LINE」を提供するインターネット企業です。

同社は、あらゆる世代、国籍の社員のことを考え、さまざまな制度改革を行ってきました。女性の制度については、人事総務グループや有志による女性の健康支援プロジェクトのメンバーが改革を進めています。

「プレグナンシーサポート制度」は、不妊治療の通院のために年10日間の有給休暇を取得できます。さらに、一時的に業務から離れて不妊治療したい場合の休職制度も用意。費用補助制度もあり、本人負担の半額かつ1世帯あたり年10万円までの補助が受けられます。

月に2回、テーマに沿った専門家を招いて無料のオンラインセミナーの開催も行っています。低用量ピルでの月経移動を説明するといった生理に関する情報はもちろん、妊娠・出産、更年期における女性の体の変化、男性の更年期などのトピックを提供。「10分で分かる卵子凍結」という動画を見てもらうなど、最新のテーマの提供も行っています。

さらに、「生理休暇」の名称を「F休暇制度」(エフ休)に変更したことで、言いづらさが緩和され取得しやすくなったという声が聞かれたそう。エフ休では生理時だけでなく、婦人科受診など女性特有の心身の不調や対処にも使えるように対象を広げました。そのため、理由を申告する必要がなくなったのです。

そして同社で一番印象的な取り組みは、ヤフーの社長を含めた役員11人が、女性の健康とメノポーズ協会の「女性の健康検定」を受検し、全員が合格したことです。これまで知らなかったことばかりでとても勉強になったという言葉が聞かれ、女性従業員からもポジティブな感想が数多く返ってきたそう。全員が女性の健康課題への知識があれば、男性でも施策の検討ができるようになると期待が膨らみます。

参考:有志の「女性の健康支援プロジェクト」と協力し、本当に必要とする施策を検討|東京都産業労働局

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まとめ

今回は、女性の採用におけるポイントや課題、導入したい制度などを紹介しました。

女性の採用は、将来より深刻になるであろう人手不足への打ち手や、企業イメージの向上につながります。

しかし一方で、仕事と家庭の両立が難しい、管理職登用がなかなかできない、進まないなどの課題もあります。

女性の採用を強化するためには、これらの課題解決を図り、働きやすさを追求していくことが重要です。女性のみを対象とするのではなく、女性の方が家事や育児の負担が大きくなっている問題を解消するために、男性も家事や育児に協力的になれるような制度づくりが必要でしょう。

ぜひ貴社も本記事を参考に、女性の採用を強化すべく環境・制度整備を進めてみてはいかがでしょうか?