採用CXを強化するメリットや向上させるためのポイントを詳しく解説

採用

採用CXとは、採用フローにおける体験設計のことです。

採用難である昨今、企業は候補者に対し「この企業に入りたい」「応募したい」と思ってもらえるような対策が求められています。

その一つが採用CXです。

本記事では、採用CXとは何か、メリットや採用CX向上のためのポイントを解説します。

「採用力を強化したいけどどうすれば良いかわからない」「採用活動において新たな打ち手が必要だけど思いつかない」と悩まれている採用担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

採用CXとは?

採用CXとは、企業のファン獲得や採用力向上を目標とした採用フローにおける体験設計を意味します

CXとは「Candidate Experience」の略で、「候補者体験」を意味します。採否に関わらず、候補者にとって価値提供できる体験を提供するのが採用CXなのです。

企業の選考を受け終えた後、「受けなければよかった。こんな会社嫌いだ」と思ったこともあれば、「この企業を受けて良かった」と思ったこともある経験は誰しもあるでしょう。

後者の「受けて良かった」と思える体験を候補者に与えることが体験設計です。

採用CXを強化するメリット

採用CXはまだ日本では浸透していませんが、海外では積極的に取り入れられている考え方です。なぜ海外では積極的に取り入れられているのでしょうか?
本章では、採用CXのメリットを解説していきます。

企業イメージの向上

採用CXに取り組む一つのメリットとして、企業イメージの向上が挙げられます。

今や、企業は「候補者を選ぶ」時代ではなく「候補者に選ばれる」時代です。さらに、インターネットの普及により会社の評判を口コミサイトに書き込む候補者も多くいます。口コミを求職活動の際に参考にする候補者も多く存在するのも事実です。

WEBリスクコンサルタント事業を展開する株式会社エフェクチュアルが行った調査※によると、就職・転職時に企業情報を調べると答えた人のうち、76.7%もの人が「口コミサイト」で調べると答えました。


引用:求職者が就職活動時に信頼する情報源は?オンライン上の企業情報に関する信頼性について、エフェクチュアルとグローバルウェイが合同調査!|株式会社エフェクチュアル

コミュニケーションの質改善など採用CX向上に取り組むと、複数社を吟味している候補者の企業へのイメージアップにつながります。

その結果、志望度も上がる可能性が高くなるのです。

採用歩留まりの改善

採用CXの向上は、歩留まりの改善にもつながります。

採用における歩留まりとは、採用の各過程に進んだ人数の割合のことです。数値が低いと、効率の悪い採用活動を行っていることを意味します。

通過者が少ないことはもちろん、選考の途中辞退や内定辞退も歩留まりの低下につながるのです。

採用CXでは、各選考ステップにおいて候補者にとって価値のある体験を提供します。その体験が良いものであればあるほど、候補者の志望度は上がり、途中辞退や内定辞退が減るのです。

企業のファンづくりに寄与するような体験を設計することで、歩留まりの改善を期待できます。
関連記事:採用における歩留まりとは?平均値や改善方法について解説

新入社員の定着率向上

採用CX向上により、自社への理解やエンゲージメントが高まります。その結果、ミスマッチが減り、早期退職などが減り定着率の向上が見込めます。

厚生労働省の調査によると、近年の早期離職率は高卒者が36%前後、短大卒者が42%前後、大卒者が31%前後となっています。

引用:若手人材の早期離職の実態~調査結果から見えた早期離職検討者と企業に必要な考え方とは~

また、マイナビの調査によると、社会人1年目の新入社員に転職の意向を聞いたところ、具体的な行動は起こしていないものの、意向はあると答えたのは68.2%と高い割合でした。

引用:若手人材の早期離職の実態~調査結果から見えた早期離職検討者と企業に必要な考え方とは~

このように、現代は転職することが当たり前の時代であり、早期離職が多いのが現状です。

このような事象を防ぐためにも、採用CX向上は企業にとって取り組むべき施策なのです。

競合他社に対する優位性の確保

採用CXに取り組めば、採用競合に対する優位性が確保できます。

株式会社リクルートマネジメントソリューションズが2024卒を対象に行った入社の決め手に関する調査において、1位は「自分のやりたい仕事ができる」の15.1%、2位は「社員や社風が魅力的である」の9.2%でした。

引用:「2024年新卒採用 大学生の就職活動に関する調査」の結果を発表

重視されると思いがちな「福利厚生や給与など制度や待遇が魅力的である」は8.3%と、意外に低い結果です。

以上から、若手は自身のやりたいことができる風土なのか、良い社風なのかを重視していることがわかります。
採用CX向上に取り組むと、自社でできることを深く理解してもらったり、社風を理解してもらえたりする可能性が高くなります

その結果、採用競合よりも給与や福利厚生の内容が弱かったとしても、優位に立てる可能性があるのです。

採用CXを向上させるためのポイント

ここからは、採用CXを向上させるためのポイントを詳しく解説していきます。

採用ペルソナの見直し

1つ目のポイントは、採用ペルソナを見直すことです。

採用ペルソナとは、自社の求める人材を「実在する1人の人物」に具現化したものです。

年齢、居住地、出身大学、保有スキルや経験してきた職種、何を重要視するかという価値観までを具体的に列挙し、人物を作り上げます。

採用ペルソナが明確であれば、そのペルソナの価値観や属性に合った体験の提供が可能になります。
逆に、ペルソナが不明確だと適切な体験を設定することができません。

採用ペルソナは1つだけでなく、複数設定すると良いでしょう。その方がより幅広い体験の立案ができます。

候補者との接点の洗い出し

2つ目のポイントは、候補者との接点を洗い出すことです。

接点の洗い出しとは、候補者が自社を認知、内定・入社に至る段階で、どのような接点があるのかを洗い出すことです。この接点は、「タッチポイント」とも呼びます。

また、その接点において自社がどのような対応をしているのかも洗い出しましょう。複数の採用担当者がいる場合は、それぞれのステップで異なった対応をしていないか確認することも重要です。

担当者により異なった対応をしていると、候補者は違和感を覚え、不信感を抱くことにつながるからです。

今一度社内の目線を合わせる作業を行いましょう。

採用管理システムの活用

3つ目のポイントは、採用管理システムを活用することです。候補者とのコミュニケーションを重視する採用CX向上施策では、それなりの工数がかかります。さらに、これらは自動化やマニュアル化できるものではなく、臨機応変に対応する必要があるため、人でなければ対応できません。

一方で、下記の採用業務は採用管理システムで自動化ができます。

・採用媒体(求人広告など)への募集要項の公開や更新の連絡
・人材紹介会社への募集依頼、選考フィードバック
・応募者への応募受付通知、サンクスメール
・応募者・社内への面接日程調整連絡
・応募者への選考結果通知
・関係者への応募者情報共有 など

また、採用管理システムでは候補者情報の一元管理などができるため、共有や連携がスムーズになるメリットがあります。

頼れるツールがある場合は積極的に活用し、候補者体験向上につながる、「人でなければならない業務」に時間を割くようにしましょう。

具体的な採用CX施策

採用CXでは、それぞれの採用選考フェーズごとのタッチポイントに合わせた効果的な価値ある体験を提供することが重要です。具体的な採用CXの施策を、採用選考フェーズ別に紹介します。

認知

候補者が企業を認知するフェーズのタッチポイントは下記です。

・求人票
・自社ホームページ
・採用サイト
・プレスリリース
・カジュアルイベント・交流会
・YouTubeなどの採用動画
・SNS など

認知の段階での目標は、候補者に「楽しそうな会社だな」「働きやすそうな雰囲気だな」と自社に好印象を持ってもらうことです。

そのためには、自社のリアルな日常を発信したり、自社の魅力を全面的にアピールすることが重要です。上記のタッチポイントをうまく使って、自社の社員に魅力を語ってもらったり、採用サイトをターゲットに合わせたUX/UIにしたりしましょう。

応募

・候補者が企業に応募するフェーズのタッチポイントは下記です。
・求人票
・スカウトメール
・SNSのダイレクトメッセージ
・人材紹介会社からの紹介
・知人からの紹介(リファラル)
・インターンシップ
・カジュアル面談
・応募フォーム など

応募段階での目標は、候補者に良い印象を与え、自社の信頼度を上げることです。

多くの候補者は他の企業にも応募しています。その採用競合に負けないためにも、誠実で早いレスポンスを心がけましょう。

企業からの返信が「冷たい、失礼だ」と感じるものだと候補者の印象は悪くなり、信頼も失われます。また、レスポンスの遅さは候補者を不安にさせたり、不信感を抱かせます。

また、インターンシップでは自社で働くとどのような成長ができるのか、どのようなスキルを習得できるのかが具体的にイメージできるプログラムを用意しましょう。「2‐4.競合他社に対する優位性の確保」にて紹介したように、入社の決め手は「自分のやりたい仕事ができる」が1位となっているので、これらを確認できる体験を提供することも重要です。

選考

選考フェーズでのタッチポイントは下記です。

・受付時の対応
・オフィスに入ったときの社員の対応・挨拶
・オフィスの雰囲気・内装
・面接時のアイスブレイク
・面接時の面接官の対応
・面接時の質問内容
・面接時の雰囲気
・候補者の質問に対する受け答え

選考段階での目標は、ずばり入社意欲を高めることです。

受付時の対応から、面接室に入るまでも気を抜いてはいけません。候補者は社員の一挙手一投足を見ています。

また、オフィスの清潔さやおしゃれさも重要なポイントです。

就活生505名を対象に、労働環境(人・オフィスなど)と労働条件(賃金・労働時間など)のどちらを重要視するかの質問には約6割が労働環境(人・オフィスなど)と回答しています。

「オフィスは企業選びにおいて重要視していますか?」と質問したところ、約3割が「かなり重要視している」5.5割が「少し重要視している」と回答しています。

引用:株式会社アーバンプラン「就活生の企業選びの基準と採用に向けた企業側の対策」

これより、オフィス環境も企業選びのポイントとなりますので、オフィスへの投資を惜しまないことも重要です。トイレを使用する可能性もあるので、トイレの清潔さも同様に重要です。

面接時には、面接官が高圧的ではないか、質問内容が不適切なものでないか、和やかな雰囲気の中で進んでいるかなど、注意を配るべきポイントは多々あります。

日頃から挨拶をするなどの基本的な教育や、面接官のトレーニングを積んでおくと良いでしょう。

内定〜入社

内定〜入社フェーズのタッチポイントは下記です。

・内定通知
・条件交渉
・内定者フォロー
・入社前説明
・社内イベント参加
・内定者研修

内定〜入社段階での目標は、内定辞退をされないことです。せっかく内定承諾をされたものの、内定辞退になってしまうケースは少なくありません。優秀な候補者であればあるほど、その可能性は高まります。なぜなら、そのような候補者は複数社から内定をもらっている場合が多いからです。

実際、就職みらい研究所の調査によると、ここ3年間、新卒採用の内定辞退率は、なんと60%以上です

卒業年 内定辞退率
2022年卒 61.1%
2023年卒 65.8%
2024年卒 63.8%

参照:就職プロセス調査(2023年卒)|就職みらい研究所
就職プロセス調査(2025年卒)|就職みらい研究所

内定辞退を防ぐためには、丁寧な内定者フォローが欠かせません。とくに新卒採用の場合は、内定出しから入社までの期間が長いです。自社への入社のモチベーションを持ち続けてもらえるよう、「自分は大切にされている」「期待されている」と感じてもらえるようなコミュニケーションを取りましょう。

長期的なインターンシップを実施したり、現役社員との懇親会の場を設けたりすると効果的です。

単発ではなく、継続的に接点を持ち続けることがポイントです。

関連記事:内定後の辞退の割合は?新卒と中途の場合に分けて解説

採用CXを強化して人材確保に至った事例

ここからは、採用CXを強化して人材確保に至った事例を紹介します。

株式会社プレイド

株式会社プレイドは、データによる本質的な課題の解決や、価値の創造を支援する企業です。具体的には、CX(顧客体験)のプラットフォーム「KARTE」や、データを活用した新規事業創出や既存事業の変革を行う「プロフェッショナルサービス」を展開。Google社から出資を受けている国内でも数少ない企業であり、2020年にIPO後も成長を続けています。

同社は、CXサービスを展開していることもあり、採用面でも候補者に寄り添った施策を実施しています。

例えば、面談前に候補者にアンケートをとり、聞きたい内容や温度感をあらかじめ把握する工夫を行っています。企業が伝えたい内容だけでなく、候補者のニーズに応える面談を行いたいという理由からです。

さらに、候補者が話してみたい社員がいればカジュアル面談や会食をセットするなど、まさに「一人ひとりの候補者に合わせた」採用CXを体現しています。

これは、経営層が採用に協力的であるがゆえに実現できているそう。社内の協力体制が整っているため、スムーズに現場を巻き込んだ採用活動が行えているとのことです。
参考:【株式会社プレイド様】自社採用でも体験の向上を追求!ダイレクトリクルーティングの成功法

ラクスル株式会社


ラクスル株式会社は、印刷・集客のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」、物流のプラットフォーム「ハコベル」、広告のプラットフォーム「ノバセル」の3事業を展開する企業です。

同社はダイレクトリクルーティングを通しアプローチした人材へ、当初スカウトしたポジションとは異なるポジションでのオファーに至った例があります。

これは、組織状況や本人のキャリアの志向性を踏まえた提案でした。

さらに同社は、「採用オーナー制」という制度があります。採用オーナー制とは、採用担当、事業部付のHRBP、そして採用ポジションに責任を持つ採用オーナー(入社者の上司になる現場社員等)の3名が並走しながら採用を行う体制をとることです。

候補者と一度面談をしてみて、空いているポジションにフィットしない場合、採用担当者だけの判断だと不採用としてしまう場合があります。しかし、採用担当者だけではない目線が入ることで必要であれば、「新たなポジションの提案や立ち上げを行うべき」といった判断をしているのです。

このような柔軟な採用体制により、候補者のことを第一に考えた採用CXを実現しています。
参考:【ラクスル株式会社様】3年に渡るPRO SCOUT利用で得られた的確なアドバイスと信頼関係

パーソルキャリア株式会社


パーソルキャリア株式会社は、「doda」などを運営する大手人材総合企業です。

同社も、積極的に採用CXに取り組んでいる企業の一つです。

カジュアル面談では、候補者が「パーソルキャリアの面談に来てよかった」と思ってもらえることを心掛けています。自社をアピールするだけではなく、キャリアに悩んでいる候補者の場合にはキャリア構築について提案したり、新たな気づきになるようなアドバイスをしたりと、カウンセリング的な面談を行うこともあるそう。これは、入社するか否かに関わらず、面談を通じてメリットを感じてもらいたいからです。

また、リクルーターによる面談毎のフォローも徹底しています。カジュアル面談後に、候補者に電話し、何かもやもやしていることがないかヒアリングしたり、次回選考のアドバイスをしたりと、キャリアアドバイザーに近いことを行っています。そうすることで、リクルーターは味方だと認識してもらい、信頼性の向上や心理的負荷の軽減を図っているのです。

このように、候補者に寄り添うことで、採用CX向上に取り組んでいます。
参考:【パーソルキャリア株式会社様】ダイレクトリクルーティング経由で継続して高い受諾率を実現!人材会社だからこその圧倒的工夫を紹介

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まとめ

今回は、採用CXとは何か、そのメリットやポイント、具体例を紹介しました。

採用CXとは、企業のファン獲得や採用力向上を目標とした採用フローにおける体験設計のこと。

少子高齢化が進み有効求人倍率が上がっている昨今、企業は候補者を「選ぶ立場」ではなく「選ばれる立場」です。選ばれるようになるには、候補者の目線に立ち、候補者の動機付けとなる施策が必要なのです。

そのためには、採用ペルソナの見直しや候補者との接点を洗い出し、その接点ごとに適切な体験設計をする必要があります。

今回紹介した具体的な施策や成功事例を参考に、ぜひ貴社も採用CX向上に取り組んでみてはいかがでしょうか?

投稿者プロフィール

大久保 さやか
大久保 さやか
SIerにて中途エンジニア採用を経験。また、リファラル採用支援サービスを提供する企業での従事経験もあり、リファラル採用領域の知見を持つ。