スクラム採用とは?メリット・デメリットや成功事例を紹介
転職市場が激化する中で注目を集めている「スクラム採用」。現場の従業員が一丸となって採用活動を行い、優秀な人材の採用を目指す採用手法です。
本記事では、スクラム採用について押さえておきたいポイントやプロセスなどを解説します。
全社を挙げて採用活動を強化していきたいという企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
スクラム採用とは?株式会社HERPが提唱した概念
スクラム採用とはHERP社が発案した、従業員が一致団結しチームで採用に取り組む形の採用手法です。
従来の採用活動では、人事・採用担当者が求人媒体選定、面接スケジュール調整、面接の実施、オファー面談などの業務を担当していました。
しかし、転職市場の競争が増すにつれ人事・採用担当者の業務が激化し、候補者と現場が求める人物像が乖離してしまうなどの問題が発生しています。そこで、採用権限を現場の従業員に委譲し、現場の従業員が主体となって採用活動に取り組む「スクラム採用」が注目されています。
関連記事:HERP Hire(ハープハイヤー)の特徴や料金・事例を解説!機能不足って本当?
スクラム採用の特徴
スクラム採用にはどういった特徴があるのか見ていきましょう。
採用権限を現場の従業員に委譲
採用権限を現場の従業員に委譲することで、今まさに現場が求めている人材に的確にアプローチすることができます。
ただし現場の従業員は採用活動の専門家ではないため、効率よく採用が進むように人事・採用担当者がサポートする必要があるでしょう。
成果の可視化が容易に
採用活動を通して得られた数値や成果を徹底的に「見える化」し、定期的にデータを振り返ることで効果的な採用を行うことができるでしょう。
スクラム採用が成功すれば当該部署の成果が上がり、採用に関わった社員の業務負担の軽減や分散にもつながります。
人事・採用担当はプロジェクトマネージャーに
スクラム採用における人事・採用担当者の役割はPM(プロジェクトマネージャー)です。
採用活動のプロフェッショナルとして採用に関するノウハウを現場従業員に伝えたり、採用活動を行いやすい環境作りに徹します。
スクラム採用が注目される背景
スクラム採用はなぜ注目されるようになったのでしょうか。
採用のチャネルが増えたから
転職活動市場の活性化により、採用のチャネルも求人メディア、人材紹介会社、SNSやブログなど急激に多様化しています。
企業にとってどのチャネルを使用し、どのように候補者を発掘・アプローチするかは非常に重要な選択となっています。
情報発信や情報収集の方法が変化しているから
採用チャネルが増加したことにより、求職者側が受け取る情報も増加しています。
求職者はこうした情報の中で仕事内容や条件だけでなく、社員の雰囲気や企業文化といった要素を転職活動の際に参考にするようになっています。
専門的な人材の需要が増加しているから
ジョブ型雇用が広まる中で、採用選考ではその分野における専門的な知識・経験があるかどうかを見極めることが重要となります。
現場で働いているわけではない人事・採用担当者だけではそうした専門的スキルを見極めることは難しいのが現状です。
転職潜在層にアプローチする必要性が高まったから
転職市場における競争が激しくなるにつれ、企業は転職活動中の候補者だけでなく、転職潜在層へのアプローチが必要となりました。
優秀な人材であるほど転職市場には出てこず、リファラル採用やSNSなどを駆使して個人単位でプロフェッショナルなネットワークを築くことが必要となっています。
スクラム採用のメリット
様々な採用チャネルへの対応が可能
現場の従業員が様々な採用チャネルの中から現場のニーズに最も合ったチャネルを選定し、入社してほしい候補者を発掘したり、直接アプローチしたりすることが可能となります。
自社に合った人材を採用できる
現場の社員が直接採用活動に参加することで、より具体的に業務内容の説明やどのような人材を求めているか伝えられるようになります。
自社に合った人材を選べる可能性が高まるのはもちろん、候補者側が企業に求めることとのミスマッチを防ぎやすいのもメリットです。
優秀な人材とマッチできる可能性が高まる
業界の識者と繋がりのある現場の社員が採用に参加すれば、優秀な人材とのマッチングが叶うこともあるでしょう。
また、こうしたネットワークを通して転職潜在層のプールを築いておけば、採用が必要になったタイミングですぐに手を打つことができるようになります。
採用担当者の業務負荷を減らせる
採用チャネルの増加・ジョブ型雇用・転職者の意識の変化などにより、採用活動は複雑化しています。使用する採用チャネルが増えれば増えるほど、採用担当者の負担が増加することになるでしょう。
しかし、スクラム採用を取り入れることで採用担当者はPMに徹し、採用活動の全体をマネジメントする側に回ることになります。マネジメント能力は問われますが、単純に作業の量という点ではいくらか負担が軽減されるでしょう。
スクラム採用のデメリット
現場社員の業務負荷が増える
通常業務に採用活動の工数が加わることで、現場社員の業務負荷が増えます。
採用活動のせいで通常業務ができないとなってしまっては本末転倒です。採用担当者はPMとして通常業務と採用活動のバランスを取り、現場の従業員が採用活動のせいで通常業務に支障をきたすことがないように配慮をすることが重要となります。
全社での意思統一が困難な場合がある
現場の従業員によって採用活動のコミットメント具合に差が出ることがあります。また、会社の規模が大きく部署が多ければ、全社で意思のすり合わせを行うのが難しい場合もあるでしょう。
また、業務負荷が増えることで従業員から不満の声が上がることも予想されます。スクラム採用を実践する際は現場の従業員の声をよく聞き、会社体制にあったスタイルを取り入れることが重要です。
管理コストが上がる場合がある
採用活動の数値を可視化したり、候補者の個人情報を複数の従業員が取り扱うことで情報管理コストの増加につながります。
また、情報漏洩を防ぐためには採用に関わる従業員に対しての情報管理に関するトレーニングや、候補者に対してのコンプライアンス研修を行う必要があります。
外部の採用管理ツールなどを導入し、情報ポータルを一元化することを検討しましょう。
採用担当者のマネジメント能力が求められる
採用担当者の役割が、現場での採用活動からPMとしてのマネジメントに変わることで従来とは異なるスキルが要求されます。
また、採用業務におけるルールを確立して、現場の従業員が効果的に採用活動に取り組めるような枠組みを整えるのも業務の一環です。
スクラム採用のプロセス
ここでは、具体的にスクラム採用をどのように進めていくのか確認していきましょう。
採用計画の策定
まず、採用の目標と必要な人材の要件を明確にします。どのポジションが必要で、そのためにどのようなスキルや経験が求められるかを明確に決めましょう。
現場社員への共有
スクラム採用では現場の社員の協力が不可欠です。基本的にはどの部署も日々の基本業務が忙しいはずなので、いきなり「採用権限を委譲します」と言われても困惑するだけでしょう。
スクラム採用の意味やメリット、どういった業務をお願いしたいのかなど、具体的な内容を現場の社員に伝えるようにしましょう。
権限の委譲
採用活動の各フローを最適な社員に委譲します。一人の現場社員を採用専任にする場合もあれば、初期の候補者の選定や面接など、それぞれのステップを異なる社員が担当する場合もあるでしょう。
採用活動の実施
現場の社員が中心となって求職者との面接や評価を行います。採用担当者は面接を担当する現場社員と質問内容や評価基準などのすり合わせを行います。
慣れるまでは採用担当者+現場社員の2人体制で面接に臨む場合もあるでしょう。
スクラム採用を成功させるためのポイント
経営層に関心を持ってもらう
現場の従業員に採用活動に協力してもらうためには、経営層のコミットメントが必要不可欠です。
経営層が採用に積極的に取り組んでいる様子を見て、「自分も採用活動に参加してみようかな」と思うようになる従業員もいるでしょう。
また、通常業務に加え採用に関する業務が加わるため、採用担当者は経営層と相談し、採用活動が人事評価につながるような枠組みを作ることも必要となるでしょう。
参加・発信を気軽にできる環境づくりをしておく
スクラム採用では経営層から現場社員まで全員が採用に参加することとなります。
社員を巻き込むためには採用活動に参加することへのハードルを下げる必要があります。また、社員のSNSやブログでの発信にも協力してもらえるよう、発信におけるガイドラインを設けることも効果的です。
採用に関する情報を一元管理する
複数の社員が採用に関する情報にアクセスすることとなるため、採用管理ツール(ATS)などの外部ツールを導入し、情報を一元管理することも重要です。システム上で情報を管理することで閲覧権限などを一括でカスタマイズできたり、情報漏洩を防ぐことができます。
採用担当者が直々に現場へ権限を委譲する
スクラム採用では採用要件の設定や、採用チャネルの選定、候補者の評価を行う権限を現場の従業員に譲渡しますが、プロである採用担当者が主導することで、スムーズな権限の委譲が可能となるでしょう。
採用担当者は現場の従業員が採用活動を実施することができるよう、権限の委譲後はサポート役に徹することを心がけます。
スクラム採用向けツール
スクラム採用を円滑に行うための採用管理システムを3つ紹介します。
HERP Hire
「スクラム採用」という言葉を定義した株式会社HERPが提供するシステムです。HERP Hireの特徴は、20以上の求人媒体と自動連携されているところです。
応募情報が各媒体から自動で追加され、一元管理が可能となっています。また、slackやChatworkとの連携機能もあり、応募通知や選考依頼、結果まで現場社員がリアルタイムにキャッチすることができます。
さらに採用進捗のデータもリアルタイムで更新されるため、データを元に迅速な意思決定を行うことができます。
HRMOS(ハーモス)採用
HRMOS(ハーモス)採用管理は株式会社ビズリーチが提供する採用管理システムです。HRMOS(ハーモス)採用管理の特徴は機能数の多さです。
複数の求人媒体との連携はもちろん、採用進捗を管理するレポート機能では人材紹介会社ごとの選考通過率を可視化させるなど細かいレポートを作成することができます。
また、リファラル採用の領域にも強みを持っており、現場の従業員が見つけてきた転職潜在層の情報もデータベースに登録できる機能があります。
Wantedly
Wantedlyはウォンテッドリー株式会社が提供する、働き方や企業のビジョンやミッションなどを重視する候補者とのマッチングを重視した採用サービスです。
SNSとしての機能が充実しており、求人を掲載する際、そのチームで働く現場の従業員のWantedlyアカウントを載せることができます。
またWantedlyに登録しているユーザーはWantedly上でブログを執筆したり、SNSと連携させることができるため、現場の従業員と求職者がより近い形で接点を持つことができます。
スクラム採用を成功させた事例
freee株式会社
SaaS型クラウドサービスを提供するfreee株式会社は、創業当初からスクラム採用を導入しており、社員全員が採用活動に積極的に参加しています。現場社員が直接採用活動に関与することで、業務内容に適した専門性の高い人材を効率的に採用できる体制を整えています。
株式会社メルカリ
フリマアプリを運営するメルカリは、創業時からリファラル採用とスクラム採用を積極的に活用しています。全社員が採用プロセスに関与する文化があり、現場社員が主体的に面接や選考に参加することで、企業文化にマッチした人材を効果的に採用しています。
株式会社PR Table
PR Tableは、全社員が採用活動に参加することを奨励しています。面接のフィードバックや選考プロセスなど、オファー時の給与を除くすべての情報を社員全員にオープンにすることで、透明性を高め、迅速な意思決定を可能にしています。また、Slackを活用して情報共有を円滑に行い、採用プロセスの効率化を図っています。
Fringe81株式会社
Fringe81では採用活動をプロジェクト化し、人事担当者がプロジェクトマネージャーとして機能することで現場社員の負担を軽減しています。全社員が採用活動に積極的に参加できる環境を整えることで、ミスマッチを防ぎ、効率的な採用活動を実現しています。
採用でお困りならPRO SCOUT
「PRO SCOUT」では、700社以上の実績をもとにダイレクトリクルーティングを中心とした採用ご支援が可能です。
エンジニア採用案件には元エンジニアが担当するなど、各領域のプロフェッショナルが業界のトレンドを把握しながら他社事例をもとに採用をご支援します。月額10万円〜と料金もリーズナブル。
スカウトを送る時間が割けない、スカウトで採用決定を出したい、などのご希望がありましたら、ぜひ下記より詳細をご覧ください。
まとめ
スクラム採用は現場の従業員が一致団結し、チームで採用活動に取り組む形の採用活動です。スクラム採用を成功させるためには、現場の従業員の理解、採用活動の実践、採用担当者のPMとしての役割が重要となります。
この取り組みを通して、企業は現場の従業員が求める人物像に的確にアプローチすることができ、ミスマッチのない採用を行うことができます。
自社の状況、社員の意識などに沿ってカスタマイズしながらスクラム採用を導入してみてはいかがでしょうか。
投稿者プロフィール
- 「ダイレクトリクルーティングの教科書」著者。日経トレンディや東洋経済への寄稿も果たす。新卒でパーソルキャリア株式会社にてクライアントに対して採用コンサルティングに従事。その後、外資系コンサル企業の採用支援をする中でダイレクトリクルーティングの魅力に気づき株式会社VOLLECTを創業。スカウト採用支援実績は500社超。