業務委託から正社員になると何が変わる?雇用形態による違いを解説
副業を許可する企業の増加や、リモートワークの普及、ココナラやランサーズなどスキルシェアサービスが普及したことなどが要因で、フリーランスや副業ワーカーは増えています。
事実、ランサーズによるフリーランス実態調査によると、日本のフリーランス人口は2018年に1,151万人だったのに対し、2021年には1,670万人と500万人以上増加しているといったデータも。
また、副業・復業ワーカーの数も増えており、2021年には800万人を超えています。
企業側としては、「この人をぜひ正社員で雇いたい!」と思わせてくれる優秀な業務委託の人材と出逢うこともありますよね。
本記事では業務委託から正社員へ移行する手続きや、本人に打診する際のポイントなどについて解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
業務委託から正社員へ移行する流れ
それでは早速、業務委託から正社員へ移行するために必要な流れや手続きについて確認していきましょう。
契約形態の変更に伴う法的確認
業務委託契約から正社員への移行に伴う場合でも、まずは現行の業務委託契約を適切に終了する必要があります。
契約書に記載された解約条件や通知期間を確認し、解約通知を文書で相手に送付します。その際、解約日を明確に伝えることが重要です。
また、正社員契約では労働基準法や社会保険法が適用されるため、新しい労働条件や勤務時間が法的に適切なものであるかを確認します。
雇用契約書の作成
改めて、正社員として雇用する条件を記載した雇用契約書を作成します。
雇用契約書には以下の内容を記載することが一般的です。
- 雇用期間(無期または有期)
- 給与・賞与・昇給制度
- 労働時間・休日・休暇
- 社会保険について
- 福利厚生について
- 試用期間の有無
給与計算の変更
業務委託から正社員へ移行する際、給与の計算方法が大きく変わります。
業務委託では報酬が支払われ、源泉徴収のみが適用されていましたが、正社員になると給与として支払われ、所得税や住民税、社会保険料(健康保険、厚生年金保険、雇用保険など)が控除されます。
また、正社員契約では固定給制や月給制が採用される場合が多いため、残業代や賞与の計算も必要になってくるでしょう。
社会保険への加入
前項で少し触れましたが、業務委託から正社員へ移行すると社会保険への加入が必要です。
業務委託では個人事業主として国民健康保険や国民年金に加入していた場合が多いですが、正社員になると会社が社会保険(健康保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険)を適用します。
雇用契約開始後に会社側の担当者が各種保険への加入手続きを行うことになります。
就業規則の適用
雇用契約を締結した後は、当該の従業員に対して会社の就業規則が適用されることになります。
正社員として適用される就業規則や社内規程を本人に共有しましょう。特に、勤務時間や休暇、懲戒処分などの重要な項目を明確に伝える必要があります。
各種変更手続きの完了確認
必要な手続きが完了したことを確認します。特に雇用保険や社会保険の加入手続き、給与計算の変更が正確に行われているかをチェックします。
業務委託から正社員への移行では加入しなければならない保険が複数あるため漏れが生じてしまうケースも。必要な社会保険への加入を行わないと労働基準法に抵触する恐れがあるので注意しましょう。
また、雇用契約書の不備も労働基準法違反となる可能性があるので、普段から使用している契約書のテンプレートを用いる場合でも、契約締結前に記載内容を最終確認するようにしましょう。
業務委託から正社員への移行で変わること
前章で一部触れていますが、業務委託から正社員への移行で変わることについて今一度確認しましょう。
- 契約形態
- 給与・報酬
- 社会保険の適用
- 福利厚生の利用
- 労働時間と勤務形態
- 責任が及ぶ範囲
- 雇用の安定性
- 税金や経費の扱い
契約形態
業務委託は独立した事業者としての契約ですが、正社員では労働者として雇用関係が確立されることになり、労働基準法をはじめとする労働関連法規が適用されます。
また、業務委託では業務の進め方に口出しができない場合がありますが、正社員では指揮命令関係が発生するため、指示や命令が可能になります。
給与・報酬
業務委託から正社員への移行では、給与に関する費用構造が大きく変わります。業務委託の場合、報酬は成果に基づく支払いが多く、社会保険料や税金の管理は個人の責任です。
一方、正社員になると月給や賞与を支払う形になり、企業は社会保険料(健康保険や厚生年金保険)の約半分を負担する必要があります。
また、源泉所得税の控除や雇用保険の負担も加わります。さらに、有給休暇の取得や残業代の支払いが義務化されるため、固定的な人件費が増加することも押さえておかなければなりません。
給与だけでなく福利厚生や退職金制度などの間接コストも考慮する必要があり、トータルのコスト管理が重要となります。これらを踏まえた上で給与体系を適切に設計することが求められます。
社会保険の適用
業務委託から正社員へ移行すると社会保険の適用が必須となります。企業は健康保険、厚生年金保険、雇用保険の加入手続きが必要です。
これに伴い保険料の事業主負担が発生。健康保険と厚生年金保険では保険料の約50%を企業が負担します。また、労災保険も全額事業主負担となり、労働者の労災事故への備えが義務付けられます。
社会保険の適用は労働者の生活を安定させ、福利厚生の充実につながりますが、企業にとっては人件費の固定費化を意味することを覚えておきましょう。
そのため、正社員化を進める際には社会保険負担を含めたコスト全体を見据えた経営計画が重要となります。
福利厚生の提供
正社員には企業の福利厚生制度を提供する必要があります(例:健康診断、通勤手当、育児休業制度など)。業務委託ではこれらは基本的に適用外です。
正社員としての雇用契約に退職金や企業年金制度などが含まれる場合、それらを提供する義務が発生することになります。
勤務形態と労働時間
業務委託から正社員に移行する際、労働時間と勤務形態にも大きな変化があります。業務委託では基本的に労働時間の管理は不要で、成果物や納期に基づく自由な働き方が一般的です。
しかし、正社員になると労働基準法が適用され、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を遵守する必要があります。さらに、始業・終業時刻や休憩時間などの勤務形態を明確に定め、タイムカードや勤怠管理システムを導入して労働時間を管理する責任が生じます。
また、昨今問題になっている残業時間についても適切な割増賃金の支払いが義務付けられる点に注意しましょう。これにより、業務委託時よりも企業が労働時間や勤務状況を把握し、調整する負担が増える点にも注意が必要です。
解雇に関するリスク
業務委託契約であれば契約解除は容易ですが、正社員となることで労働契約法や労働基準法に基づいて解雇が難しくなります。
そのため、万が一採用後のパフォーマンスが期待に達しなかったり、勤務態度が思わしくなかったとしても、雇用契約書に記載されている契約解除条項に抵触しない限りは解雇ができない点は注意が必要です。
業務委託から正社員へ移行するメリット
ここでは、業務委託から正社員へ移行するメリットを見ていきましょう。
スキルが保証された人材を獲得できる
まず大前提として、業務委託の人に正社員への移行の話を持ち掛けるということは、その人のスキルや成果、働きぶりなどを高く評価しているということでしょう。
そのため、業務委託の人を正社員契約へ移行するということは、スキルレベルが保証された即戦力人材を獲得できるということになります。
履歴書や職務経歴書、面接で話す内容などはいくらでも取り繕うことができてしまいます。入社してから「面接ではできると話していたはずなのに実はできなかった人材を採用してしまった…」という話を聞く機会は決して少なくありません。
業務委託から正社員への移行であれば、そういったケースがほとんど起こらない点は明確なメリットといえるでしょう。
カルチャーにフィットした人材を獲得できる
業務委託で長く働いてくれている人材であれば、自社のカルチャーを理解しているということも多いでしょう。
スキルに問題がなくても社風とマッチしなかったり、他の社員との関係構築、業務の進め方の違いなどにギャップを感じて早期離脱に至るケースもあります。
スキル的にも問題なく、これまで業務委託で働いてくれていた人であれば、自社とのマッチ度という点でもある程度安心できるのは心強い点でしょう。
ただし、業務委託時の距離感が心地良く、正社員へ移行して関りが深くなったことで働きにくくなってしまうケースもあるので、一概に業務委託で長く働いていたからといって社風に完璧にマッチするとは限らない点には注意が必要です。
優秀な人材をスピード採用できる
業務委託の人を正社員に移行することで、スピード面において大きなメリットがあります。
例えば急な退職者が出たり大きなプロジェクトが舞い込んだりして即戦力人材の確保が急務となった場合、求人広告のような従来の採用手法では採用までに時間がかかり、スピード感を重視するあまり求めていない人材を採用してしまうことも。
また、スキルや人間的に問題ない人材でも、自社のやり方への移行や教育には多少の期間を要します。しかし、業務委託として働いてくれていた人であれば、自社の業務の進め方を理解してくれていることも多く、採用の必要性が生じてから業務を開始するまでのスピード感に優れます。
業務委託から正社員に移行するデメリット
業務委託から正社員への移行は企業にとってメリットだけではありません。デメリットについても理解しておきましょう。
人件費が増加する
正社員として採用すると、業務委託よりも人件費が高くなる傾向があります。
業務委託では支払う必要がなかった社会保険、通勤手当、ボーナス、住宅補助などが発生する可能性があり、負担が増加するケースが多いです。
正社員は昇給もあるため、長期目線で人件費の増加に耐えられるか考慮する必要があるでしょう。
また、業務委託ではプロジェクトの閑散期などには発注をストップすれば人件費を節約できましたが、正社員の場合はそうはいきません。
業務調整における柔軟性の低下
業務委託ではプロジェクトごとに柔軟に稼働時間を調整することができますが、正社員として採用すると労働基準法などの法的な制約が発生し、勤務時間、休暇制度などを守らなければなりません。
業務が多い場合には人員不足にならないか、閑散期がある場合は他の仕事にアサインできるのかなど、業務の需要変動に対応できるか確認しましょう。
業務委託から正社員へ移行する際の注意点
業務委託から正社員への移行にあたっては、会社の規定や、企業と従業員の認識をすり合わせる上で注意点があります。
自社以外との業務委託契約の確認
フリーランスの場合、複数の企業と並行して業務委託契約を結んでいることが一般的です。もし自社が副業を禁止している場合は、他の企業の業務を中断することになるため、契約内容に問題がないか確認してもらう必要があります。
また、自社が副業を認めている場合であっても、業務に支障が出ない範囲かどうか確認しましょう。
もし既に他社と請負契約を結んでいる場合、途中での契約解除は一般的に難しく、賠償金の支払いなどの補償が必要になる場合があります。
準委任契約の場合は契約期間を定めることが多いため、企業との合意があれば契約終了の期間を早めることも可能です。
ただし、無理やり終了させるのはNGです。契約終了に関する具体的な条件やルールを確認し、トラブルを避けるようにしましょう。
正社員として求めることの共有
正社員に移行しても、業務委託の頃と同じマインドで仕事に向き合ってしまう人もいますが、改めて業務委託と正社員の違いや、正社員として求めていることを伝えるようにしましょう。
その認識を共有できていないと、人によっては責任感が希薄なままだったり就業時間がルーズになったりすることが懸念されます。
業務委託から正社員への移行を打診する際のポイント
ぜひ正社員になってほしい業務委託人材がいた際、どのようにアプローチすれば良いのかを解説します。
正社員へ移行するメリットを伝える
本記事でお伝えしてきたように、業務委託から正社員への転換にはメリットがあります。例えば、正社員としての給与や福利厚生の向上、昇進やキャリア成長の機会、安定した雇用などがあります。
特に安定した雇用が約束されることは、不安定な今の世の中では大きな安心材料となるでしょう。これらのメリットを明確に伝え、業務委託と比較して正社員として働く価値を示しましょう。
個別のニーズや要望を理解して柔軟な働き方を提案する
業務委託の人材は「副業を続けたい」「時間や場所に縛られず働きたい」などの要望を持っていることが多いため、会社の精度の範囲内で可能な限り柔軟な働き方を提案しましょう。
こちらからの要求を一方的に伝えるのではなく相手の要望も考慮して時には譲歩することで、正社員へ移行する意欲や自社へのコミットメントを高めることにつながります。
一度直接顔を合わせて接点を持つ
業務委託契約でフルリモートの人だと、1年以上働いてもらっているのに一度も顔を見たことすらないという場合もあるでしょう。
ランチに誘ったり、オフィスに遊びに来てもらう機会を作って、直接正社員になってほしいと口説くことで熱意が伝わります。
また、社内文化やチーム環境の良さが、正社員化の後押しになることがあります。
実際に会って現場の雰囲気を知ってもらい、入ってほしい気持ちを伝え、正社員として働く意欲を高めることができます。
ただし大人数が集まる雰囲気が苦手で業務委託で働いているという人も多いので、普段のコミュニケーションで相手の性格を読み取って、問題なさそうなら誘うようにしましょう。
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まとめ
投稿者プロフィール
- 株式会社VOLLECTにて採用コンサルタントとして従事。大手広告代理店のDXコンサルタント職や、大手IT企業でのエンジニア採用など、多数の採用支援実績を持つ。