カルチャーデックとは?作成する意味や企業の成功事例を紹介

カルチャーデックとは、企業の文化や価値観、ビジョン、ミッション、行動指針などをまとめた資料のことを指します。近年、このカルチャーデックを採用活動に用いたり、人材の流出防止のために活用したりする企業が増えつつあります。

そこで今回は、採用支援事業に8年間従事してきた筆者が、カルチャーデックを作るメリットや作り方の手順、カルチャーデックを活用している企業の成功事例などを解説します。

カルチャーデックとは?

画像引用:株式会社Hogetic Labカルチャーデック

カルチャーデックとは、企業が掲げる理念や価値観、カルチャーなどを言語やイラストにまとめた資料やツールのことを指します。

社員に共有することで、社員の想いやビジョンが同じ方向を向きやすくなります。その結果、社員のモチベーションやエンゲージメントが高まったり、企業が創業時から大切にしている風土や文化が浸透したりといったメリットが期待できます。

また、採用活動時に社外にカルチャーデックを示すことで、求職者に対して自社の文化や理念、カルチャーなどを伝えられます。その結果、ミスマッチを防ぎ、早期離職の防止や定着率の向上に寄与することも期待できるでしょう。

カルチャーデックを作るメリット

企業がカルチャーデックを作ることで得られるメリットは、次の通りです。

企業文化の明確化

カルチャーデックを作成することで、企業の価値観やビジョン、行動指針を体系的に整理・表現し、内部・外部問わず企業文化を明確に示せるようになります

企業文化が明確になることで、企業内で一貫性のある文化が醸成され、社員全員が共通の方向を向いて業務に取り組めるようになります。また、外部に対しても企業の魅力や独自性を伝えやすくなり、採用ブランディングに寄与することにも期待できるでしょう。

採用活動におけるミスマッチ防止

Prevent mismatch

採用活動にカルチャーデックを活用すれば、企業の文化や理念、価値観を求職者に示せるようになります。求職者は企業が公開しているカルチャーデックを確認することで、自分がその企業にマッチしているかを判断できるでしょう。

自ずと自社のカルチャーや理念に共感する人材からの応募に限られてくるため、採用活動におけるミスマッチ防止への効果も期待できるでしょう。

既存社員の士気向上

カルチャーデックを作り、既存社員に企業のビジョンや文化を共有することで、社員の一体感が高まります。

その結果、既存社員の士気が向上し、業績や生産性が向上する、貢献意欲が高まるなどの副次的な効果が表れることもあるでしょう。

カルチャーデックの作り方

本章では、カルチャーデックの作り方について、4つの手順に沿って解説します。

【STEP1】目的を明確にする

カルチャーデックを作る前に、まずカルチャーデックを作る目的を明確にしましょう。
「社員の一体感を高めたい」「採用活動におけるミスマッチを防ぎたい」など、カルチャーデックは活用する目的に応じて内容や表現も変わります。

カルチャーデックを作る目的を明確にすることで、目的に対して有効性が期待できるカルチャーデックに仕上がるでしょう。

【STEP2】内容の整理

次に、カルチャーデックに含める内容を整理します。カルチャーデックに含まれる主な項目は次の通りです。

・企業文化
・理念・価値観
・行動指針
・ビジョン
・ミッション など

記載する項目や内容を整理し、作成目的に合わせて各情報をわかりやすくまとめましょう。
この時、単に理想論やスローガンに終始しないように留意しましょう。具体的にどのような行動や思想が期待されるのかが理解・伝わるような内容に仕上げることがポイントです。

【STEP3】ブランディングに合わせたデザインの決定

カルチャーデックが企業のブランドやイメージと一致するよう、ロゴやカラー、フォントなどを工夫し、一貫性のあるデザインに仕上げましょう。
視覚的な情報も盛り込むことで、企業やカルチャーデックの印象が残りやすくなります。また社員にとっても「自分たちの企業だ」と親しみを感じられるでしょう。

【STEP4】社員への共有

カルチャーデックが完成したら、社員に共有します。
単にカルチャーデックを公開したり説明したりするだけでは、十分な理解を得られない可能性があります。
そのため、カルチャーデックを共有する際は、社員全員が自社のカルチャーデックをしっかり認識し、日々の行動や業務に落とし込めるよう、カルチャーデック作成の目的を一緒に伝えましょう。

カルチャーデック作成時の注意点

ここでは、カルチャーデックを作成する際に留意したい注意点を紹介します。

社員の声を反映する

カルチャーデックは、企業文化や価値観を示すだけでなく、社員全員が共感し、体現できるものでなければなりません。そのため、経営層が思い描く理念や代表の考え方だけでなく、現場の社員の声を取り入れることも大切です。

現場で働く社員の視点や経験が反映されていないと、カルチャーデックが実態と乖離し、形だけのものになる恐れがあります。

作成時には、アンケートやヒアリングなどを通じて社員の意見を収集し、社員全員が共感できるカルチャーデックに作り上げることがポイントです。

内容はシンプルにわかりやすく

カルチャーデックを作成する際は、専門的な用語や複雑な表現は避け、誰もが理解できる言葉やシンプルな表現を意識しましょう

社員が直感的に共感できるシンプルでわかりやすい内容にすることで、組織全体に浸透しやすくなるでしょう。また、社外に公開する際も誤認を招くリスクを低減でき、企業の本質を正確に伝えられるでしょう。

定期的にアップデートする

企業の事業が成長する過程においては、文化や価値観が変わることもあるでしょう。

作成したカルチャーデックが古くなり現状に合わなくなると、採用活動時のミスマッチを誘発したり社員のモチベーション低下を招いたりする恐れもあります。
カルチャーデックは、定期的にアップデートするようにしましょう

カルチャーデックを活用できる場面

カルチャーデックを活用できる場面としては、次のようなシーンが挙げられます。

新入社員の教育

カルチャーデックは、企業の文化や価値観、ビジョン、ミッションなどをわかりやすくまとめた資料です。そのため、新入社員の教育に用いる教材の1つとしても活用できます。

新入社員研修や役員からメッセージを伝える時にカルチャーデックを用いれば、企業の理念や行動指針への理解が早まり、入社早期から企業文化に根付いた行動や意思決定を行えるようになるでしょう。

社内でのコミュニケーションツールとして

カルチャーデックは、企業のミッションや社会的価値を共有するためのコミュニケーションツールとして活用されることもあります。

特に、多様性が求められる昨今においては、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが在籍する企業も少なくありません。異なる背景を持つメンバーが在籍する場合でも、企業独自の文化や価値観が理解・共有されていると、価値観のズレが少なくなり、組織全体の一体感を保てるようになるでしょう。

業務にあたる際の行動指針にする

カルチャーデックは、社員にとって業務にあたる際の行動指針にもなります。

社員が業務遂行時に迷ったとしてもカルチャーデックが行動指針を示してくれるため、企業が求める行動や姿勢に沿った自律的な意思決定ができるようになるでしょう。その結果、部門や個人ごとに異なる判断で業務が遂行されるリスクを低減できます。

意思決定のスピード向上や業務の一貫性が保たれることにより、生産性が向上するなどの副次的な効果が得られることもあるでしょう。

カルチャーデックの効果的な発信方法

カルチャーデックを効果的に発信する方法としては、以下のような方法が挙げられます。

WEBサイトやSNSでの公開

WEBサイトやSNSは、公開対象を限定しなければインターネットに接続できる誰もが情報を閲覧できます。そのため、幅広い対象者に対して認知を広められる利点があります。

また、情報の更新や定期的な発信も比較的容易であることから、組織の変化や成長に合わせてカルチャーデックがアップデートされるたびに新しい情報を発信できるメリットもあります。

動画などのビジュアルコンテンツを活用する

動画などのビジュアルコンテンツは、文字や画像と比較して視覚的な訴求力が高く、カルチャーデックに盛り込んだ企業文化や価値観が伝わりやすい利点があります。

特に、短時間で企業文化の全体像を伝えたい場合や企業の雰囲気や人間関係など、言葉では伝わりにくい魅力を伝えたい場合に有効と言われています。

カルチャーデックを活用している企業の成功事例

ここでは、カルチャーデックを活用している企業の成功事例を紹介します。
実際の事例を知ることで、カルチャーデックの活用法や効果についてより理解が深まるでしょう。

パーソルホールディングス株式会社


画像引用:パーソルホールディングス株式会社

パーソルホールディングス株式会社では、グループビジョン実現のため、経営理念、行動指針、グループビジョンの3つに加え、ありたい姿として「“はたらくWell-being”創造カンパニー」を追加すると発表しました。
4要素から構成される新しい理念体系に込められた意味や創業当初から引き継がれている価値観を届けたいという想いのもと、理念体系の成り立ちやパーソルが大事にしている価値観をまとめた「PERSOL CULTURE DECK」を新たに制作しました。

PERSOL CULTURE DECKは、誰にでも伝わる形で表現することを意識して制作されているだけあり、価値観を表すエピソードや場面を漫画やイラストでわかりやすく表現しています。文章が並ぶ教科書のようなコンテンツとは一線を画す内容になっており、読み進めやすく、社外の人でも新たな学びや気付きを得られるかもしれません。

参考:パーソルホールディングス株式会社「パーソルが大切にする想いを詰め込んだ、カルチャーデックを公開!」

株式会社ディー・エヌ・エー


画像引用:株式会社ディー・エヌ・エー デザイン本部

株式会社ディー・エヌ・エーでは、DeNAが運営するサービスやプロダクトのUI/UXデザイン、マーケティングデザインなどを担当するデザイン組織が独自のカルチャーデックを公表しています。
デザイン組織が設立して10年の月日が経つ中で、DeNAが掲げる「一人ひとりに 想像を超えるDelightを」というミッションを実現するために、試行錯誤しながら生まれたカルチャーを言語化したのが、DeNA デザイン本部のカルチャーデックです。

「デザイン統括部のユニークな4つの特徴」や「デザイン統括部が大切にしたいこと」といった組織独自のカルチャーを言語化し盛り込むことで、チームの結束力がさらに向上することが期待できるでしょう。
また、これまで手掛けた作品集やキャリア事例を紹介することで、携われる業務や求める人材、キャリアビジョンなども効果的に伝えられると考えられます。

参考:株式会社ディー・エヌ・エー デザイン本部「カルチャーデック」公開

UUUM株式会社

画像引用:UUUM株式会社

UUUM株式会社では、パーパスの実現を目的に企業と社員が「共通の価値観」を共有できるようカルチャーデックを作成。

同社が掲げる“エンタメを通じて人々が笑顔になれる社会を共創する”という想いにシンクロするビジュアルにも注目です。また、内容も社風や理念が分かりやすくまとめられており、社員に対して求める行動指針はもちろん、会社のカルチャーやパーパスなどが対外的にわかりやすく示されている点が特徴です。

参考:UUUM株式会社 Culture Deck

株式会社BIOTOPE


画像引用:株式会社BIOTOPE

株式会社BIOTOPEは、デザイン事業を中心に展開する若い企業です。若い企業だからこそ、社員一人ひとりの想いと意思を尊重してきましたが、主要メンバーの入れ替わりやリモート化によるコミュニケーション機会の減少などをきっかけにアイデンティティ崩壊の危機に瀕する事態に。
そんな同社の危機的状況を救ったのが、カルチャーデックでした。

カルチャーデック作成にあたっては、役員に限らずメンバーも参加し、ミッションとバリューの策定から開始し、4ヶ月の期間をかけて各々の身体に馴染む言葉を選び、各言葉の解像度を高めていったとのこと。
また、カルチャーデックに落とし込む時は、ビジュアルやイラストもBIOTOPEらしさを追求しています。絵本のような親しみやすさも特徴の1つと言えるでしょう。

カルチャーデックができたことにより、判断基準が明確になったため、メンバー一人ひとりが自立的に物事を判断できるようになったとのこと。メンバーが自律的な行動を取れるようになり、事業活動にも良い変化をもたらしています。

参考:株式会社BIOTOPE note

株式会社コドモン


画像引用:株式会社コドモン

株式会社コドモンでも文化や共有したい価値観、姿勢などについて表した「CoDMON CULTURE DECK」を制作しています。

もともとは社内向けに制作したものですが、現在では社外に向けても公開されています。
シンプルながらも株式会社コドモンのメインカラーを主体に下記6つの項目について掲載しています。

・ミッション
・ビジョン
・企業姿勢
・行動指針
・マネジメント・コミュニケーションについて
・人や組織の考え方

求職者にとってもどのような人材が求められているのか一目でわかるため、採用活動にも寄与することが期待できるでしょう。

参考:株式会社コドモン『わたしたちのカルチャーデッキ』

株式会社マネーフォワード


引用:株式会社マネーフォワード

株式会社マネーフォワードでは、世界情勢や経済状況の変化および社員の急増などを背景に、変化に対応しながら掲げたミッションとバリューを実現するため、活動の土台となる文化がメンバーの価値観と行動の集積で進化していくよう、カルチャーデックを制作しました。

同社のカルチャーデックには、トップに社員インタビューが掲載されており、社員の想いを大切にしている様子がうかがえます。
また、ミッションを達成するための行動指針として掲げているValuesでは、それぞれのValuesに対して社員の解釈も添えられており、企業のカルチャーが対外的に伝わりやすい仕様になっています。
カルチャーデックページの下部には採用サイトにアクセスできるようにもなっており、採用まで見据えた導線設計は参考にしたい企業も多いのではないでしょうか。

参考:株式会社マネーフォワード『マネーフォワード、Culture Deckを公開。同時にMission,Vision,Values,Cultureのアップデートを実施』

VOLLECTは企業文化にマッチする人材の採用をサポートします

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まとめ

カルチャーデックを策定し人事戦略に取り入れることで、社員は企業文化や理念を再認識できるようになるでしょう。また、カルチャーデックが各社員の想いや方向性の統一を促してくれるため、組織力が向上する、社員の満足度が高まるといった効果も期待できます。
さらに、採用活動に取り入れることで、採用時のミスマッチが低減したり、求める人材からの応募が増えたりすることもあるでしょう。

人材の流動性が高まる昨今において、カルチャーデックは企業の文化や理念を存続させるツールの1つになるでしょう。ぜひ、本記事を参考に自社の文化や理念を反映したカルチャーデックを作り上げてみてください。

投稿者プロフィール

日向 妃香
日向 妃香
採用系コンサルタントとして企業の採用サポート・採用戦略構築・採用ノウハウの提供を行いながらライターとしても活動中。
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。