採用ブランディングとは?方法や進め方を徹底解説
人材の採用競争が増す昨今において、単に自社の求人情報を公開するだけでは、求める人材の採用が難しくなりつつあります。求める人材の興味・関心を喚起し採用につなげ、さらには入社後の長期的な活躍を実現する施策として採用ブランディングへの注目が高まっています。
そこで本記事では、採用支援事業に8年間従事してきた筆者が、採用ブランディングの概要やメリット・デメリットをお伝えすると共に、採用ブランディングの取り組み方や費用相場を解説します。
目次
採用ブランディングとは
本章では、採用ブランディングの概要と採用マーケティングとの違いを解説します。
採用ブランディングの概要
採用ブランディングとは、企業の採用活動におけるマーケティング戦略の1つであり、自社独自の魅力や価値を一貫したコンセプトとして発信し、共感を通じて自社のファンを増やす活動です。
事業成長や戦略を実現する上で欠かせない人材の採用を目的に掲げているだけではなく、自社をブランド化することで求職者に「この会社で働くことには価値がある」「この会社で働きたい」と思ってもらえるように啓蒙していく点が大きな特徴です。
採用マーケティングとの違いは?
採用ブランディング | 採用マーケティング | |
対象 | 求職者の他、 企業に関心を持つ一般の人々や転職潜在層、 将来の候補者も含む |
具体的に転職を検討し始めている人材 |
概要 | 企業や自社で働くことへの価値への イメージを高める施策 |
応募数を増やす、 応募者の入社意欲を醸成するなどの施策 |
戦略 | 自社が求職者に選ばれるためには どうあるべきかを考える取り組み |
自社の認知拡大や応募数増加など、 採用活動を優位に進められるようにする取り組み |
採用マーケティングとは、自社への応募数を増やしたり、応募者の入社意欲を醸成するための取り組みや施策のことを言います。採用ターゲットに対し、どのようにして自社の魅力を発信し、認知を高めていくのかを考える活動が採用マーケティングです。
一方、採用ブランディングは、自社や自社で働くことへのイメージや価値を高める施策です。自社が求職者に選ばれるためにはどうあるべきかを考える取り組みを採用ブランディングと称します。
つまり、採用ブランディングは、マーケティング活動に取り組む前段階となり、どんなに優れた採用マーケティングを実施したとしても、自社のブランド力が乏しい場合やコンセプトに一貫性がない場合、採用マーケティングの効果も薄れてしまうでしょう。
採用ブランディングのメリット
採用ブランディングに取り組むメリットとして、以下のような利点が挙げられます。
企業認知度の向上
採用ブランディングは、企業の認知度向上に寄与する取り組みです。
採用ブランディングは、活動を通じて自社のブランド力向上に向けて多角的に自社の魅力や情報を発信します。積極的に情報を発信することで、自ずと自社の情報を目にする求職者が増えるでしょう。
さらに多くの求職者に対し認知が広がれば、「働く価値がある企業かもしれない」「魅力的な会社である可能性が高い」と思ってもらえることも期待できます。求職者の興味・関心の喚起にもつながり、応募意欲も刺激されるでしょう。
質の高い人材の獲得
質の高い人材からの応募が増える点も採用ブランディングのメリットの1つです。
採用ブランディングは、自社の魅力や価値を1つのコンセプトのもと発信するため、求職者にとっても企業理解を深められやすい利点があります。
求職者が自社について深く理解できれば、求職者自身が企業にマッチする人材なのか判断できます。「自分の価値観とマッチしている」「目指すビジョンに共感した」と感じた求職者からの応募増加も期待できるため、自然に母集団の質も高まるでしょう。
採用コストの削減
採用ブランディングによって自社の価値が高まれば、外部サービスを利用しなくても応募者が集まり、採用にかかるコストも低減できるでしょう。
特に大手企業や老舗企業は、独自のブランド力を持つため、求人を公開するだけで多くの応募者が殺到するケースもあります。
採用ブランディングに成功すれば中小企業やベンチャー企業、スタートアップ企業でも同様の状態を作り出すことができます。
既存従業員のエンゲージメント向上
採用ブランディングは、採用成果の創出だけに留まる施策ではありません。既存社員のエンゲージメント向上にも寄与する施策です。
自社の魅力や価値が言語化され、多角的に情報発信されるため、既存社員は自社の魅力を再認識するキッカケを得られるでしょう。自分が勤めている企業や普段取り組む業務への社会的価値などへの理解がより深まることから、自社や業務への誇りが高まり、エンゲージメントの高い状態で仕事に取り組めるようになるでしょう。
採用ブランディングの進め方
ここでは、採用ブランディングの具体的な進め方を4つのステップで紹介します。
【ステップ1】ターゲットの設定
まずは採用ターゲットを設定しましょう。
採用ターゲットを定める際は、「25歳〜30歳前後」「営業職経験あり」といった属性に限った枠組みを設定するのではなく、趣味や家族構成、住まい、性格など、ペルソナと呼ばれる架空の人物像を設定することがポイントです。
ペルソナを設定することで、ペルソナ視点から見た時、どのような企業に魅力を感じるのかをイメージしやすくなるでしょう。
【ステップ2】自社の分析とコンセプトの設定
続いて、自社の分析を行います。
この時、前のステップで設定したペルソナからの視点を意識し、自社の魅力とペルソナが興味を持ちそうな項目をピックアップしましょう。その上でペルソナが興味・関心を示しそうな自社の魅力をベースに、一貫したコンセプトを考えます。
このコンセプトは、採用ブランディングの軸になります。自社のイメージと価値を同時に訴求できるコンセプトを考えてみましょう。なお、コンセプトを考える時は、自社の社員も共通の認識を持てるようにキャッチコピー化するのも1つです。キャッチコピー化すると、求職者の記憶にも残りやすくなるでしょう。
【ステップ3】情報を発信するプラットフォーム・媒体の選定
次に自社の情報を発信するプラットフォームや媒体を選定します。
採用ブランディングを目的に利用されているツールには、主に次のようなものがあります。
SNS(Facebook、Instagram、Xなど)
動画メディア(YouTube、TikTok など)
自社の採用サイト
採用イベント
ミートアップ
それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なるため、自社や採用ターゲットにマッチした方法を選びましょう。
【ステップ4】評価と改善
最後に今現在の活動を振り返り、改善に取り組みます。
活動を振り返る際は、応募者数や内定承諾数、オファーやスカウトの承認率を測定する方法や、自社を知ったきっかけや自社に対し興味・関心が深まった契機をヒアリングする方法もあります。
またSNSや自社の採用サイトを運営している場合は、サイトの訪問率やSNSやサイトからの応募率を測定するのも良いでしょう。
期待する効果が表れてない場合は、改善に取り組みます。ボトルネックを洗い出し、他社の成功事例と比較したり、A/Bテストを繰り返したりしながら、施策の改良を重ねてみてください。
採用ブランディングのデメリット
一方採用ブランディングには、次のようなデメリットもあります。
採用ブランディングに取り組む際は、メリットだけではなくデメリットも理解しておくことが大切です。
成果が出るまで時間がかかる
採用ブランディングは、運用直後から目に見える効果を期待できる施策ではありません。発信した情報が求職者の元まで届くのには時間がかかる上に、正しい方法・内容でなければ効果は表れません。
また母集団形成などにおいて質や量に変化を感じられるようになるまでは、半年〜1年以上かかることもあります。採用ブランディングに取り組む際は長期的かつ継続的な取り組みが必要になる旨を理解しておくことが肝要です。そして常にPDCAサイクルを回しながら、求職者にとって有益な情報や自社のブランディング化につながる情報の発信に努めましょう。
企業全体を巻き込んで取り組む必要がある
採用ブランディングの成功に向けては、既存社員の意識統一も不可欠です。どんなに採用担当者や企業が採用ブランディングに注力していたとしても、自社の社員が定めたコンセプトとは異なる自社の様子を口コミ投稿したり、ネガティブな評価を外部に発信しているようでは、期待する成果は見込めません。
採用ブランディングを通して発信している自社情報と現場の状況や価値観にギャップや違いが生じないよう、全従業員の認識を一致させる必要があります。ただし、無理に認識の統一を図ろうとすれば、社員のエンゲージメント低下や反感を買う恐れもあるでしょう。
採用ブランディングを推進する上では、社員のエンゲージメント向上やコンセプト周知に努めることも重要な取り組みとなります。
運用に工数がかかる
採用ブランディングは、運用に工数がかかる施策です。
自社の情報を1度発信して終わりというものではありません。また発信する情報もブランディングやターゲット視点を意識した内容でなければなりません。
他にも採用ブランディングにSNSを活用している場合は、炎上のリスクに備え、発信する情報の精査や管理も必要になるでしょう。応募者対応や面接、求人情報の公開など様々な業務を抱える採用担当者にとって、採用ブランディングは大きな業務負荷になると感じられてしまうこともあるでしょう。
消費者向けのブランディングと区分する必要がある
採用ブランディングの対象は、求職者や採用活動を控えた学生、「魅力的な求人があれば転職したい」と考える転職潜在層に該当する人材です。自社が販売している商品・サービスを購入する消費者を対象に実施するブランディングとは性質や訴求対象が異なることを理解しておきましょう。
採用ブランディングにかかる費用
採用ブランディングにかかる費用は、利用するプラットフォームや媒体、発信方法などによって大きく変動します。
ここでは、採用ブランディングに取り組む際に費用が発生する項目を紹介します。
SNSアカウント開設費
採用サイト制作費
採用ピッチ資料制作費
社員インタビュー記事の作成費
広告運用手数料
外部コンサルティングサービス利用費 など
SNSを活用する場合、無料でアカウントを開設できる媒体であれば、費用はかかりません。ただし利用するSNSによっては、プランによって利用コストが発生する場合もあるでしょう。
また自社の採用サイトを作る際に外部発注すると、サイト制作費がかかります。同様に発信する記事や情報の制作を外部に委託すると、その分コストがかかるでしょう。
さらに採用ブランディングについてのノウハウを持たない企業の場合、外部サービスに代行を依頼することもあるでしょう。その場合、代行費用やコンサルティング費用が発生します。
全て自社で完結できる場合は、費用を押さえられますが、その分工数と手間がかかります。反対に外部サービスの利用割合が増えると、コストがかさんでしまうでしょう。自社のリソースと予算とのバランスを鑑みながら、採用ブランディングにかかる費用を調整していきましょう。
採用ブランディングの成功事例
ここでは、VOLLECT社の「PRO SCOUT」が支援した、採用ブランディングの成功事例を紹介します。実際の事例を参考にすることで、採用ブランディング実施に向けたイメージを具体的に描くことができるでしょう。
株式会社StartPass様
~エンジニア採用支援を元にした採用ブランディング支援~
VOLLECT社の採用ブランディング支援を利用した株式会社StartPass様では、noteを活用した採用ブランディングを実施。
リファラル採用を中心に人材を獲得していた同社では、これまで意識的に採用ブランディングに取り組んでいませんでした。しかし事業拡大に向け、採用ブランディングの必要性を感じ、VOLLECT社が提供するサービスの利用を開始しました。
数ある支援サービスの中でもVOLLECT社を選んだ理由は、エンジニア採用の知見があったから。採用ブランディングは、求職者視点のブランド価値を高める施策になるため、ターゲットがどのようなコンテンツを好むのかを熟知しているか否かは、施策の成否を大きく左右します。実際に仕上がった記事は、代表や役員たちの人となりを知れる内容になっており、スカウトメールを送付する際にも活用しているとのこと。
組織としては、全員採用が自然にできる文化が根付いており、今後は各メンバーが自ら情報を発信し、社員全員で採用ブランディングを推進する体制を目指しています。
ノウハウを持つPRO SCOUTを利用したことで、採用ブランディングの基盤形成が叶った事例と言えるでしょう。
採用でお悩みならPRO SCOUTにお任せください!
PRO SCOUTは、企業様の採用成果を創出するための支援を提供するダイレクトリクルーティングの実行支援サービスです。
戦略策定やスカウト文面/求人票作成、候補者選定、配信、数値振り返り、日程調整など、採用支援をノンストップで提供。業界トレンドや他社事例をもとに、「採用決定」まで伴走する支援が評価され、これまで700社以上に選ばれてきた実績を誇ります。
採用ブランディングに関する困りごとや悩みをお持ちの企業様や採用担当者様も、ぜひPRO SCOUTの利用をご検討ください。PRO SCOUTであれば、蓄積されたノウハウのもと多角的な支援を通じ、自社に適した採用成果の創出を実現できるでしょう。
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【まとめ】採用ブランディングを強化して認知度をアップ
採用ブランディングは、自社の価値や魅力を発信しブランド力を高め、ターゲットの応募・入社意欲を喚起・醸成する施策です。採用ブランディングに取り組むことで、求職者に対してはもちろん、今後就職活動に取り組む学生やその保護者、転職潜在層など様々な層に対し自社の認知を広げられるメリットがあります。
採用競争の激しさが増す採用市場においては、中長期に渡り自社の魅力を発信し続ける取り組みも不可欠になりつつあります。しかし自社のリソースだけでは、採用ブランディングに取り組むことが難しいと悩む企業様や採用担当者様も少なくないでしょう。
自社だけで完結が難しいと感じる時は、PRO SCOUTをはじめとする外部サービスを利用するのも1つです。採用ブランディング導入・運用に対してノウハウを持つ外部サービスを活用することで、多くの企業の採用ブランディングを成功に導いてきたナレッジをもとに、施策推進に向け強固な基盤を形成できるでしょう。
採用成功に向け、採用ブランディングの実施・強化も視野に入れながら採用活用に取り組みましょう。
投稿者プロフィール
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採用系コンサルタントとして企業の採用サポート・採用戦略構築・採用ノウハウの提供を行いながらライターとしても活動中。
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。
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