エンジニア採用がうまくいかない人事が抑えるべきポイント・知識まとめ

エンジニア 採用

※この記事は5分で読めます

・他のポジションは着実に採用できているのに、エンジニアの採用だけがうまくいかない…。

・本年度中にエンジニアをあと3人採用しなくてはいけないのに、全く採用の見込みが立っていない。

このように、エンジニア採用に苦手意識を持つ人事の方もいるのではないでしょうか。

ご存じの通り、エンジニア採用に必要なエンジニアに関する知識量は膨大です。そのため、何を勉強したら良いのか、どこまで理解しておけば良いのか、頭を悩ませている人事の方が多いのです。 

また、「エンジニアの面接は現場に任せているから、採用担当自身はそこまでエンジニアについて理解する必要がない」と考える方もいると思いますが、エンジニアに関する理解がないと適切なアクションが取りにくい場面はたくさんあります。例えば、エージェント向けの採用ポジションの説明、ダイレクトリクルーティングにおけるスカウト配信時の候補者選定、進捗中の候補者の管理、面接官の差配などです。

エンジニア採用市場がこれほど過熱している今、よりエンジニアに関する理解を高めて臨む採用担当者と、そうでない採用担当者、どちらに軍配が上がるかは明白でしょう。 

本記事では、大手からベンチャーまで様々な企業のエンジニア採用に関わってきた筆者が、エンジニア採用のポイントや知識について、採用担当の方にとって最低限必要な内容に絞って紹介します。是非このタイミングで、学習の機会を設けてみてはいかがでしょうか? 

エンジニア採用市場の現状

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dodaの転職求人倍率レポートによると、2020年度9月時点でのITエンジニアの求人倍率は6.67倍です。コロナ前の10倍を超えていた状況と比べると落ち着いていますが、依然として高い水準をキープしています。全体の求人倍率が1.6倍である事を踏まえると、エンジニア採用の難易度が高いことは明らかです。

更に、経済産業省の調査レポートによると、2030年には約59万人のITエンジニアが不足すると予測されています。将来的に状況が改善する兆しがないため、エンジニア採用を先延ばしにすることもできないのです。

エンジニア採用のポイント

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エンジニア採用に会社全体で注力しており、エンジニアの確保がうまくいっている会社の例を元に、エンジニア採用を成功させるポイントを解説します。

現場の求める人材要件を、転職マーケットを踏まえて適正化させる

C+を用いた開発3年以上、プロジェクトマネジメントの経験も必須、2835歳、Unityも使ったことがあるとよい」など、現場から様々な採用要件を伝えられていると思います。これらの採用要件を理解し、適性年収をイメージすることはできていますか?

これだけエンジニア採用が難しいと言われている中で、いまだにエンジニアの採用要件が採用マーケットにフィットしていないケースはまだ見受けられます。

よく見受けられるのは、採用担当者がエンジニアの知識を持っていないが故に、現場のエンジニアから欲しい人材要件でそのまま募集をかけているケースです。現場のエンジニアからすれば、一緒に働くメンバーは全知全能の方がありがたいと思うのは当たり前です。

最近では、エンジニアの方が直接採用に関わることで要件を緩める必要があることを認識し、市場に適した人材要件に調整してくれる場合もあります。そうでない場合は、採用担当者がエンジニアの転職市場を理解し、採用したいエンジニアに期待するミッションや組織バランスを考えた上で、「採用できる」人材要件に設定していきましょう。

技術ブログなど、自社への応募を検討するエンジニアがweb上で得られる情報量を増やす

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エンジニアの方は、募集をみたらすぐに応募せずに、インターネットで情報をサーチしてから応募するケースが多いです。そのため、求人票やスカウトメールの情報だけでは応募したいと思えず、離脱してしまう場合があります。離脱を防ぐ解決策の一つとして、自社採用HP上などの場所で、下記5つのポイントを情報提供できるよう準備しておくべきです。

もしコストをかけられないということであれば、「note」は無料で簡単に始められるのでオススメです。作った記事はスカウトメールなどの文面にURLを添付して紹介しておきましょう。

 

  • プロダクトに対する代表の思いや解決したい問題
  • メンバー紹介
  • エンジニアの教育制度や文化
  • エンジニアの社内環境状況
  • 技術ブログ(技術的なノウハウが具体的に書かれたブログのこと。具体的には「アプリケーションの開発手法」「コードの書き方や使い方」など、社外に技術力のアピールをするための記事を掲載)

インパクターによるカジュアル面談

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ビズリーチが提唱しており(注1)、効果を発揮している会社を多く見てきた「インパクター」によるカジュアル面談をおすすめしたいと思います。

まずインパクターとは、「インパクトを与えられる人」=「候補者にこの会社すごいかもと強い印象を残すことができる人」という意味です。社長や役員・事業部長・CTOなどがそれに当たると思います。

リファラル採用やスカウトの場合は、採用したいエンジニアとの初回接点はカジュアル面談の場合が多いですが、このカジュアル面談をインパクターが担うことで興味を惹きつけ、その後の選考プロセスを優位に進めることができます。反対に面談を受けたエンジニアが、カジュアル面談で話をした人に興味が持てない、技術的な会話が成立しないと感じてしまうようだと次の選考にも進んでくれません。進んでもらえる場合でも日程調整に時間がかかったり、当日に辞退されてしまったりと、無駄な工数が発生します。

また、インパクターは会社で大きな権限を持っているケースが多いため、当初想定したポジションにはフィットしないものの、他のポジションでは活躍してもらえそうと感じた際に、他のポジションに差配できる点も大きなメリットの一つです。

(注1)ビズリーチ:候補者の入社意欲を高めて逃さない、面接における面接官の4つの役割とは

年収を社内の基準に合わせない

大企業にありがちですが、年収レンジが年齢や在籍年数によって決まっており、エンジニアを中途で採用する場合も、その基準に合わせて年収のオファーを出している場合があります。こういった場合はブランド力のある会社であったとしても、エンジニア採用に難航しています。

新卒一括採用の文化が根強い大企業では、「人はすぐに辞めないものだと」いう感覚が未だに残っているものです。しかしエンジニアからすると、やりたいことが出来なくなったり、自分が関わっているプロジェクトが終了したりすれば、次の環境を探すことは当然です。そのため、スキルに比例するのではなく、10年我慢すれば年収が高くなるというような制度は敬遠されてしまいます。年功序列的な給与制度でも入社してくれるエンジニアはいますが、「技術を追求するよりは、落ち着いて仕事をしたい」といった志向のエンジニアかもしれません。

採用担当だけでスキルに対する適正な年収を判断することも難しいかと思うので、現場の責任者クラスのエンジニアを早い段階で巻き込んだ方が良いでしょう。

タレントプールの活用

タレントプールとは、選考途中で不合格にした候補者や、内定辞退されてしまった候補者など、いつかまた自社を受けてくれるかもしれない候補者のリストです。継続的に候補者との繋がりをキープすることで、必要なタイミングに再度選考に進んでもらうためにアプローチすることができます。

それ以外にも、エンジニア向けのイベントなどを実施してプールに追加する方法もあります。この場合も、転職意向が高まったタイミングを見計らってアプローチします。

転職市場に出回っているエンジニアの数は限定的ですので、転職潜在層を転職顕在層に変わった瞬間に接触することや、不合格者や辞退者に対しても適切なポジションが出てくれば案内するといった工夫が必要です。

エンジニアの採用手法について

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エンジニア採用に常に付き纏うのが、母集団形成ができず面談を組むまでに至らないという課題です。ブランド力のある会社であったとしても、採用人数が多く、採用人数に見合う母集団形成ができない場合があります。

その結果、積極的にエンジニア採用している会社の多くは、採用手法を選んでいるというより、可能性が少しでもある手法が見つかれば一旦試してみて、効果が出れば継続し、効果が出なければ他の手法を探すという方法を取っているように見受けられます。

今回は、求人広告、人材紹介エージェント、リファラル、ダイレクトリクルーティングの一般的な4つの採用手法から解説します。

求人広告

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エンジニアを採用するにはあまり適した手法だとは言えません。

ただ、ITエンジニアの求人を掲載している会社は依然として非常に多いのが現状です。掲載している企業としては、SIerが最も多く、続いてITコンサルティングファームも一部掲載しています。ただしそれらの求人の多くは、エンジニア未経験者に向けた内容のもので、エンジニアの経験者を募集している求人は多くありません。理由は色々とあると思いますが、以前のエンジニアの求人広告の多くはエンジニアのことを理解していない人が作っており、「働き方」や「年収」ばかりを訴求しているものでした。技術に関する記載がほとんどないこともあり、応募が集まらなかったのでしょう。また、無差別に送られる大量のDMを敬遠するエンジニアも多かったのかもしれません。

人材紹介エージェント

エージェント選び次第ではうまく活用できる手法ですが、良いエージェントに出会えないと苦戦してしまいます。

エンジニア採用が重要視されている会社では、エージェントに支払うコストの高さはあまり重要視されません。また、成功報酬の料金体系のため、網を張るという意味で複数エージェントに依頼している会社も多いです。故にエージェントが非常に多くのエンジニア求人を抱えている構造となります。

そのため、採用の決まりやすい、ブランド力のある会社が出しているかつ年収が高い求人以外は、なかなかエンジニアを紹介されないという問題が起こっています。

しかし、技術面や仕事内容に魅力がある求人をエンジニアにしっかりと魅力伝達してくれるエージェントを見つけることができれば、ブランド力がない会社でも、エージェントをうまく活用できると思います。ただし、そのようなエージェントを見つけたとしても、一定期間で担当変更が生じる可能性もあるので、注意です。

リファラル採用

次に説明するダイレクトリクルーティングと同様に、転職潜在層にもアプローチできる点ではエンジニア採用に向いていると言えます。転職潜在層の数は就業人口の9割弱と言われているほど、大きな母集団です。求人倍率の高いエンジニア採用でこの転職潜在層にアプローチしない手はないでしょう。

一方で、リファラル採用は、スタートアップや大企業の一部署で2〜3名採用したいという場合であればオススメですが、継続的に、大量にエンジニアを採用するにはやや厳しい手法だと思います。

とはいえ、コストが大きく発生するわけでもないため、やらないという選択を取らなくても良いと思います。採用できるかどうかは自社の社員の協力次第となるので、協力を得られるような施策を打っていきましょう。

ダイレクトリクルーティング

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リファラル採用と同様に、転職潜在層にもアプローチできる点でエンジニア採用には向いていますし、更に継続的に複数名のエンジニアを採用できる方法でもあります。BizReachやAMBIなどの総合型の媒体から、LinkedinやEight Career DesignなどのSNS的な候補者データベース媒体、エンジニア特化型媒体など、種類は山ほどあります。どの池で釣りをするべきなのか、その選定には慎重さも必要ですが、継続的にエンジニアを採用するには魅力的な手法とも言えます。

一方で、スカウト配信する担当者がエンジニアの職務経歴書読み取れる知見を持っていないと、社内エンジニアに候補者選びを協力してもらう必要があります。また、スカウト配信業務は多くの工数が発生するため、開発業務に忙しいエンジニアに依頼するのも限界がある点は、ダイレクトリクルーティングの弱みかもしれません。この弱みを補うためにも、採用担当自身がエンジニアの職務経歴書をある程度読み取ってスカウト配信ができるように勉強をしていきましょう。

▼参考記事

エンジニア採用担当が身に着けるべき知識

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非エンジニアの採用担当者が、エンジニアを採用するために最終的に行き着くのが、自分でエンジニアに関する知識を身に着けてしまうことです。HRpediaでは、エンジニア採用で必要な知識を、5つの記事を通して厳選して紹介しています。

第一回:システム開発工程とは?システムをつくる手順について解説!

エンジニア採用でよく見る「要件定義」や「設計」、「開発」などの用語の意味について解説しています。また、システムの開発工程を家を作る工程にたとえてわかりやすく説明しています。

エンジニアは「どの工程を任せてもらえるか」に大きな関心を寄せているので、採用担当者としては身に着けるべき知識のひとつです。

第二回:システムはどのようにして動くの?仕組みを解説!

エンジニアの職務経歴書を読んでみると、どの分野を専門領域にしているかが示されていると思います。「クライアントサイド」や「OS」、「Unix」等の用語を正しく理解できていますか?第二回では、システムが動く仕組みとともに、このような用語について解説しています。

第三回:業務系システムとWEB系システムの違いを理解しよう!

システムは大きく分けると業務系システムとWEB系システムがあります。自社が採用したいのはどちらのエンジニアであるかはもちろん、募集要項を見て「このエンジニアは業務系エンジニアか、WEBエンジニアか」を理解する必要があります。2つのエンジニアの志向性や求める技術について解説しています。

第四回:エンジニアのポジションや職種名をわかりやすく解説

エンジニアには様々な職種があります。「サーバーサイドエンジニア」と「サーバエンジニア」の違いを正しく理解できているでしょうか。第四回では、ITエンジニアを3つの軸で分類することで、エンジニア採用初心者の方でも理解できるように解説しています。

最終回:プログラミング言語の違いを理解しよう!

エンジニアというとイメージされやすい「プログラミング」の言語について解説していきます。採用担当者がプログラミング言語の違いを理解すると、職務経歴書のプログラミング言語を見るだけで、そのエンジニアの専門分野を理解することができるというメリットがあります。多く使われている言語だけでも徐々に覚えていきましょう。

投稿者プロフィール

中島 大志
中島 大志株式会社VOLLECT CEO
「ダイレクトリクルーティングの教科書」著者。日経トレンディや東洋経済への寄稿も果たす。新卒でパーソルキャリア株式会社にてクライアントに対して採用コンサルティングに従事。その後、外資系コンサル企業の採用支援をする中でダイレクトリクルーティングの魅力に気づき株式会社VOLLECTを創業。スカウト採用支援実績は500社超。