採用にAIを活用するには?メリット・デメリットやAI導入企業の事例を紹介
テクノロジーの進化により、企業の採用活動にAI技術を使った採用ツールを導入する企業が増えつつあります。しかし、まだ導入が進んでいない企業や導入したものの期待する成果を創出できていないと悩む企業も多いかと思います。
そこで本記事では、採用支援事業に8年間従事してきた筆者が、採用活動にAIを用いるメリットやデメリットを解説するとともに、AIを導入するポイントを紹介します。
目次
採用におけるAI活用
本章では、企業の採用活動におけるAI活用について、AIツールの導入実態とAI導入が進んでいる業務・工程について紹介します。
採用活動におけるAIツール導入実態
企業の採用活動におけるAIツールの導入は、急速に進んでいると考えられます。
Thinkings株式会社が実施した「2023年度の採用活動におけるAI活用の効果調査」によると、2023年度の採用活動におけるAIツールの活用状況について問う設問では、「活用した(43.0%)」「活用していない(53.5%)」と、おおよそ半数ずつの割合となりました。
引用:Thinkings株式会社 「2023年度の採用活動におけるAI活用の効果調査」
本調査結果からは、既に多くの企業でAIの導入が進んでいる様子が伺えます。
AIの普及はめざましく、採用活動にAI技術を導入する企業は今後より増加すると考えられるでしょう。
AIツールの導入が進んでいる業務・工程
AIツールの導入が進んでいる業務・工程は、次の通りです。
・求人票の作成
・スカウト(オファー)文の作成
・面接で使用する質問項目の作成
・応募者への質問自動対応
・採用データをベースにした応募者への評価
・採用スケジュールの立案
・面接の対応
・採用コンテンツ・企画の制作 など
主にアイデア出しや生成AIを活用した情報の作成といった作業や工程が挙げられます。また、最近では、応募者の問い合わせに対応してくれるAIチャットボットを導入する企業もみられるようになりました。
採用に関する問い合わせはもちろん、応募受付から面接日程の調整などの作業を採用担当者に代わり24時間対応してくれます。また、運用方法や導入するAIツールによっては、面接の対応などもAIで代替えできるでしょう。
採用にAIを活用することによって得られるメリット
採用にAIを活用することによって得られるメリットは、次の通りです。
作業効率の向上
採用活動にAIを導入する利点として、作業効率の向上が挙げられます。
AIを導入することで採用効率を高められる要因として、下記2つの理由があると考えられます。
・人的ミスが低減する
・24時間・365日対応が可能になる
まず1つ目はAI導入によって人的ミスが低減するからです。
個別の対応や採用プロセスごとに応対が変わることの多い採用活動では、人的ミスが発生しやすい状況下にあります。どんなにベテランの担当者でも完全に人的ミスを防止することは難しいでしょう。
その点、AIは事前に対応パターンを設定しておけば、忠実に対応してくれます。人的ミスが低減することでミスをリカバリーするための時間が削減され、結果的に作業効率が向上するでしょう。
また、24時間・365日対応が可能になる点も作業効率向上に寄与すると期待できます。採用担当者が担っていた工程を肩代わりしてくれるだけではなく、休日や夜間も応募者への対応を実施してくれるため、採用活動の効率を高められるでしょう。
採用基準の明確化
AIは、人のように主観や感情が移入することがないため、事前に定めた基準に則った判断をしてくれます。
判断がブレることがないため、採用基準の統一化を図れます。
公平性の担保
公平性を担保できるのも、採用活動にAIを導入するメリットと言えるでしょう。
どんなに詳細な採用基準を設けていたとしても面接官が人である限り、面接官個人の価値観や主観、経験によって採否の判断にバラつきが生じてしまいます。
その点、AIであれば、事前に設定した基準やデータに則って評価や判断をするため、公平性を担保できます。
人件費の削減
AIに業務の一部を任せることができれば、人件費の削減にもつながるでしょう。もちろん、AIツールの導入や設定には相応の費用が掛かることもあります。
しかし1度導入すれば、24時間・365日稼働してくれるため、AIの利点をうまく活用できれば人件費の削減にも寄与することが十分に期待できるでしょう。
採用にAIを活用することによるデメリット
続いて、採用にAIを活用することによって生じる可能性のあるデメリットについて解説します。
データの蓄積が必要
AIはこれまで蓄積してきたビッグデータをもとに求められた結論を導き出します。結論を出すためのビッグデータがないと、正確な判断ができなかったり、適切な対応をとれなかったりすることもあります。
導入時は、必ずしもAIが期待通りの成果を創出してくれるわけではないことを理解しておきましょう。
数値化できない要素の判断が困難
先述の通り、AIはビッグデータをもとに意思決定をします。そのため、数値化が難しい要素については判断や判定が困難となり、適切な結論を導き出せないケースもあるでしょう。
人柄や人間性、自社とのマッチ率といった数値化が難しい要素については、人が判断する必要があります。
評価基準の徹底的な画一化により柔軟性が損なわれる可能性
AIの得意分野は、データに基づく分析や意思決定です。一方で柔軟な対応が難しいため、採否判断にAIを用いる場合は、評価基準を画一化しなければなりません。
しかし、評価基準を徹底的に画一化してしまうと、柔軟性が損なわれてしまうリスクがあります。結果的に採用する人材傾向が偏ってしまったり、人材の多様性が失われてしまったりすることもあるでしょう。
また、データだけでは判断できない熱意やポテンシャルなどの人間的な魅力を見逃してしまう可能性もあります。
柔軟な対応が難しい場合がある
AIは、事前に定めた規則やルール、データに則って対応を進めるため、柔軟な対応が難しい場合もあります。
例えば、応募者対応の場合、事前に設定された要件を満たさない質問をされた場合、対応できないことのほうが多いでしょう。
AIを活用した採用を成功させるためのポイント
ここでは、AIを活用した採用を成功させるためのポイントを紹介します。
AIが対応できる限界を理解して導入する
まず1つ目のポイントとして、AIが対応できる限界を理解して導入することが挙げられます。AIには得意・不得意があり、全ての採用活動をAIに一任することは、現段階では難しいと考えられます。
AIが得意・不得意とする作業は、次の通りです。
下記の通り、AIはデータ処理や効率化に対して強みを持つ一方で、感情が介入する工程や複雑な判断が求められる場面では限界が生じるケースがあります。
【AIが得意とする作業】
・大量の応募者データの分析:応募者のスキルや経験、資格などの定量的な情報を迅速に分析し、適切な候補者を選び出す。
・応募者対応の自動化:応募者からの問い合わせに対し、迅速かつ一貫性のある応答を返す。
・求人票やスカウト文面の作成支援:採用ターゲットに合わせた訴求文を生成する。
【AIが不得意な作業】
・応募者の感情やモチベーションの理解:応募者の言葉の背後にある感情やモチベーションを深く理解できない。
・複雑な意思決定のサポート:カルチャーフィットなど、複雑な人間的判断を要する業務には不向き。
・応募者との関係構築:信頼関係や人間関係を築くことは人にしかできない。中にはAI面接などAIを用いた対応を快く思わない応募者もいるため、注意が必要。
あくまでサポートツールとしてAIを運用する
上記の通り、AIで対応できる範囲には限界があります。
採用活動にAIを用いる際は、あくまでもサポートツールとしてAIを運用することが大切です。サポートツールとしてAIを運用する際は、AIに任せる業務と人が担う業務を区分しておくと良いでしょう。
最終的な決定は人間が下す
最終的な決定や判断はAIでは対応できません。
AIは採否を判断する指標になる一種のツールであり、最後まで採用活動を一任できる完ぺきなツールではないことを理解しておきましょう。
最終的には、応募者とのコミュニケーションを通じて、自社にとって必要な人材かを人が判断するようにしましょう。
採用活動におすすめのAI搭載ツール
ここでは、採用活動におすすめのAI搭載ツールを紹介します。
AIは、さまざまな応用がきくため、採用活動でも多様なシーンに用いられています。
【採用サポートAIツール】Syncit
株式会社三菱総合研究所が提供するSyncitは、自社開発のAIエンジンを搭載したAI採用サポートツールです。蓄積された自社の採用情報を分析することで、自社にマッチする人材や入社後活躍する可能性の高い人材を高精度で見つけ出せます。
「選考基準が属人化している」「自社にフィットする人材を見極めたい」と悩む企業にとって、客観的データに基づく採否判断や採用ターゲットにマッチする人材を早期に見極められる効果を期待できるでしょう。
導入にあたっては、専任コンサルタントが伴走型の支援を提供してくれます。そのためAIに関する知識がない企業や採用担当者様でも導入しやすいツールです。
【AI面接サービス】ShaiN
画像引用:株式会社タレントアンドアセスメント ShaiN公式サイト
株式会社タレントアンドアセスメントが提供するShaiNは、対話型の面接を実施するAIツールです。これまでに600社以上の企業に導入されており、名のある大手企業や老舗企業の利用実績も豊富です。
応募者は、時間や場所を問わずいつでも好きな場所から面接できるため、日程やタイミングが合わないことによる選考辞退を低減できることが期待できます。また、戦略採用メソッドをベースに構築されたAIが面接官を代行するため、採用基準の統一化を図れたり、データドリブンな採否判断を下せたりするようにもなるでしょう。
なお、面接データは採用後の人事配置やアセスメントなどにも活用できます。今注目が高まる人的資本経営への流用も可能になるため、データを用いれば企業価値向上に寄与する育成や配置も可能になるでしょう。
【タレントマネジメント】タレントパレット
画像引用:株式会社プラスアルファ・コンサルティング タレントパレット公式サイト
株式会社プラスアルファ・コンサルティングが提供するタレントパレットは、科学的人事戦略の実現を支援する、生成AI搭載の人事情報プラットフォームです。これまで4000社を超えるビッグデータ活用支援実績を誇り、ホールディングス企業を中心にさまざまな業界の企業で導入されています。
採用管理はもちろん、人事評価、労務管理、人材発掘、人材育成など、人事戦略に対して多角的に対応できる点が魅力です。ノウハウを持つコンサルタントが制限なく支援やサポートに徹してくれるため、AIノウハウに乏しい企業や管理システムに慣れていない人事担当者でも安心して導入できるでしょう。
2024年8月7日には、社員の所属やスキル・経験、異動履歴、性格傾向といった蓄積された情報から、AI技術を活用した人材検索機能が実装されました。
条件検索だけではなく、人材のイメージや求める人物像を「新規事業に向いていそうな人」などの任意のテキストで入力することで検索が可能となります。さらに、検索でヒットした人物がどのような点で条件にマッチしたかの理由も生成AIで自動生成することで、人材の強みや合致した背景を可視化でき、目的に合わせて幅広い使い方ができるようになりました。(参考:プレスリリース)
AI採用を導入している企業の事例
本章では、AI採用を導入している企業の事例を紹介します。
実際の事例を知ることで、AI導入の具体的なイメージを描けるでしょう。
株式会社ニトリホールディングス
株式会社ニトリホールディングスでは、経営戦略実現に向け生成AIを搭載したタレントパレットを導入しました。ニトリホールディングスのAIの主な活用先は、既存社員のリスキリングやデータを根拠にした配置転換です。
これまでニトリホールディングスでは、外部からコアコンピテンスを有する人材を登用してきました。しかしそれでは、自社のコアコンピテンスが希薄になってしまう懸念を感じ、AIを用いて社内の人材を育成しコアコンピテンスを兼ね備えた人材へと成長させることにしました。
また、配置転換においてもAIを用いて研修履歴や適性、経験などのデータを一元管理できるようにして分析することで、データに基づいた個人と企業の成長を促進させる配置転換を可能にしました。
株式会社一蘭
全国にラーメン専門店を構える株式会社一蘭では、アルバイト採用に対話型AI面接サービスShaiNを導入しました。
これまで一蘭は、店舗ごとにアルバイト採用を実施していましたが、面接や研修に時間を割けず、面接の実施が先延ばしになったり、店舗営業時間外に面接を希望する応募者に対して面接できなかったりする状況にありました。
導入後は店長をはじめとする現場社員の負担軽減に寄与したり、採用機会の損失を低減したりする効果が表れているとのこと。AI面接を選ぶ応募者も多いことから、応募者層とのマッチ度も高いと考えられます。
同社では、人が面接したスタッフとの違いについての分析も予定しています。AI面接の成果や効果が判明すれば、AI面接の利用が今後さらに普及するでしょう。
サッポロホールディングス株式会社
サッポロホールディングス株式会社では、2019年度の新卒採用におけるエントリーシート選考からAIを導入する旨をプレスリリースしています。同社が前年にAIを試験導入した結果、採用担当者がエントリーシート選考にかける時間を40%削減できたことから、本格的な導入に至ったとのこと。
AIによる判定で基準を満たさなかったとしても、人事担当者が再度内容を全てチェックした上で合否を判断します。同社は、AI導入により、これまでと同等の精度でありながらも、選考にかける時間を短縮できるようになりました。
参考:サッポロホールディングス株式会社「新卒採用のエントリーシート選考においてAI(人工知能)を活用」
効率的に採用を進めるならPRO SCOUT
AIは採用活動の効率化を高めてくれるツールの1つになるでしょう。
ただ、採用活動の効率を高めてくれるツールはAIだけに限りません。他にも採用代行や採用管理システムなどさまざまツール・サービスがあります。
採用活動の効率化を図るためには、自社に合ったツールを選択することが不可欠です。
その点、VOLLECT(ヴォレクト)が提供するPRO SCOUTは、戦略策定やスカウト文面/求人票作成、候補者選定、配信、数値振り返り、日程調整など、採用支援をノンストップで提供しています。
これまで700社以上に選ばれてきた実績を誇り、蓄積されたノウハウのもと多角的な支援を通じ、期待する採用成果の創出を実現できるでしょう。
まとめ
企業の採用活動へのAI導入は、今後の採用活動を大きく変える可能性を秘めています。AI技術の進展により、企業の採用活動におけるAI導入はさらに加速するでしょう。
まだAI導入に向けて本格的に検討を始めていない企業も、今後の変化を見越しAI導入の利便性やリスクに対して知見を深めておくことは必須であると考えられます。いざ、AIを導入する際にスムーズな運用を実現するためにも、本記事などを参考にAIを用いた採用活動について理解を深めておきましょう。
投稿者プロフィール
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採用系コンサルタントとして企業の採用サポート・採用戦略構築・採用ノウハウの提供を行いながらライターとしても活動中。
得意分野は新卒採用とダイレクトリクルーティング。
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